第47話 これは怪獣ですか? いえ、それは恐竜です……げに恐ろしきは数の暴力なり
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ダイ渾身の豪速球手榴弾。それは迎撃されてしまった。
迎撃されてしまった……んだが、恐竜はそれで大破した。胴体を中心にドカンと衝撃を受けたように大破したんだ。
何故かと言うと、迎撃が間に合わなかったんだ。
CIWSは確かに手榴弾を撃ち迎撃したんだんだが、その時にはもう至近距離まで迫っていた。そんな所で迎撃しても爆撃の直撃を受けるのとそう変わらない。
頭を破壊されて怯んだからかどうかは分からないが、とにかく恐竜の迎撃は間に合わず手榴弾の爆撃をくらい大破したんだ。
ちと微妙な結果だが、まぁ勝ち勝ちだ。細かい事は気にしない。
「ひぇぇぇぇぇ、勝てたぁぁぁぁぁ」
流石にこれはきついよな。体力的にも限界間近で危うかったし。しかもイングリッドの方もエネルギー切れでオーバーヒートしてるし。
こりゃ熱が冷めるまでシールドもブースターも使えねぇな。
イングリッドの起動動力はコンデンサーに貯蓄してあるから機体を動かすのは問題無いけど、これで連戦にでもなったら溜まったもんじゃない。
さっさとこのフロアからは脱出しよう。でないと本当に死ぬわ。
「ええっと、出口は……うわぁ、塞がってるよ」
マジかよ。
よくよく考えたら恐竜はダイがこのフロアの出入口から入った直後に背後から現れたんだった。
なら大破した恐竜の死骸はと言うと、見事にこのフロア唯一の出入口を塞いでやがった。何処までも迷惑な事を……。
まぁいい。巨体とは言え死骸となった恐竜をちょっと動かす事くらい造作も無い事だ。手間はかかるけどそれは仕方ない―――
―――ズゥン
「ん?」
ん?
今、何か聞こえたような……
―――ズゥン、ズゥン
「んん?」
んん?
え? え、何だこの不穏な音は……
―――ズゥン、ズゥン、ズゥン
「……ん!?」
……ん!?
……すまん。本当は分かってた。だってレーダーに表示されてるし、地味にアラームも鳴ってたし。……バックモニターにも、バッチリ映ってるし。
―――ズゥン
恐る恐る……本当に恐る恐る後ろ振り返ると、そこには素晴らしい光景が広がっていた。
つい今し方倒した機械仕掛けの恐竜。そのご兄弟と思われる方々が全部で7機、まるで餌を見るような目でダイをロックオンしてらっしゃいました。
……神様よ、死ねってか?
「……ヤバ」
それから恐竜達は示し合わせたかのように、一斉に波動砲を撃ってきた。無人機だからな、示し合わせるくらい造作も無いか。
「うぎゃぁあああああ!!」
ダイは全身全霊で飛び退いた。前振りも何もねぇー、まさに容赦無しの強襲だった。
何とか7発の波動砲は躱せたけど、この状況は最悪だ。
イングリッドはエネルギー切れでブースターもシールドも使えないって言うのに、そのブースターとシールドを駆使して倒した恐竜が今度は7機。
7機……7機だと? ふざけんな! どうやって倒せって言うんだ、あんな怪物!?
てかダイ自身体力も限界なんだぞ! こんなの死ぬしかねぇーだろ、もう!?
「うぎゃっ、うぎゃっ、うぎゃぁあああああ! 死ぬぅううううう!!」
それでもダイは諦めようとはせず……と言うかほぼ条件反射みたいな感じで、撃ち放たれる波動砲を死に物狂いに躱していた。
ダイ……お前スゲェーよ。俺だったらもう目つむって一服しながら死を待つわ。
しかしダイの回避劇もだんだんと追い詰められているようにも見える。それは多分気のせいじゃないだろうな。
つまりは体力が底をつきかけているんだ。どうにもならねぇーじゃん、これ。
「うぎゃぁ! ど、どうしたらうぎゃぁ!」
どうもできねぇーよ。完全に手詰まりだ。
イングリッドはエネルギー切れだし、こう7機の波動砲を躱しながらじゃライフルも手榴弾も使う余裕はないし、もう打つ手なんて無い……あれ?
「うぎゃぁ……あれ?」
打つ手が……あるじゃねぇーかっ! ジャマーブラストって言う切り札が!!
