第35話 実は主人公は死んでいた件について……どう言う事!?
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突然レーダーに反応が出たんで、ダイは直ぐにイングリッドの操縦桿を握った。
ジャマーをスポット照射して、物陰に身を隠す。そして小型カメラロボットのゲッコーを出して物陰からこっそりと覗き見た。
現れたのはなんと頭無しだった。数は3機で手の形が少し違う、作業用っぽい感じの奴らだった。
そんな3機の頭無しが奥の大きな扉から現れると、中に入って来て何やら精密そうな機械をそれぞれに操作していた。
この様子を見る限りやはり無人機の製造は無人機の手で行われているようだな。だが、何故未完成のままなのだろうか? ひょっとして今から完成させるのか?
暫くすると四本脚を約30機程が運搬台車に載せられて、3機の頭無しと一緒に大きな扉へ入って言った。
扉が閉じると直ぐにレーダーからも反応が消える。不審に思ったダイはゲッコーを戻して、その扉の前まで行くと―――
「ああ、これエレベーターだ」
どうやらこのエレベーターは未完成の四本脚を30機程まとめて上の階に送る為の運搬用エレベーターらしい。これを使えば上の階層に行けるかもしれないな。
しかし未完成の四本脚を運搬した理由は……ひょっとして完成させる為?
四本脚のメインコンピューターは、ここじゃなく上の階で作られている? なるほど、製造工程を上の階と下の階に分けて作っていたと言う事か。
だとしても解せんな。上と下で分けて製造するにしてもメインコンピューターだけってのは変だ。
まるで、ここでメインコンピューター以外を完成させて敢えて搭載しなかった。そこにある別の意図が、どうにも見え隠れしてならないしな。
「……マシナロイド計画。これはその為の工程」
またその計画か。
そのマシナロイド計画はおよそ2年前、このプラント内で行なわれていたとある計画だ。
ただ問題は、その計画の内容がどういったものかと言う事よりもまず、何故ダイがその計画の事を知っているのかと言う事だ。
「あれ、でもこれはもっと別の……え、いや違う……そうじゃなくて」
ところがダイは突然何かを呟き出した。これは混乱している? 知ってる筈のない事を知っている自分に混乱しているようだ。
そりゃそうだ、ダイがここに来たのはほんの1週間前で計画の事はおろか、このプラントの実態すら何も知らない。完全な部外者なんだからな。
じゃあどうしてダイは知っているか。いや、知っているようで知らない、知らないようで知っている。そんなあやふやで朦朧とした状態だった。
これは良くない。これではダイのメンタル的にも、俺の都合的にも良くない事になる。
「いや、でも……そうだ、資料!」
ダイはリクライニングモードを起動して資料を手に取った。[Project MACHINEROID]と書かれた、知ってるのか知らないのか分からない資料を。
ヤバいぞ。今のダイにこの資料を見られるのは、色々と良くない気がする。
「マシナロイド計画、ここに何かヒントが……ダメだ。やっぱり読めない」
まぁ全部英語だからな。読めなくて当然だ、ダイの英語力はほぼゼロだし。
「くそぉ〜何か無いのか? 何か……え? これって」
10ページくらいめくったところで、とんでもないものを目にした。
結局文章は全部英語で読めなかったんだが、しがし図面は文字とは関係なく見れる。そのページに載っていた図面はな。
「あ、頭無し!?」
その図面は、どう見ても頭無しだった。
設計図だろうか、分解したから分かる頭無しの特徴が事細かに記されていた。
その図面の幾つかの文字はダイにも読めた。メンテナンスドックで使い方を学んで覚えたものもあったからだ。
更にダイは次々にページをめくっていくと四本脚や煙突人間、出っ腹の図面も載っていた。他にもまだ、ダイが見た事の無いやつの図面もあった。
これがどういう事か分かるか? マシナロイド計画云々以前にこの資料の計画書は人の手によって作成されたものだ。無人機が記されたこの資料は。
つまりここにいる無人機はここにいた人の手によって作られた歩兵機と言う事になる。
無人機が人の手によって作られたとして、ならば何故人は姿を消した? そして何故無人機は自らを大量生産してプラント内を徘徊している?
