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第43話 痩〜せ〜た〜……痩せ過ぎだぁ

 システム補助59%


 ……なんか、久しぶりみたいな感じになってしまったな。


 久しぶり過ぎて忘れられてないよな? 俺、マックスだぞ。主人公は、ダイだぞ。


 まぁここは忘れられてないと信じて話を進めるが、システム補助が前回から一気に7%も減った。


 ここ最近減り幅が少なくなったなぁと思ってた手前いきなり7%とはどう言う事かと思うだろうが、実はどうと言う事は何も無い。それだけの時間が経過したんだ。


 そう、あれから2週間が経過してしまった。タイムリミットの2週間が。


 勿論あれからと言うのは手持ちの食料が尽きてからのあれからだ。このプラントに来てから2週間と言う意味と言う意味では無い。てかこのプラントに来てからだともう1ヶ月になる。


 この2週間でダイは地下6階から地下4階へ上がる事を目標としてした。地下4階には使われなくなった食堂があるし、そこには缶詰とかの保存食も確保されている。


 だから地下4階まで行ければ当面の食糧問題は解決できるんだが、それが達成できたかと言えば……できる訳ねぇーだろ馬鹿野郎!


 てかな! この2週間かけてやっとこさ辿り着けたのは地下5階まで! それがまだ2日前の事だから!!


 つまりな、この2週間何も食ってはいないからなっ!!


 この2週間、ダイは水だけで何とか凌いだんだ。歩兵機を操縦してカロリーが大幅に持っていかれるこの状況で2週間だ。


 分かるか? 信じられない地獄だぜ?


 あり得ねぇーような空腹感だぞ。最初のうちはまだ我慢できるレベルだけどな、次第に腹を締め上げられるような感覚が増していく。まるで卑しい拷問だ。


 その結果ダイは、戦闘にも集中できなくなるわ操縦も覚束無くなるわ最後は夜も眠れなくなるわで散々な日々だったんだ。


 まさに地獄だぜ、怪獣よりも遥かに脅威だわ。んで、その空腹に耐えて2週間経ったダイは、瘦せたよ。


 そりゃ瘦せるさ。水しか飲んでないからカロリーは取れてないし、しかも歩兵機を操縦し続てるから減り幅が凄い事になるし、そんな生活が2週間も続いたらそりゃー痩せるよ。


 それでな、肥満体型のダイががっつり瘦せて格好良くなったんじゃないかとか期待してくれたかい?


 期待しちゃうよなぁー。そう言うの定番だもんなぁー。


 てかこの手のジャンルで肥満体型の主人公は無いよなぁー。瘦せてもらわないと困るもんなぁー。


「ぼぁ〜……ばぁ〜……がぁ〜……ずぅ〜……びぃ〜……だぁ〜……」


 馬鹿野郎! 木乃伊(ミイラ)だよ、木乃伊!!


 適度に痩せたんならまだしも、2週間だぞ。タイムリミットを過ぎて死ぬ寸前まで痩せ細ったら、木乃伊にもなるわ!


 無駄な贅肉こそ無くなったけどな、必要な筋肉も無くなってんだ。もう今のダイはな、骨と皮だけしか残ってねぇーんだわ。


 男が格好良くなるにはな、痩せりゃいいってもんじゃねぇーんだよ。適度に食って鍛えて必要な肉を付けなきゃ木乃伊みたいになっちまうんだよ。


 まるで拒食症患者みたいな状態だぜ。骨がくっきり浮かび上がってるし、これじゃいつ死んでも不思議じゃねぇーよ。


「ぼぁ〜……ばぁ〜……がぁ〜……ずぅ〜……びぃ〜……だぁ〜……」


 翻訳。お腹空いた、と言っている。


 もう地下5階に上がってからこっち、ゾンビみたいな事しか言わなくなってな。マジで木乃伊になったんじゃないかと常に冷や冷やさせられてんだわ。


 こんな状態で戦闘になったらどうするんだと不安の声もあるだろうが、実は意外とそうでもなかった。何でかって言うとな―――


 ―――タラララララーンターラータッターラーン


 あ、野生の四本脚が現れた。


 行くぞ、イングリッド!


