第39話 やって来ましたリターンマッチ……走る~走る~俺〜た〜ち♪
システム補助67%
猛ダッシュ。
ダイはSWEMブースターが使えなくなった状態で猛ダッシュをかけていた。
何故かって? 鬼チートな波動ガトリングガンを必死に躱す為だよ、馬鹿野郎!
威力が桁違いの波動ガトリングガンは数発当たるだけでも致命傷になり得るし、シールドや物陰に隠れても直ぐに破壊され兼ねない。
だから避けるしかないんだ。当たったらどう転んでも蜂の巣確定だからな。
ただ、救いもあった。
威力こそ桁違いなんだが、連射速度は四本脚のガトリングガンと変わらない。まぁそれでも驚異的な連射速度なんだが、何度も受けてきたダイは身体で慣れていて、弾がどう来るかの予測ができていた。
だからブーストを使わない猛ダッシュだけでも何とか躱せているんだ。ただ走り続けるだけじゃなく、小まめにテンポを変えたり体勢や走り方を変えたりと色々工夫を凝らして、こっちの軌道を予測されないようにしている。
結局毎度お馴染みの綱渡り……いや、それを超えた糸渡りみたいな状態だけど、それでもちゃんと躱し切れているから問題無し。
それに四本脚のガトリングガンは弾が続く限り撃ってきたけど、眼帯野郎の波動ガトリングガンは大体7、8秒で一旦止まる。
エネルギー事情故か、或いは銃身を冷ます為かは定かではないが、波動ガトリングガンはその7、8秒毎に一拍置く必要があるみたいなんだ。
その一拍があるお陰でなんと躱し続けられる。反撃の余裕は無いけど回避できるだけでもありがたい事だ。
『ちぃっ!』
眼帯野郎は一拍置いた後で、今度は高威力の単射を仕掛けてきた。
五銃身全門で同時発射を繰り出した単射は怪獣程では無いにしろ、ダイの持っていた波動砲よりも遥かに強力な威力の波動弾だ。当たったら1発アウトは間違いなしだぜ。
勿論これも躱す。着弾の衝撃に煽られつつも体勢を保ち、そのまま猛ダッシュを続行する。
もしもこけたり躓いたり、或いは体勢を崩したりしたら一瞬で蜂の巣にされるからな。故にダイはこの猛ダッシュに全神経を集中させていた。
『クソがっ! 無駄に逃げ足ばかり速くなりやがって!』
無駄じゃねぇーぜ。ダイはこの足で何度も窮地を乗り切ってきたんだからな。
だから今回も乗り切ってやる。SWEMブースターさえ復活すれば、まだ勝機はあるかもしれないんだからな。
ただ、問題もある。
まず左腕が無い。肘から先が綺麗に無くなっている。片腕が使えないと言うのは中々苦しい状況ではあったな。
そして次に、ダイの体力が底をつきようとしている。さっきから腹の虫がぐぅーぐぅーとうるさくてな、意識も朦朧と仕掛けているんだ。
とっとと決着を付けたい傍ら、持久戦に持ち込まざるを得ないこの状況が何とももどかしくてならなかった。
果たして最後までダイの体力はもつだろうか?
『ちぃっ!』
眼帯野郎は波動ガトリングガンの一拍置く間にシールドの先端を向けて来た。一瞬だが、そのシールドの内側にある何かがスキャニングできて、それが表示される。
[M4044 90mmカノン砲]
カノン砲だと!? しかも2門あるぞ!
眼帯野郎、まだ飛び道具をもっていたのか!?
「うがぁー!」
流石にこりゃあ躱し切れん、ダイはシールドでガードした。シールドに直撃を受け、凄い衝撃音が響く。
流石に90mmもあると威力もパネェ。ガードしたシールドがエゲツない事になったし、ダイも体勢を崩しかけたがギリギリで持ち直した。
運が良かっただけだが、次同じ事をやられたらシールドがぶっ壊れるか体勢を崩すか、或いはその両方か。どっちにしても詰みになる。
くそっ、ブースターはまだ復活しねぇーのか?
『いい加減観念したらどうだ? 幾ら足掻いても貴様は俺には勝てないんだぞ!』
やかましいわ! ブースターさえ復活すりゃあな、こっちも反撃出来んだよ!