「忘れてたぁー! ジャマーブラスト!」
ジャマーブラストはイングリッドの起動動力と同じで内部貯蓄用のコンデンサーを設けている。だからエネルギー切れの状態でも使えるんだ。
眼帯野郎に使った時は有人機相手だからどうにもならないんでお蔵入りになったけど、無人機が相手なら十分使える。
そして直ぐさま使用したジャマーブラストは恐竜に効果覿面だった。まるで金縛りにでもあったかのように静止しやがったぜ……でも1機だけな。
そりゃそうだ、ブラスト照射だとほぼ一点にしか照射できないから止められるのは1機が関の山だ。残りの6機は普通に波動砲撃ってくるし。
しかもチェーンガンまで撃って来やがったし。
「うぎゃぁあああああ!!」
ジャマーブラストの脅威を思い知ったのか、恐竜どもは一気にトドメを刺そうと総攻撃を仕掛けて来やがったぞ。
たかが木乃伊な小僧1人に張り切り過ぎだろうが。もうちょっと手を抜いてくれてもいいだろうに。
ジャマーは照射し続けないと効果が無い。逃げ回ればまた直ぐに静止していた恐竜も動き出す。結局打つ手なしかよ。
「うぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぁぁぁぁぁ!!」
悲鳴のレパートリーが増えている……それだけ追い詰められていると言う事なのだろうか?
どっちにしてもこりゃヤバい。今度こそ打つ手無くして終わるか?
終わるしか、ねぇーよな……。
だってもう、どうしようもないじゃんかよぉ!
「うぎゃぁ! うぎゃぁ! うぎゃぁ! う……うがぁー!!」
しかしダイはそれでも諦めようとせず、ここで再びジャマーを照射して一番近くにいた恐竜の動きを止めた。
そして他の恐竜の追撃を死に物狂いで躱しながら、動きを止めた恐竜の口を目掛けて手榴弾を投げてやった。ここに来てまさかの反撃だと!?
そう言えばダイ、追い詰められると凄い事する奴だったな。
だが、せっかくの手榴弾も他の恐竜がCIWSで迎撃して終わった。大した連係プレーだなコンチクショー!
しかもこの反撃が命取りだった。その手榴弾を投げた僅かな隙をつかれて、恐竜どもの猛攻が躱し切れなくなったんだ。
「うぎゃあああああ! うぎゃあああああ! ヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバァー!!」
それでも土壇場根性で必死に躱したが、それも直ぐに限界が来た。
チェーンガンで追い詰められ波動砲で飛ばされまたチェーンガンで追い詰められて、それが何度か繰り返されていく中で遂に足を躓き、転倒してしまった。
転倒したダイに立ちはだかる恐竜がこちらを捉え、容赦なくチェーンガンと波動砲を撃とうとする。
(ダメだ、やられる……!)
ダイは咄嗟にジャマーを照射して目の前にいる恐竜の動きを止めた。だがそれじゃダメだった。ダイの背後にも今まさに波動砲を撃とうとしている恐竜がもう1機いたからだ。
これはダメだ、転倒した状態ではあの高威力の波動砲を躱す事はできない。
つまり……詰み、だ。
「うがぁああああああああああ!!」
決死の雄叫びをあげてどうにかしようとするダイだったが、流石にこれは無理だ。この砲撃は躱せない。
……クソっ!
「あああああぁぁぁぁぁ………………あれ?」
……あれ?
なんか……撃って来ない?
何故だか恐竜が撃って来なかった。波動砲も、チェーンガンも。
何故だ、と疑問に思うより先に脚が動いた。本能的が逃げろと叫んでいたから。てか多分叫んでた本能って、俺なんだろうけど。
逃げろぉぉぉぉぉ、ダイィ!
だがその途端になって恐竜が撃って来やがった。波動砲とチェーンガンの両方ともを。何なの、コイツら?
「うぎゃあああああ!! でも助かったぁぁぁぁぁ!」
いや、全然助かってねぇーからな。
九死に一生は得たが、まだまだ絶体的な死がそこら中から飛んで来やがるからな。弾と言う形で。
だが今の得た一生でダイは良い事を思い付いた。
「ジャマー!」
猛ダッシュで走る軌道上にいた恐竜へジャマーを照射、それの動きを止めて一気にその横をすり抜ける。
ジャマーで手近な奴を静止させていればある程度回避はできる筈だ……と思えばすり抜けるた先にまた別の恐竜がいやがった。
やっぱそう甘くは無いか……。
「ジ、ジャマー!」
そいつもジャマーで静止させるが、しかしそれがマズった。ついさっきすり抜けた恐竜がこっちに向き直ったんだ。
旋回力に自信がある恐竜は直ぐに向き直ってダイをロックオンしている。
撃たれると察したダイは即座に飛び退いた。こう言うのは考えるより先に行動あるのみだ。
ところが何故か、恐竜はまた撃って来なかった。
「あれ? 何で……って、うぎゃぁ!」
やっぱ撃ってきた。何故だか知らんが、少し遅れてから撃ってきたよ。
どうにも奇妙だ。コイツらたまに撃って来なかったり、そうかと思ったら撃って来たりする事がある。しかも条件がまちまちで判断がつかない。
一体、何なんだ?
