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第41話 絶体絶命の攻防戦、再び……マジかぁ

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 大頭無しの死骸が佇むそのフロアは、少し前にダイが激戦を繰り広げた場所だった。


 円い空間の中心に柱が一本立っていただけの簡素な作りで横壁の上には足場があり、その足場の上の横壁は何箇所かがガラス張りになっていた。


 ガラス張りの高さは人の背丈ほどのものや歩兵機の背丈ほどのもの、ガラス張りの無い壁などもあってまちまちだ。


 ダイは人の背丈ほどのところから、フロアの中を見下ろしていた。


 こうしてみるとフロアの中は何かの実験場だったのだろう。如何にも歩兵機の運用試験を行っていたかのような雰囲気だ。


 中心の柱はエレベーターだった。今はもう破壊されて、床と天井にシャフトの穴が残っているだけで。


 そしてそのフロアには大頭無しの死骸の他に、四本脚がいた。


 数は8機。だがシャフトの穴の下と、フロアの出入口の先にもまだ何機かいるだろうな。


 まとめて相手をするのは結構キツいが、しかしあのフロアのエレベーターシャフトの穴は重要だ。


 床の穴は拠点から程遠くない貴重な通路、行きしは下のフロアに四本脚がわんさかいたんで通れなかったが、ここから攻めれば四本脚どもを殲滅して開通できるかもしれない。


 それに天井のシャフト穴、あそこを登れば上に行ける。地下6階は勿論、ひょっとしたら地下5階や4階まで行けるかもしれないんだ。


 時間が惜しい今、上の階層に行ける最短コースがあるなら無理をしてでも行きたいところだ。てか絶対に行くべきだ。


 だったらキツいとか言ってられないだろ。即断即決即行動、何事もこれが成功の秘訣だぜ、ダイ。


 さて、どうやって攻める?


「こうやって攻める!」


 イングリッドに乗り込んだダイは、高さ3m足らずの人間用通路にスライディングして強引に通過した。


 幅は結構な広さがあったから歩兵機のイングリッドでも寝そべった状態なら上下左右ともにギリギリ通る事ができたんだ。床とか天井とか思いっきり擦ったけど、そこは気にするな。


 勢いをつけたスライディングによってガラス張りをぶち破り、堂々とフロアに着地した。


 そして四本脚から一斉にガトリングガンを撃たれた。……そりゃそうだ、堂々と出てきたら撃ってこない筈が無いしな。


 しかし、ダイもそこは対策済みさ。


 一斉に撃ってきたガトリングガンの弾を、ダイはシールドで防御した。それもただのシールドじゃない、眼帯野郎の使っていた波動シールドだ!