 ダイは空腹だった。グゥ~……。


 ダイは空腹の限界で幻覚を見た。


 ダイは四本脚が美味しそうな肉に見えた。


「にぃ~……ぐぅ~……うがぁー!」


 ダイは四本脚に襲い掛かった。


 四本脚のガトリングガン、けれど四本脚の攻撃ははずれた。


 ダイは暴れている。


「うがぁー! うがぁー!」


 ダイは暴れて四本脚を解体した。


 四本脚に勝った。ダイは四本脚を食おうとしたが食べる事はできなかった。


 タラララーンタラララッララーララーン―――


 ―――とまぁこんな感じでな、分かり易くドットゲームの戦闘シーンっぽくしてみたけど、詰まる所ダイは空腹の限界に達したせいで逆に強くなっちまったんよ。


 だから戦闘自体はあまり問題ではなかったんだ。戦闘後はイングリッドに乗ったまま四本脚の脚をもぎ取って食らいつく奇行を見せるが、どうかそこは目をつぶってほしい。


 これが地下6階に出没した自爆する無人機カタツムリが相手だったらそうはいかないだろうが、悪運良くも地下5階に来てからはカタツムリが現れなくなったんだ。これに限っては本当に助かったぜ。


 そもそもたった1階層分上がるのに10日以上もかかった主な理由はカタツムリだ。あれが自爆するせいで何度も何度も地下8階の拠点で修理する羽目になったんだからな。


 この地下8階までの往復がとんでもないタイムロスになったせいで10日以上もかかってしまったんだ。全くあのカタツムリには困ったもだぜ。


 だからこっから先は楽に行けると信じたいな。いや、マジで……。


 ただ楽に行けるとしても、今日中にってのはまず無理だろうな。この地下5階を丸2日歩き回っているけど、未だ進展は全くないし。


 この階層の規模が地下6階と同等だとしたら、カタツムリがいないにしてもざっと5日以上はかかる。


 つまり地下4階まで行くのにはあと3日。……無理だろ、どう考えても。


 人間水があれば暫く生きていられるけど、それでも精々1ヶ月―――4週間が限界だ。


 しかしダイは最初の2週間で色々アクシデントがあっから1日1食まで、最後の方は更に感覚を空けての1食に切詰めているからこの計算はもっと少なく見積もるべきで。


 更に歩兵機の操縦だ。全身を使って操縦する歩兵機はカロリーの消費量が桁違いだし、それをほぼ四六時中操縦しつつけていりゃあ4週間と保つ訳が無い。


 以上の事を踏まえてタイムリミットはざっと2週間と見積もっていたんだが、そのリミットも過ぎてしまった結果がこの木乃伊だ。


 当然と言えば当然だけどな。2週間ガチで水だけで過ごしていたら木乃伊にもなるわ。本当にダイは何も食って無いんだぞ。


 ……いやまぁ、実は全く食べてないと言う訳でも無いんだけどな。


 一応口にする物はあったんだ。何でそれを言わなかったのかと言うと、あんまり言いたくないんだよ。


 まぁ知りたいなら教えるけど、でも覚悟だけはしておいてくれよ。極限まで追い詰められたダイが何をしでかしたか、少々目を覆いたくなるからな。


 まだ地下6階にいた頃だから、ダイの意識もそれなりにはっきりしていたんだが。しかし空腹の限界が迫る中で倫理観を失いつつあったダイは徐々に暴走してしまったんだ。


 それを承知した上で聞いてくれ。では、どうぞ。






 ―――3、2、1、キュー!


 地下6階のとあるフロアでの事だ。人がいた痕跡のある周辺一帯を、ダイは歩兵機から降りて血眼になりながら漁っていた。


 前みたいに誰かの食い残しとかでも落ちてないかと期待していたんだ。


「無い、無い、無い、無い無い無い無い無い!」


 結局見つからなかったけどな。そんな上手い事はいかねぇよ。


「だぁー、くそ! なんにもねぇーぞ! ……ん?」


 まぁ食い物は見つからなかったんだがな、しかしダイは食い物の代わりになりそうなもの……いや、なりそうだと思った物を見つけたんだ。


 少なくものダイはそう思ったんだ、これをな。


「これ……タイヤだ」


 ……うん、それどう考えても食えないよな? な!?


 多分作業用の運搬車かフォークリフト用のタイヤだろうけど、そんなゴムの塊が食える訳ねぇーよな!?


「……切り刻めば食べられるんじゃないか? 牛すじみたいな触感でおいしいかも」


 食べられねぇーよ。おいしくねぇーよ。


 食わなくても分かる、不味いやつやん。


 だがダイはそれを食す気満々で切り刻み、鍋の代わりになりそうなものを見付けてはお湯で下茹でして、最後に油で炒めやがった。


 火は無かったが起動した歩兵機のジェネレーターがIHの代わりとなったから湯は沸かせたし、油はそこらで見つけた潤滑油で代用できた。潤滑油の主成分は分からねぇけど。


 いやいやいや、そんな危ねぇもん食うなよ。腹壊すぞ。


「意外と美味しそうかも? じゃあ、いただきます。パクっ……オエェ! 不味ぅ……」


 当たり前だ、不味いに決まってんだろ!


