第46話 これは怪獣ですか? いえ、それは恐竜です……どう言う事?
システム補助59%
何故に?
……いやいやいや、マジで何故に?
取り敢えず整理すると、寝床を探していたら何もないフロアに出て、そしたら怪獣が出てきて追い詰められた……何故に?
そりゃさあ、今まで事を鑑みたらダイは神様によっぽど嫌われているんだろうなって思うよ。いくら鈍いダイでも気付くよ、そりゃあ。
でもさあ、ダイも頑張っただろ。もう餓死寸前まで追い詰められたのに、諦めず必死に頑張って足掻いてここまで来たんだろ。
頑張って頑張って漸くこの苦難を乗り越えられるって言う矢先にさあ、乗り越えた先が底無しの崖だったとかさあ、そりゃいくら何でもあんまりじゃないのか神様よぉ!!!
てかさ、何故に怪獣?
あれこの地下5階の上の地下4階を挟んだ、そのまた上の地下3階にいた筈じゃん! その巨体でどうやって2階層分も降りて来られた!?
有り得ないだろ。怪獣だぞ? 全長ざっと40m、イングリッドの5倍もある巨体だぞ? 無理だろ、不可能だろ、普通? それが何故に―――
―――ギロ
「ひっ!」
怪獣の睨みにダイは委縮してしまった。当然だ、いくら成長したとは言っても相手は怪獣。今まで戦ってきた無人機とは比べ物にならないんだ。
しかもそれだけじゃない、ダイにとっては心の奥底に深々と刻み付けられた恐怖と言う名のトラウマ。その心の傷がダイを縮み上がらせていたんだ。
まさに蛇に睨まれた蛙だった。地下3階で刻み付けられたあの恐怖が。それがよりにもよって何故に目の前に……って撃ってきた!?
お馴染みの口から波動砲を撃って来やがった!
「うぎゃあああああ……あれ?」
しかし撃たれた波動砲の波動弾を必死で躱したダイは、その時の違和感に気付いた。
違和感、と言うかなんと言うか……小ちゃかったんだ、波動弾が。
怪獣が今まで使ってきた波動砲にしては、何故か小さい。それに威力も、床に着弾したその破壊力は地下3階で目の当たりにしたものよりずっと劣るものだ。
これまた何故に?
「……コイツ、怪獣じゃ無い」
そう、その真相は……コイツは怪獣では無かったと言う事だ。
いきなり目の前に降って出てきた巨体だから思わず怪獣と錯覚してしまったが、よく見るとその巨体は怪獣程のものでは無い。
ざっと全長20mと言ったところか。イングリッドよりデカいが倍くらいしか無い、大頭無しとほぼ同サイズだ。道理で口から撃つ波動砲が小さい訳だな。
それにフォルムも違う。怪獣は日本を代表する怪獣王ゴ◯ラのフォルムなんだけど、コイツは似てるようで全く違うフォルムだ。
言ってみれば恐竜だ。そいつは肉食恐竜を代表するティラノサウルスの姿そのものだった。ははは、怪獣じゃなくて恐竜かよ。
「なんだ、怪獣じゃ無かったのか。……よし、やってしまおう」
ダイの奴、怪獣じゃないと分かった途端強気になったな。それだけ怪獣にやられたトラウマが尾を引いていたのか。
そうこうしてる内に怪獣改め恐竜が波動砲第2射を放ってきた。今度はしっかり見極めている、躱せるか?
「いや、シールドだ!」
しかしダイは敢えて回避はせず、眼帯野郎からくすねた波動シールドでのガードを選ぶ。
予想通り、波動シールドは恐竜の波動弾を防ぐ事に成功した。どうやらこのシールドなら十分防げるみたいだ。……でもエネルギーが凄い持ってかれる。
これは波動シールド。波動の力で受ける衝撃を相殺するシールドだが、その為に使う波動でエネルギーかなり持ってかれるんだ。
だから安易にばんばん使えなかったんだけどな。
「……やっぱ躱すか」
それがいい、こんなのでいつまでも防ぎ続けてたらあっという間にエネルギー切れだ。
イングリッドのジェネレーターは高い発電力を有するが、それを大幅に超えるエネルギー消費は控えないとならない。ここは走るが勝ちだ。
なので次の波動砲は躱した。割とギリギリで。
今のイングリッドはSWEMブースター搭載型になっているから、ブースターを使っていない状態では逆にブースターのノズルが身体を重くしているだけだ。
それに波動シールド、地味にこれイングリッドの全身をほぼ覆える程の大型だから重いし、使ってないと邪魔になる。
これだけ機重が嵩張れば、今までのように軽快には動けなくもなるさ。
そしてまた恐竜の砲撃、これは少し掠ってしまった。
マズいまぁ。機体が重くなっているものあるが、それ以上にダイの集中力が危うい。
そもそもダイは寝床を探してここに来たんだ。さぁ寝ようって時にこの恐竜と対決、死ねってか?