 前以って回収しておいたんだよ。その防御力は身を以てしる頑強さ、ガトリングガン程度の火器何ぞ効かねぇーぜ。


「ハハハハハッ、効かねぇー! 効かねぇーぞ!! まるで効かねぇーなぁ!!!」


 何処かで最上(もがみ)ダイ死亡説が出回っている事も知らずに、ダイは最初の頃からは考えられないくらいハッチャケていた。


 全く、ハヤセの気も知らないで……いかん、これメタ発言だ。


 ゴホンッ……さて、雨のように降り注ぐガトリングガンの弾をを防ぎつつ、ダイは波動シールドでガードしたまま四本脚に突進した。


 まとまっている所を狙って勢いを乗せたシールドアタックを決めると、ぶつかった瞬間自動的にシールドの表面から波動の衝撃波は放たれる。


 これが波動シールドの機能だ。接触した対象に波動を流して運動エネルギーを減衰させ、威力を相殺させる。怪獣の波動砲でさえ、これなら相殺する事ができるだろうな。


 しかし運動エネルギーがない対象は波動を受けて逆に飛ばされる。故に強力な打撃武器ともなり得る訳だ。


 よって運動エネルギーがないただ立ってるだけの四本脚は、波動シールドをぶつけられて吹っ飛ばされた。しかも3機同時に。


 更に巻き添えを食らってもう1機がやられ、計4機が一瞬で大破した。


 波動シールド、スゲェー……。


 回収できて本当によかったぜ。眼帯野郎の身体を吹っ飛ばした時、左腕も吹っ飛んで破壊されていたんだが、その時波動シールドだけはほぼ無傷で残っていたんだ。


 これは頂かない訳にはいなかいと思ってな、ゲットだぜ!ってしてきた。だってそれ主人公の特権だし。


 感謝するぜ、眼帯野郎。礼は言わんがな。


 しかしカノン砲の方は波動シールドにではなく眼帯野郎の腕に合わせて固定されていたから、それは頂けそうに無いんで諦めた。しかも少し壊れてたし。


 でもまぁ、波動シールドだけでも戦利品としては滅茶苦茶得したもんだ。


 お陰で残りの4機も波動シールドを駆使すれば難なく勝てた。下と横から増援がやって来るだろうが、その前に大頭無しの死骸を駆けあがって上の足場に到達する。


 壁にもたれかかるように倒れている大頭無しは元々壁を登る為に利用していた。その先にある足場の上の横壁に空いた穴の先、格納庫を行き来する為に。


 その時は格納庫にあったメンテナンスドックを拠点に運ぶ為に利用していたが、今は違う。格納庫には他にコックピットの無い新品のイングリッドが何機かあったし、それで腕を付け直す必要がある。


 何せ今のイングリッドは左腕が無いからな、波動シールドを使うとライフルとかが使えないんで困るんだわ。ついでに言うと、SWEMブースターも使えない。


 波動シールドはイングリッドからエネルギーを吸い取って機能していた。腕の取付部(ハードポイント)から供給しているらしくてな、だからブースターに回すエネルギーが無くなるんよ。


 しかもこのシールド、かなりのエネルギーを持っていく。気を付けて使わないと直ぐにオーバーヒートしそうで恐いわ。


 眼帯野郎は平然と使いまくっていたのに。一体奴はどんなジェネレーターを使ってやがるのやら。


「ええい、余計な事を考えるのは後だ。さっさと腕を取り付けよう」


 ダイはイングリッドの左腕を新品のやつから頂いた物を取り付け、更に爆破で失われたゲッコーも新調しておいた。これも結構大事だし。


 こんにちは、ゲッコー3号。


 さて、イングリッドは復活した。さてさて、フロアの方はどうなったかな? そんなに時間は経っていないから増えたとしても数機程度だろうけど。


「……うわぁ」


 覗き見た眼下のフロアには四本脚が、パッと見で30機くらいいた。しかも現在進行形で増えている。


 ヤベェーな、こりゃ。


 蘇る悪夢、絶体絶命の攻防戦の再来じゃねぇーか。勘弁してくれや。


 どうするよ、これ? 今は波動シールドとナイフしか無いぞ。ライフルもライオットシールドもお釈迦にされたし、手榴弾だって無い。


 さぁどうするよ、ダイ。ここは拠点じゃないんだぜ、迎え討つには厳しいぞ。


「ヤバァ〜……でもまぁ、手がない訳じゃないけど」


 まぁな。ただ、それが吉と出るか凶と出るかは下駄を履かせない事には分からないが。


 いいさ、毎度の事だが出たとこ勝負といくか。






 当然だが四本脚はダイの居場所を察知している。察知していながら攻めてこない。


 さて、何ででしょう?


 答えは簡単、格納庫に行く事ができないからだ。


 ダイのいる格納庫はフロアの高い位置にある足場の先、フックランチャーを持たない四本脚では足場まで登ってこれないんよ。


 ダイは大頭無しの死骸を梯子(はしご)にして登ったけど、死骸は登った後で倒しておいたからもう登れない。


 もう一度立て掛ければ登れるだろうが、どうやら無人機にその発想は無いみたいでな。故にフロアに集まるだけ集まっていながら、何もできずに足踏みするしか無いんだろう。


 だから悠々と準備をする事ができた。四本脚の強襲を受ける事も無く、格納庫の備品で着々と準備を進められたのさ。


 格納庫にはな、新品のイングリッドやそのパーツとか、あと整備用具とかメンテナンスドックしか無い訳じゃないんだよ。


 武器だってあるんだよ。それもかなり凶悪な武器がな。


 ―――ザワザワザワザワ。


 四本脚が動揺してやがる。無人機のくせに動揺とかするのかよ。


 或いは想定外の事態に処理が追いつかないのかもな。何せ突然現れたダイは、巨大な機関銃を装備していたんだし。


 全長が身の丈を超える程もある大型機関銃だ。見るからに威力もあるだろうが、しかし反動も馬鹿にならないのは確実。


 ダイは過去に銃の反動でイングリッドの腕が外れた事が2度もあった。思い出したくねぇー……。


 だが、今回は違う。この機関銃は銃架固定されてあるのだ。


 キャスター付きの銃架だ。これで銃撃する位置まで移動してから銃架を床に固定。あとは存分に撃ちまくるだけさ。


 銃架さえあれば反動は相殺できる。もう腕が外れる心配をしなくていいって訳だぜ。


「さぁくらえ! 57mm口径のチェーンガンだぁ!!」


 [XM1013 57mmチェーンガン]