『まさかSWEMブースターを期待しているんじゃねぇーだろうな!?』
―――ギクリッ
『無駄だ無駄だ! すばしっこくなったところで、貴様の反撃なんぞ、何も通じねぇーんだよ!』
それは……そうかもしれない。
向こうの波動ガトリングガンは逃げる他ない一方的な火力。防御も反撃もできないんじゃ太刀打ちのしようがない。
それにひきかえこっちのライフルは波動シールドで容易に防御できる。攻撃が通用しないのに反撃なんざできる訳が無かった。
最強の矛と盾を備えた眼帯野郎に、仮に最速の脚が復活しても勝機がまるで見えないぞ。
「だぁー!」
ダイは猛ダッシュの最中やけくそ気味にライフルを撃った。勿論正面から撃っても通用しないないから、天井に向けて跳弾撃ちにする。
しかし同じ手はもう通じない。眼帯野郎は上からの跳弾も余裕でガードした。本当に打つ手なしだな……。
『さっさと観念しろぉー!』
また単射を撃ってきた。それも何とか躱せたが、しかし同時に、眼帯野郎は近くにあった機械を波動シールドで叩き、ダイに飛ばしてきた。
眼帯野郎も中々破天荒な事をするじゃねぇーか。
飛ばされた機械は粉々に砕け散ってダイに襲いかかってきた。所謂散弾だな、流石にこれは躱せん。
ダイはシールドでガードしたが結構デカい塊が直撃したせいでバランスを崩してしまう。
それを見逃す眼帯野郎ではなかった。バランスを崩したところを見計らって波動ガトリングガンを連射してくる。
堪らずこれもシールドでガードしつつも、直ぐに立て直して猛ダッシュで駆け抜けた。ギリギリだったぜ、しかもシールドがお釈迦になってしまった。
マズいぞ、左腕に続いてシールドまで無くなった。なけなしの防御手段が無くなった今、眼帯野郎の猛攻を躱し切れなくなったらおしまいだ。
躱し切れない猛攻。なら次は……
(ヤバッ!)
ヤバッ!
連射の一拍に合わせて眼帯野郎はカノン砲を撃ってきた。さっき不意をつかれてシールドを使わざるを得なかったが、今度はシールドが無いから防ぎようがないぞ。
しかし不意をつかれた訳でもない。ダイは死に物狂いで猛ダッシュ、ちと掠ったかギリギリでカノン砲を躱す。
だが今回はそれで終わりではなかった。カノン砲の次は波動ガトリングガンの単射がきた。カノン砲から単射に繋げて発射間隔を無くそうとしている。
これはダッシュでは躱せないと悟ってダイは全力で飛び退いた。床にダイブする勢いで飛び退いたんだ。
そうしないと躱し切れないからな。
波動ガトリングガンの単射はギリギリ躱せたが着弾した衝撃に煽られてダイは吹っ飛ばされる。床にダイブする勢いがそのまま叩きつけられる羽目になって意識が飛びかけた。
ただでさえ空腹の真っ只中でこの衝撃はキツい。意識が朦朧としかけているダイには酷い追い討ちだ。
だが、まだ終わりじゃない。単射の次はまたカノン砲が来る。やはり波動ガトリングガンの単射とカノン砲を相互に撃って連射するつもりだ。
これは俺も躱せないと思ったんだけどな、ダイは床を思いっきり蹴って上に跳んだ。また少し掠ったが、それで何とかキャノン砲を回避できたんだ。
『どこまでも往生際の悪いっ!』
そしてまた波動ガトリングガンの単射が来た。天井に到達したダイは足で天井を蹴って下に回避、だが眼帯野郎もそれを見越していた。
落下地点を見計らってキャノン砲を撃ってきやがったんだ。
「フックランチャー!」
ダイはフックランチャーを撃ちこみ、ワイヤーを引いて落下の軌道を変える。ところが眼帯野郎はそれすらも見越していて、着地地点に波動ガトリングガンの単射を撃とうとしている。
これは……躱せないぞ!?
