第38話 やって来ましたリターンマッチ……詰みました。またかい!?
システム補助67%
眼帯野郎の猛攻を前にダイは防戦一方、と言うか逃げ回るしか無かった。
あの地雷の付いたハンマーは厄介だ。ギリギリで躱すと爆風をモロに受けるし、大きく避ければ第2打がくる。
避けながらライフルを撃つ事も考えたが、眼帯野郎はハンマーを振るいながらでもシールドでガードするからあんまり効果がない。
跳弾撃ちなら或いは、だが逃げ回る現状ではかなり厳しい。まずは眼帯野郎の猛攻を何とかしないと話にならないんだ。
「……レーザー!」
ダイは振るってきたハンマーにレーザーを当てた。考えてみれば爆発物ならレーザーで迎撃できるんじゃね? って考えたんだが。
「うぎゃあああああ!」
この至近距離で迎撃したら当然爆風にやられるわな。しかも指向性だから爆風はほぼダイに集中するし、完全に裏目に出てしまった。
しかも眼帯野郎、直ぐに地雷を付け直してまた襲ってきたし。ダイは爆風のせいで体勢を崩して、さっきよりも状況が悪化してる。
こんな事そう長くは続かないぞ。腹をすかしたダイの体力は底を着く寸前だ、このままじゃ時期にやられる。
そうでなくとも機体が妙に重く感じられるから動きも鈍るし……
「……ブースト!」
そうだった……このイングリッドにはSWEMブースターを搭載してあるんだった。何故に忘れていた?
ブーストは起動しなければただのお荷物だが、起動さえしたらスピードで押し切れる。
ダイは30%推力を出して飛び退く。すると一気に眼帯野郎から距離を取れた。
『何ぃ!?』
間合いから出られればこっちのもの、ダイはライフルをフルオートで眼帯野郎を撃つ。勿論シールドでガードされたけど、攻守交代はできたかな。
『ちぃ、猪口才なぁ!』
眼帯野郎はシールドでガードしたまま突進してきた。しかしダイも慌てはせず、壁の角を三角状に跳んで素早く眼帯野郎の背後へ回り込む。
背後はガラ空き、しかも地雷ポッドもある。あれを破壊出来ればハンマーも恐くはない。
ダイはライフルを撃って地雷ポッドの破壊を目論むが、眼帯野郎も直ぐに振り返ってシールドでガードした。やっぱシールドは厄介だな。
『SWEMブースターか!? だがイングリッドの出力では長くはもつまい!』
確かに、30%の推力でも使い続ければ20分程度が関の山だ。
長期戦になればこっちが不利になる。その前に何とか勝負を決したい。
ダイは弾切れになったライフルの弾倉を取り替えて再び撃つ。眼帯野郎はシールドでガードしながら突進、それを三角状に壁を跳んで背後を取る。
しかし眼帯野郎はそれを見越してダイを追撃し、跳び上がった。
『同じ手が通じるかぁ!』
だろうな、ダイも予想はしていた。だから前以て真下にフックランチャーを撃っておいたんだ。
ワイヤーを巻き取って真下への自由落下が急に加速してダイは床へ降り、眼帯野郎はダイの上を通り過ぎる。
真下以上にガラ空きな場所はない。ダイは眼帯野郎の真下からライフルを乱射、想像以上に命中したぜ。
『ぐぉあっ!?』
銃撃された眼帯野郎はバランスを崩して床に落ちる。この機を逃す訳にはいかない、ダイは無防備な眼帯野郎に向けて手榴弾を投げた。
豪速球の手榴弾だ、あの体勢ではレーザーで迎撃も出来ない筈。
しかし眼帯野郎も反応が速かった。倒れたままでは振り返れないと判断するや否や、後ろ手にシールドでガードした。
シールドでガード……無理だ。衝撃波はシールドを避けて本体をも襲う、至近距離で爆発すれば防ぎようがない。
手榴弾はシールドに当たり爆発した。至近距離での爆発だ、あれでは助からないだろう。例え助かったとしても致命的な損傷は免れない。
と思ってたんだが、爆風が治ると眼帯野郎は―――無傷だった。
「バカな!?」
バカな!?
悠々と立ち上がる眼帯野郎は所々が黒焦げになっているだけで、損傷らしい傷はライフルによる銃撃以外にはない。シールドも少し凹みが出来ただけでまだ健在のままだった。
『まだ分かってないようだな』
分かってない? どういう事だ?