 それが、ダイがぶっ放した機関銃の名称だった。


 チェーンガンと言うのはガトリングガンと同じで外部動力を用いて連射を行う機関銃である。動力伝達の為にチェーンを用いる事からその名が付いた。


 複数の銃身をもつガトリングガンと異なりチェーンガンは短銃身だから大口径でもコンパクトに仕上がるのが利点と言えるだろう。


 ダイが放ったチェーンガンは口径が57mmもある、四本脚のガトリングガンの倍以上だ。故に1発1発の威力が破格、ガードしたシールドも3発当てれば突破できる。


 連射力はガトリングガンの6分の1ていど程度だけど、それは仕方がない。チェーンガンは構造上どうしてもガトリングガンほどの連射力は出せないからな。


 だから威力で勝負する。弾は57×448mm徹甲弾、口径は倍以上でも1発の威力はガトリングガン1発の8倍近くある。


 これなら3発でシールドを突破して尚且つ本体を破壊できる。これに徹底して撃破する事に専念すれば勝てるだろうさ。


 勿論四本脚も撃たれっぱなしでは無いし、当然撃ち返してくる。向こうは威力そこそこだが連射力は凄まじいからな。


 まぁ、波動シールドがあれば何も怖い事無いんだけど。


 因みにこの波動シールド、波動はオンオフが切り替えられるし、波動が無くても四本脚のシールドより耐久性がある。と言うか耐久性の塊だった。


 波動が無くても弾を容易に弾くし、シールドは全然傷がついていない。ライオットシールドを遥かに上回る耐久力だ。


 しかもかなりデカいからイングリッドが半身で屈んだらすっぽり隠れるし、奴らのガトリングガンとかまるで通らなくなったわ。


 この分なら四本脚の殲滅は時間の問題だろうな。でもぶっちゃけた話、格納庫の出入口を使えば別の通路に出られるから無理して殲滅しなくてもいいだよなぁ。


 しかし、あのフロアは確保しておきたい。下は拠点までのショートカットコースだし、上は4、5階まで行ける可能性がある。


 だからどうしてもこのフロアは確保しておきたいんだ。と言っても、時間の問題しかねぇーけどな。


 気付けば半数の15機前後を撃破した。残機は20程で少し増えたようだが、拠点での攻防戦に比べたら緩やか増え方だ。


 ならこのまま気長にやっていけばいいんだが、しかし食料事情を考えるとそうも言えないから困るんだよな。てか今も割と死に物狂いだし。


 だから1機1機ちまちまと撃破していく訳にはいかない。突破した四本脚のシールドには裏側に手榴弾がある、そいつを爆破して範囲撃破を狙う。


 ―――ズドォーン!


 手榴弾の爆発は広範囲に及び、一度に5、6機ほどを撃破した。拠点では運良くシールドが裏向けに落ちないと使えない奇策だったが、チェーンガンなら威力でごり押しに貫通、爆破が容易にできるぜ。


 これをあと4回も繰り返し今いる奴らは全滅するだろう。あとはどれだけ増援がくるか、だな。


 時間はかけられねぇ、とっとと決着(ケリ)をつけて―――


「―――あ、弾切れだ」


 ……まぁ撃ち続けてたら、そうなるわな。


 チェーンガンはガトリングガン程の連射速度が無いと言っても、1分間に数百発の弾を撃ち出す。


 弾は弾帯式で専用のボックスにから伸びているんだが、ボックスの弾は1000発も入っていない。撃ち続けたらものの数分で弾切れになる。


「いけない、いけない……よし、繋がった」


 ダイは新しいボックスから弾帯を引っ張ってチェーンガンに繋いだ。


 弾切れになってもう終わったかと思ったか? 残念だったな、弾はまだまだストックあるんだよ。


 嬉しい事に格納庫には弾倉ボックスが幾つかあった。そんなに多い訳じゃ無いが四本脚を全滅、それが無理だとしても大量撃破は望めるだろう。


 あとは時間との勝負だ。この攻防戦に丸1日とかかけんじゃねぇーぞ、ダイ。

この銃架があったなら、あの外れたの悲劇を起こした125mmの滑腔砲も普通に撃てただろうけどな。波動砲の右腕も失わずに済んだのに……チッキショー!!

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