「……でも空腹は少し紛れたし、我慢して食べるしかないだろ! うがぁー!」


 マジかぁ……空腹を紛らわす為に無理してタイヤ食うかぁー。主人公がタイヤ食うかぁー。


 うわっ、本当に食ってるよコイツ。勢いつけて口に掻き込みやがったよ。


 お前スゲェーよ、ダイ。俺にゃ真似できねぇーわ。






 ―――3、2、1、キュー!


 とあるフロアの、人しか出入りできない一室入った時の事だ。


 どうも割と偉い人の部屋みたいでな。中は食い物こそ無かったんだが、必要以上に色々な装飾がなされあってな。ダイはその中の1つに目を付けたんだ。


「は、剥製!? これ、クマの剥製だ! 剥製って確か、皮膚だけは本物を使っている筈! だったら……皮は食べられる!!」


 食べられねぇよ! 剥製の皮ってのは防腐処理が施されているんだ。食えるわきゃねぇーよ。


 その部屋に飾られていたクマの剥製なる物をゲットしたダイなんだがな、しかし結局それも食える物ではなかったし。


 そもそも剥製の皮ってのはな、防腐処理が施されるともう動物の皮とは思えない程カッチカチになるし、人の胃袋に入れたらダメな物も使ってんだからな。


 しかしダイはそこまで頭が回らず……てかもう思考がおかしくなりつつあるから目の前のクマに夢中で、どっかから手に入れたカッターナイフを駆使し皮を剥いでいった。


 まぁ食えたもんじゃないが、それが動物の皮なら貴重なエネルギー源になる。今の状況を鑑みるなら無理にでも食って摂取すべきなのかもしれないけどな。


 ……けどな。けどな、ダイよ。


 お前が剥製だと言って皮を剥いでるそのクマ、俺にはどうしてもテディの(ベアー)にしか見えねぇーんだよ……。






 ―――3、2、1、キュー!


「よっしゃ捕まえたぁぁぁぁぁ!!」


 空腹が限界に差し掛かろうとしていたある日の事だった。


 あるフロアを探索していたら、このプラントに来て初めての生き物を発見して、その上捕まえる事にも成功したんだ。


 生きている生物であるならその血肉はダイのエネルギーとして摂取できる。故にダイはその命をいただく事に躊躇は無かった。


 何せこの時既に9日が経過している。僅かとは言え、ダイとしては本当に久々の食料だった。


 直ぐに下処理をして、油(成分の分からない潤滑油)で炒めてソテーっぽくした。これで限界寸前の空腹も少しは和らぐ筈だった。


「できたぁ……9日ぶりの食事だぁ」


 ダイは感動のあまりに浮かんだ涙を拭って、早速自分で作った料理を食した。


「それでは……本日の献立、ゴキ◯リのソテー。いただきまーす!」






 ……もう、止めてもいいか?


 もうさぁ、これ完全にヤバい奴じゃん。割と大らかに言ってもヤバい奴じゃん。


 しかもさぁ、これだけじゃないからな。ダイの痴態レパートリーはまだまだあるからな。


 実際今も解体した四本脚の脚を食おうとしてるけど、実際はイングリッドの口元に押し付けてるだけだし。


 この有り様だと(いず)れ自分で出した糞まで食い兼ねない勢いだけど、食べてねぇから糞も出はしないし。それが不幸中の幸いだった。


 ヤバいなぁ。これは非常にヤバいぞ。


 このままだと主人公としての立場に関わる。SF系の主人公がヤバい奴とか、そんなの絶対にアウトだろ。


 早く何とかしないと、ダイが目も当てられないような事になるかもしれない。この暴走を早く何とかしないと。


「にぃ〜ぐぅ〜……肉うめぇ〜……四本脚の肉うめぇ〜」


 遂には美味いとか言い出しやがった。無機物でしかない四本脚の脚を。


 そもそもイングリッドの口元に押し付けてるだけだし。ダイが食べてる訳じゃないし。


「四本脚うめぇぇぇぇぇ!!」


 まさか、ダイがマジで壊れたのか? 餓死寸前の末にぶっ壊れてしまったのか?


 ……早く何とかしないと!

システム補助のパーセンテージで分かるパイロットの実力表

100%   ⇒ 素人

99~70% ⇒ 三流

69~30% ⇒ 二流

29~1%  ⇒ 一流

0%     ⇒ 達人


ダイいつの間にか二流に格上げしてたんだな。頑張れ、ダイ。

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