「仕方が無い……ブースト、5%解放!」
ダイはSWEMブースターの推力を5%に留めて起動した。シールドを使ったせいでエネルギーを大幅にロスしたからな、極力節約だ。
5%でもまだ機体の重さは残るが、しかし恐竜の波動砲をギリギリでもちゃんと躱すくらいの身軽さは発揮できた。
砲撃を回避、砲撃を回避、段々と慣れてきたところでダイも反撃に打って出る。
恐竜の砲撃は発射間隔に僅かだが隙がある。その隙を狙ってライフルで銃撃を仕掛けた。取り敢えず一番狙い易い胴体を。
集中力が危うい割に的確な銃撃は見事に命中して……呆気なく弾かれた。
「か、硬い……」
大頭無しと同じ大きさだからもしやと思ったが、やはりこの恐竜も外装が硬い。ライフル程度では貫通できなさそうだ。
無論効いていない訳ではない。硬い外装も無傷ではなく、凹んだり傷がいったりして目に見えるダメージはある。
なら持久戦を覚悟でライフルを撃ちまくるか? そうすれば何れ外装も持たなくなるだろうし。
ただそれだとダイの体力に不安が残る。
高カロリー輸液を2パック飲んだとは言えまだ木乃伊状態から回復していない今のダイ。木乃伊に体力なんかある訳ねぇーだろ。
だったら手榴弾を用いて短期決戦に挑むしかない。幸いスキャニングで確認した限り、恐竜の武装は両手の中のレーザーCIWSだけだ。
波動砲が表示されないのはイングリッドのデータベースに無いからだろうが、まさか他にもデータベースに無い武装を隠し持っていると言う事は無いよな。……多分。
なら実質恐竜の脅威はあの波動砲だけ。背ビレも見当たらないし怪獣みたいな波動光線を撃ってくるような事も無い。
「よし、回り込む!」
ダイはブースト5%のまま、磨き上げてきた脚力で猛ダッシュして恐竜の背後に回り込む。死角に入ればCIWSで迎撃もできまい。
そして素早く手榴弾を投げる。これも磨き上げてきた豪速球だ、迎撃は間に合わないだろ。
―――ズドォーン
だが俺達の予想に反して恐竜の迎撃は成功した。恐竜は素早く旋回してCIWSを撃ったんだ。コイツ、この図体で旋回力は高いぞ。
「だったら……」
手榴弾が迎撃されるなら直接攻撃だ。ダイは猛ダッシュで恐竜の波動砲を躱しながら接近し、ライフルを左手に、右手でナイフを抜いた。
狙うは装甲で守られていない関節。首か? ……いや、ここは無難に脚を狙う。
恐竜の波動砲を躱しつつ、一気に懐まで入った。狙うは右脚の膝、そこにナイフを突き立てる。
そしてまた波動砲を躱す。既に至近距離、いける―――
「うぎゃっ!?」
―――いけなかった。
いけると思ったんだが、恐竜は持ち前の旋回力で自らの巨体を振ると、尻尾の先を叩きつけて来やがった。しかもその尻尾の先、なんか棘だらけの鉄球になっていたんだが。
[M6 メイスハンマー]
ヤバいと察して咄嗟に背中のシールドで受け止めたけど、そのまま叩き飛ばされて壁に激突してしまった。しかもナイフまで落としてしまったし。
まさか尻尾に鉄球か。さっきスキャニングで表示されなかったのは正面からだと尻尾が見えなかったからだな。スキャニングは見える所しか解析できねぇーし。
流石に今のは効いたが、そこへ追い打ちかけるように波動砲を撃って来る。ダイも倒れてる訳にはいかず、飛び退いて躱した。
そして受け身を取って体勢を立て直すが、しかしこれは困った。あの恐竜の旋回力はそのまま鉄球の打撃力に繋がる。あの速さの鉄球を躱すのは至難の業だ、接近するのは諦めた方がいい。
手榴弾もダメ、接近もダメ、詰まる所あとはライフルの銃撃で持久戦に挑むしか無いと言う事になった訳だ。
できるのか、今の(木乃伊状態の)ダイに? ……いや、無理だろ。
どうする、ダイ?
「……え?」
突如、恐竜がまた動き出した。しかし今度は波動砲じゃない、何故か腹の所の外装が開いたんだ。まるで口が開いたかようにぱかっと下に。
そして開いた腹の中は影になってよくに見えなかったけど、スキャニングで表示されたそれに俺達はギョッとさせられた。
[XM1013 57mmチェーンガン]
それダメな奴やん。しかも隠し武器とか、めっちゃダメな奴やん。
大頭無しのいたフロアで四本脚の群れを殲滅するのにダイが使ってたチェーンガン、そんなものを隠し持っていたとか、反則だろ。
「うぎゃあああああ!!」
恐竜の発砲と同時に猛ダッシュで全力疾走、ダイは恐竜の乱射から必死で逃げた。
チェーンガンはガトリングガンと比べれば威力こそあるものの、速射性と連射性で大きく劣る。ガトリングガンを躱しきれるダイにとっては躱せない銃撃では無い。
しかしそれはベストコンディションでの話、木乃伊状態のダイではチェーンガンだろうとブーストを使っても避けるのがギリギリだ。
これがガトリングガンだったら確実にアウトだったろうな。そこは不幸中の幸いか。
だがこいつは四本脚とは違う。寧ろ大頭無しと同じカテゴリーにある中ボスクラスだ。つまり何が言いたいかというと……チェーンガンだけで済む訳がねぇーって事なんだよ馬鹿野郎!