「ジャマー!」
ダイは決死の覚悟でジャマーをブラスト照射した。機能停止は無理でも照準器を狂わすくらいはできるんじゃないかと考えたからだ。
そして効果はあった。単射はギリギリでダイを避けてくれて当たらずに済んだが、着弾の衝撃に煽られて飛ばされた。
だが、逆にこれが良かった。飛ばされたお陰でスッと立ち上がれてな、再び猛ダッシュをかけられたんだ。
『ちぃっ! ジャマーブラストだと、生意気な!!』
そして眼帯野郎はまたカノン砲を撃ってくる。
照準器がイカれても手動で狙ってきやがったか。しかもピンポイントに直撃コースだし。
だがこれは躱せた。猛ダッシュをかけていれば単純な砲撃くらい躱せない事は無い。眼帯野郎もこれはマズいと察して波動ガトリングガンを連射に切り替えた。
ジャマーはもう当てていないが、体勢を立て直して猛ダッシュをかけたダイなら連射だろうと単射だろうと躱せない事はない。
まぁ相変わらず1分1秒がデッド・オア・アライブだが、もしかしたら勝機も出て来たかもしれない。猛ダッシュしてリズムにも乗り直せたみただしな。
それに波動ガトリングガンと違ってキャノン砲は弾切れがある。スキャニングした限り、残弾はあと1発ずつしかない。
そしてこっちはもう直ぐSWEMブースターが回復する。そうなれば今よりも有利になるのは確かだ。
それに攻略の糸口もある。
あとはタイミングだけだ。それを待てば―――
『クソがぁ!』
―――待たしてくれる訳は、なかったな。眼帯野郎はかなり大きめの機械を波動シールドで叩き飛ばしてきた。やっぱ仕掛けてきたか。
機械は粉々に破壊されて散弾よろしく飛んでくる。シールドが無くなった今、ガードはできない。回避は……無理だろ、散弾だぞ。
「だぁー!」
ならば、とダイはライフルとレーザーCIWSを乱射して破片を除去した。以外にも散らばった破片を的確に当てられて難を逃れる事に成功する。スゲェーな、ダイ。
まぁ全部は勿論無理だったが、直撃しそうなのは一瞬で把握してピンポイントで撃ち落としていったんだ。コイツも地味に成長してるんだな。
しかし眼帯野郎も容赦がない、叩き飛ばした機械越しに波動ガトリングガンの単射を撃ってきた。単射は機械を後ろから押し出すように放たれ、波動弾と破片となった機械の散弾の両方を飛ばしてくる。
これって……ありか?
「まだだぁー!」
しかしダイの危機回避能力も負けてなかった。ダイは波動弾がくる前に身を隠した。
何処にって言うと、エレベーターのシャフトの中さ。
この階層に上がってきたシャフトの中に逃げ込んだのさ。この中なら波動弾も破片の散弾も当たらねぇーからな。
ダイはシャフトの穴に落ち、床に手をかけ壁に脚をかけて出入口の直ぐ下に留まった。それで何とかやり過ごす事ができたんだ。
しかしまだ終わった訳ではない。直ぐに頭を出して眼帯野郎の様子を伺うと、何故か奴はしゃがんでいた。
両脚を曲げたうんこ座り状態だ。何故そんな体勢になっているのか―――スキャニングできて直ぐに分かった。
[ティグロスM116 160mm迫撃砲]
迫撃砲だと!?
眼帯野郎の右膝には迫撃砲が内装されていやがったんだ。どこの全身兵器サイボーグだよ。てか迫撃砲って普通上に向けて撃つもんだろ?
いや、おそらくは上に撃つようにできているんだ。立っていれば膝も立つ、だから射角は直角に寄るんだろうが、しかし今は膝を曲げているから射角も水平に寄る。
そして水平に向けた迫撃砲の狙いは、ダイだ。
爆撃であればシャフト全体に爆風が広がる、今度こそ躱しようが無い。かと言ってシャフトから出れば波動ガトリングガンなりキャノン砲なりでやられる。完全に詰みだな。
まさか爆撃系の迫撃砲まで持っていたとはな……これ以上にないタイミングだぜ。
「ゲッコー!!」
ダイはゲッコーの名前を叫んだ。
その瞬間、爆発が起きた。迫撃砲が放たれる前に、それは爆発したんだ。眼帯野郎の足元でな。
気付いた時にはもう遅い。眼帯野郎はなすすべも無く、その爆発に飲まれていった。
見たか、これが攻略の糸口だ。
因みにガトリングガンは四本脚のものとそう変わらないんだが、イングリッドでガトリングガンを撃ち続けたら肩が外れただろ。眼帯野郎が外れないのは波動ガトリングガンだからじゃなく、眼帯野郎が丈夫な構造になっているからなんだ。つまり歩兵機の性能差が表れてる証拠だな。