『実力差だけじゃねぇ、ポテンシャルも違うんだよ! 貴様のイングリッドじゃあな、俺には敵わねぇーって事だぁ!!』
それは……何と無く分かってた。
だって向こうの方が見るからに強そうだし。
しかもシールド、眼帯野郎のシールドはスキャニング出来なかった。つまりイングリッドのデータベースには無い、未知なるシールドと言う訳だ。
ヤベェ、これ勝てる見込みが全然無いぞ。
だがそれは今に始まった事じゃない、今までも勝てそうに無い戦いを強いられてダイは勝ち抜けて来たんだ。
なら今回だって、勝てない道理は無いだろ。
……勝てる道理も無いけどな。
『いい加減観念しろ、俺がその気になれば貴様なんぞ敵では無いんだからな!』
眼帯はまたハンマーを振るって突進してきた。レーザーでハンマーの地雷を迎撃されないよう背中に隠しながら。
だが距離はある。ダイは天井に向けてライフルを撃ち、跳弾させて眼帯野郎を上から銃撃した。
何発かは当たったが直ぐにシールドで防がれる。だったらこっちだ。
跳弾撃ちの狙いを眼帯野郎本体からハンマーに変えた。正確にはハンマーの打撃部分に設置してある地雷に。
正面からでは狙えなかったから、上から狙ってやった。
『なぁ!?』
ハンマーの地雷を迎撃に成功して眼帯野郎は怯み、突進の足を止めた。
今度はダイが突進する番だ。ライフルをフルオートで乱射し、ブースト猛ダッシュで突進する。
眼帯野郎はシールドでガードしたままだが、しかしこの勢いなら或いは……。
ダイはライフルを左手に持ち直し、右手にナイフを抜いた。
ブーストで上乗せした猛ダッシュの刺突だ。いくら強固なシールドと言えど突き刺さるだろう。
だが―――
『バカめが!』
やはりそう甘くはなかった。ナイフがシールドに突き刺さる直前、シールドから凄まじい衝撃波が発せられてダイは耐えられず吹っ飛ばされた。
衝撃波、あれでさっき手榴弾の爆撃も吹っ飛ばしたのか。ただのシールドじゃないとは思ってたけど、まさかこんな仕掛けが隠してあったとは。
しかもこの衝撃波、ダイの勘が警報をならしている。間違いない、あれは―――
「は……波動砲?」
おそらくSWEMブースターと同じで波動砲の原理を防御に転用したんだろう。波動の障壁か何かを形成しているんだな。
形はどうあれ、まさか眼帯野郎までもが波動砲を使うとは……そう言えば以前、波動砲を霧散する武器も持っていたな。
対波動兵器があるなら波動兵器そのものも持っていて不思議じゃねぇーのか。
『何を驚く? 波動兵器は本来、俺達が生み出したものだぞ』
「な、なんだって!?」
コイツらが開発したもの、だと? どういう事だ? ……いやいやいや、そもそもお前らは何者なんだよ!? まずはそれから教えろよ!
(まさかマックスが言っていた“敵”って、コイツらの事なんじゃ……)
『今度こそ分かったか!? 貴様は俺には、絶対に敵わねぇーんだよ!』
眼帯野郎はまた接近してきた。振りかぶったハンマーには当然地雷が設置されてある。
「くっ」
ダイも直ぐに立ち上がってハンマーを躱す。かなりギリギリだが、ブーストをかけて回避すればなんとか爆撃の有効範囲外に出られる。
だが躱した瞬間、眼帯野郎のシールドがぶつけられた。波動の衝撃を伴うシールドの打撃、かなりきく。
「グハァ!」
打撃を受けたダイは壁に叩きつけられた。しかも間の悪い事に、叩きつけられたのは角の隅っこだ。
眼帯野郎は更にハンマーを振るってきた。距離は―――かなり近い。
壁の隅に追い込まれたこの状態、しかも叩きつけられて体勢を崩したダイに回避は間に合いそうにない。こんな状態でほぼ至近距離からハンマーが来る。
ダメだこれ、やられるか!?
「いや、まだだ……!」
ダイは手榴弾を左手に取った。そしてブーストを100%に引き上げてこっちも突進した。
最高速ダッシュだ。
ダイは最高速で突進し、振り下ろされたハンマーに手榴弾を直接叩きつけた―――って何やってんだ、コイツ!?
『なぁっ!?』
―――ズドォーン!