てかチェーンガン乱射しながら普通に波動砲を撃って来やがったからな!
「うがぁー!」
ダイは波動弾を飛び退いて躱し、受け身を取って体勢を立て直してはまさ更にチェーンガンから全力疾走で逃げる。
「うぎゃあ、うがぁー、うぎゃあ、うがぁー、うぎゃあ」
疾走して飛び退いて立て直してまた疾走して……ほぼその繰り返しで反撃の余地なんかまるでなかった。
無論ただ同じ事を繰り返してる訳じゃない。飛び退くタイミングや方向、体勢とかも色々微妙に変えながら躱している。
そうしないと回避パターンを読まれてしまうからな。だがら身体だけじゃなく頭もフル回転だ。
木乃伊のダイには余りにも酷だけど、これ一瞬でも気を緩めたら一巻の終わりだからな。
だが気を緩めなくても状況的にはもう詰んでいた。だって反撃の余地が無いんだぜ? 攻撃手段が無いのにどうするんだよ?
「うぎゃあ、うがぁー、うぎゃあ、うがぁー、うぎゃあ、コノヤロー!」
業を煮やしたダイはチェーンガンをシールドでガードし、その隙にライフルで銃撃を仕掛けた。
チェーンガンは完全防御できたもののエネルギーはまた随分と減ったし。その割に恐竜へのダメージは微々たるものだったけどな。
どないせいっちゅうねん!
「うぎゃあ、うがぁー、うぎゃあ、うがぁー、うぎゃあ」
そしてまた回避疾走劇に戻る。
結局反撃の手段が無いから手の打ちようが無い。今みたいにシールドガードを使ってもエネルギーロスが多過ぎて恐竜がやられる前にこっちがやられる。
しかも全力疾走で逃げ続けるのはダイの体力的にも限界が迫るが、イングリッドの電力的にも限界が迫っている。
SWEMブースターは5%しか解放していないが、それでも常に全力疾走していればじりじりとエネルギーが消費していく。既にシールドガードにも使ったせいで半分以上が消費されたままだ。
このままいけばどっちにしても何れエネルギー切れで詰む。どうする? 今度と言う今度こそ、マジのマジでヤバいぞ!
「うぎゃあ、こ、こうなったら……!」
ダイが何かを覚悟した。すると今度は……何をとち狂ったのか、チェーンガンの銃撃の中を突っ切って恐竜に突進しやがった。
高火力のチェーンガンを受けてはマズいと考えてシールドでガードしながら突進するが、そのせいで残り少ないエネルギーが更にごっそりと無くなっていく。
それでもダイは必死になって突進し、波動弾は躱しつつもチェーンガンはガードして一気に恐竜の懐まで接近した。
そこへまた恐竜の波動砲がくる。それがダイの狙い目だった。
「これでどうだぁー!」
ダイはここでSWEMブースターを一気に50%まで解放して跳躍、恐竜の口に向かって飛び込んだ。波動砲を今まさに撃とうとしている口へ。
恐竜の口から波動砲が放たれる。しかしダイはその口を―――シールドで塞いだ。
―――ズドォオオオオオン!
そして凄まじい爆発。恐竜の波動弾はシールドに塞がれた事で外へは放たれず、行き場を失って恐竜の口の中で爆散した。
それに耐えられる程、恐竜の口も頑丈じゃない。爆散した波動弾に耐え切れず、恐竜の口は―――いや頭は見事に吹っ飛んだ。ダイも吹っ飛ばされたが、機体もシールドも無事なままだ。
恐竜もまだ生きているが、頭を吹っ飛ばされて完全に怯んでいる。トドメを刺すなら今しかない。
「くらえ、手榴弾!」
ダイは再び手榴弾を手に取って投げた。
恐竜の真正面からの投球だ。普通ならCIWSで迎撃されるのは目に見えている。
だが今なら、頭を吹っ飛ばされた今なら手榴弾が迎撃される前に届くかもしれない。
あの絶体絶命の攻防戦で培わられた豪速球だ、当たりやがれぇ!
―――ズドォーン
だが結局、手榴弾は迎撃されてしまった。
波動シールドのエネルギーロスの量ってな、受ける威力に比例するんだ。波動砲みたいな高威力だとヘリ幅も多いし、チェーンガン1発当たりならヘリ幅も少ない。だからダイは恐竜に接近する時チェーンガンは受け止めて波動砲は避けていたと言う訳だ。