「うぎゃぁ! うぎゃぁ! うぎゃぁ! し、しまった!?」
回避し続けている中でうっかり恐竜に近付き過ぎてしまった。
恐竜は近付き過ぎると、尻尾の鉄球を振るってくる。
既にモーションに入った恐竜。ジャマーは、間に合わないか?
「うがぁー!」
しかしダイも負けじと、迫って来る尻尾を高跳びみたく背面跳びで躱した。何故背面跳びなのかは……多分パニクって混乱してたんだろうな。
それからバク転するように着地して直ぐに距離を取ろうとする。けど着地したその場で振り返ると、そこにはまた別の恐竜が待ち構えていた。
「ヤバっ!?」
直ぐに飛び退こうとしたが、しかしコイツも何故が攻撃の手を止めている。撃とうとはしていなかった。
そして後ろの、たった今尻尾を振るってきた恐竜もまた波動砲とチェーンガンの何れも撃とうとはしていなかった。何故―――て、横から来た!?
「うぎゃぁ!」
何で前門後門が来ないのに横門からは来るんだよ!? おかしいだろ!
寧ろ前後の奴らの方がチャンスだろ。挟み討ちにできたんだから……挟み討ち?
待てよ。……そう言えばさっきも、そのまた前も、恐竜どもは前後に配置された挟み討ちができる状態にあった。
思えば奴らは遅れて撃って来たと言うより、挟み込まれる位置から移動した直後に撃って来たとも捉えられる。
挟み討ち。対角線上に位置した配置。……そうか。
「FFだ!」
そう言う事か。考えてみればあのバカげた威力の波動砲だ、味方に当たったらシャレにならねぇーのは目に見えている。
だから攻撃して来なかったんだ。FFで味方が被弾するのを避ける為に。射線上に味方がいる場合だけは攻撃の手を止めていた訳だ。
ひょっとしたらこれは、勝機が見えて来たかもしれない。
「だぁー!」
ダイは猛ダッシュで駆け抜け、フロアの中心付近まで来た。
レーダーで見ると7機の恐竜はこの円いフロアで、一箇所に固まらないようまんべんなく分散している。そこから2機3組の対角線を引くとする。なるべく中心を通るような組み合わせでな。
そうすると3本の対角線に交点ができる。その交点の位置に行けば4機、上手くいけば6機の恐竜の砲撃が止む事になる。
そうなれば最後の1機はジャマーで押さえ付けられる。その交点にさえ辿り着ければ、一撃必死の波動砲を撃たれずに済むんだ。
ダイは恐竜どもの攻撃を掻い潜って必死に目的の交点まで辿り着いた。そしたらもうびっくり、あれ程しつこく砲撃してきた恐竜どもの攻撃がパッタリと止んだよ。6機ともな。
運良くも3本の対角線がほぼ1点に交差する配置にいたんだ。……というよりコイツらこのフロアに、まんべんなくといよりは均等に配置してやがった。
均等な配置なら対角線はほぼ中心の1点になるよな。迂闊な奴らめ。
「ジャマー!」
そして唯一攻撃を仕掛けようとしていた恐竜にはジャマーで黙らせる。
とどのつまり、これで恐竜どもは何もできなくなった訳だ。
―――ドスゥン、ドスゥン
……まぁ、恐竜どもが動けなければ、の話だけど。
コイツら普通に脚あるもんな。砲撃ばっかで旋回以外は全然動いてなかったけど、脚あるんなら動けるよな。
て事はだ、味方の射線上から離れれば撃てるって訳だよな。
ははは……やっぱ勝機は無いんだな、これ。
「うぎゃあああああ!!」
結局ダイは全力疾走で逃げ回るしか無かった。もう底をついた体力で。
詰んだな、今度こそ。
イングリッドはジェネレーターがオーバーヒートしてもコンデンサーに貯蓄電力が残してあるから最大で12時間、つまり半日は動けるんだ。だってさあ、エネルギー切れで動けなくなったところをやられるとか間抜けな死に方絶体嫌だろ? だから常に予備電源を用意しておく必要があるんだ。