凄まじい爆発の衝撃に2機の歩兵機は吹っ飛ばされた。
ダイのイングリッドはまた壁の隅に叩きつけられて止まったが、お陰でそれほど飛ばされずに済んだ。
だが手榴弾を叩きつけた左腕は肘から先が無くなっていた。当然だな、寧ろ肘から先だけで済んで良かったくらいだ。
それとブースターがオーバーヒートしたけど、これは少し待てば回復する。それまで使えないのはちょっと痛いけどな。
一方で眼帯野郎はかなり遠くまで飛ばされたが、五体満足で無事だった。ただ、主力武器だったハンマーは砕け散ったがな。
いくら指向性の地雷と言っても直接爆弾を叩き込まれたら衝撃は全体に広がる。ハンマーもタダでは済まなかったんだろう、それも最高速の勢いを乗せられたら尚更だ。
何と無く予想はできたけど、まさかこの土壇場でこんな荒技に出るとは思わなかった。まぁダイが追い詰められたら想像もつかない事をしでかすのはいつもの事だけどな。
左腕一本でハンマー1つか、決して安い買い物じゃねぇーが眼帯野郎の攻撃手段を損失させたのは大きいかもしれない。
こっちはまだ利き腕が残っている。ライフルだってあるが、しかし弾はもうない。弾倉は片手じゃ取り替えられないんじゃ……あ、腰に懸架すりゃ取り替えられたわ。
対する眼帯野郎は、シールドはまだ健在だがそれくらいだろう。他に武器があったとしてもハンマー程の物は無い筈だ。
あったら最初から使ってる筈だし、多分眼帯野郎の攻撃武器はあれだけ。ダイの決死の反撃が功を奏したって事か。
だとしたら、これで奴は攻撃手段を失った訳だが……でも多分そう甘くはないだろうな。こういう場合必ず次に何かヤバいのがくるパターンだし。
『……どうやらそれなりに実力は身に付けたらしいな。だが調子に乗るんじゃねぇぞ、所詮貴様は……』
眼帯野郎は後ろに手を回した。何か取り出すつもりか? その前にライフルで―――
『サーパストじゃねぇんだからなぁ!!』
だが、眼帯野郎の方が先に撃ってきた。
撃ってきた。おわかりいただけただろうか、眼帯野郎は飛び道具を使って来やがったのだ。
ハンマーばかりだったからてっきり飛び道具は無いものだと思っていたが、まさか持っていたのかよ。何故に今まで使わなかった?
しかもそれは凄まじい連射力を誇る銃撃だった。
「うぎゃあああああ!?」
ダイはシールドを右手に取ってガード、そして直ぐに物陰へ身を隠す。
だが、この凄まじい連射は1発1発の威力も大きい。ちょっとガードしただけのシールドがかなりひしゃげているし、身を隠した機器もあっという間に破壊されていく。
ふと銃撃が止んだ。かと思ったらダイの勘が警報を鳴らす。まさかこれは―――
「だぁぁぁぁぁぁ!?」
ダイは直前で飛び退いた。その瞬間隠れていた機器が呆気なく吹っ飛ばされる。
見事に木っ端微塵だ、あのままあそこにいたらダイも木っ端微塵になっていただろうな。だってあれ―――
「は、波動砲……」
―――だよな。しかもさっきの高速連射もおそらくは波動砲だ。
波動兵器を生み出した奴らだ。波動砲を高速連射させたり、高威力の単発発射させたり、或いはそれらを切り替えたりもする武器を用意していても不思議では無いだろう。
見るとそれは五銃身のガトリングガンだった。四本脚の持っているものとほぼ同じ大きさだが弾帯が繋がっていない所を見ると、やはり波動兵器っぽい。
しかも四本脚のガトリングガンよりも威力が桁違いだ。アサルトライフルの威力を上回るのに、それを高速連射で撃ちまくるとか。しかも弾はほぼ無尽蔵。
チート過ぎるにしても限度があるだろ。
『言った筈だ、俺は雪辱を忘れたりはしないとな。リベンジを果たすためなら貴様の確保など知った事か! 今ここでなぶり殺しにしてくれるわぁ!!』
ああ……確保が目的だったのね。……だから飛び道具を使わなかったのね。
ヤバいヤバいヤバい!! あんな波動ガトリングガンを相手に、勝てる訳ねぇーだろ!
てかこれ、また詰んだぁー!?
そもそもシールドも波動兵器なんだよな? 弾は要らないにしてもエネルギー消費が馬鹿にならない筈なんだけどな。ダイのイングリッドだって波動砲3発で打ち切りになったんだぞ。一体眼帯野郎のジェネレーターはどうなっているんだよ?