結局は2年前、ここで何があったかが分からないと意味がないと言う事だ。
「でも無人機は人の手によって作られた。マシナロイド……そうだマシナロイドって言うのはこの無人機の……いや、そうじゃない」
ダイは何かを思い出しかけている。あまりにも混乱しながら記憶の片隅から何かを紡ぎ出そうとしていた。
マズいなぁ、これはマズいぞ。
特にこの資料、これは無人機の事を綴っているだけでなくマシナロイドの事にも追求している。表紙に書いてあるんだからまず間違いない。
「マシナロイドは……異形の歩兵機。人型を超えた新しいタイプの歩兵機なんだ。でもそれは……」
ダメだ、ダイ。それ以上はダメだ。
それ以上は知ってはならない。
「そうだ……俺はそれを知ってる。異形の歩兵機は従来の人型歩兵機にはない可能性が秘められていて、このプラントはそれを試験的に実用化する為に建てられた。だから俺は……ここに?」
止めろ。もう止めるだ、ダイ。
それ以上はダメだ、戻れなくなるぞ。
「俺は……ここに来た事が、ある? ……そうだ、俺はここで―――」
『よすんだ、ダイ!』
通信が繋がった、奇跡的にだが。
「マ、マックス?」
『ダイ、今直ぐ歩兵機から降りろ。そしてその資料を捨てるんだ、それが今回のアドバイスだ』
そうしないと大変な事になる。冗談じゃ無くてな。
「……俺は歩兵機を棄てられないんじゃ無かったのか?」
『そう言う事を言ってるんじゃ無い。お前は歩兵機に乗り過ぎた、だから今は一旦降りろと言ってるんだ。そしてその資料を棄てろ、それは余計なものだ』
「嫌だって言ったら?」
『ダイっ! こんな時に変な意地を張るんじゃねぇー! お前の為に言ってるんだぞ』
「俺の為か? 本当は自分の為じゃないのか、マックス!?」
……コイツ。
「親切を仇で返されたとか言うなよ、こっちはお前のせいで散々だったんだ。意味深な事ばかり言って肝心な事は何も話さない。大頭無しの妨害電波も半分は嘘だったじゃないか、あれから通信は全然繋がらなかったぞ」
『それは悪かったよ。だが嘘じゃない、誤算だったんだ。俺だってこうなるとは思ってなかった』
「だとしてもだ、俺にはもうお前を信用する事ができない。それに俺にはこの資料に目を通す権利がある。違うか?」
マジで言うようになりやがったぜ。こんな自信満々に言うとはな、最初の頃は想像も出来なかったぞ。
「俺はこの資料の内容を知っている、マシナロイド計画の事を何故だが知っているんだ、知らない筈の事なのに。何故知ってるのか、知ってる事は何なのか、それを明確にする為にも俺はこの資料を読む。それをお前が止める理由は何だ、マックス?」
『それが教えられるなら止めたりしねぇーよ。教える訳にはいかないから止めているんだ』
「答えになってない」
『ああ、分かってる。だが頼む、今は俺を信じてくれ。分かって無いようだが今のお前はマジでヤバい事になっているんだよ』
「さっきも言ったよな、俺はもうお前を信用する事ができないって。無条件でそんな事は聞き入れられない」
『ダイ、分かっているとは思うが、そりゃあ脅しだぜ』
「悪いか?」
悪い、とは言えねぇーな。俺だってそうするし。
『……どうすれば思い留まってくれる?』
「理由を話せ」
『だから言えねぇーんだって』
「……分かった。じゃあ質問を変える。マックス、お前は何者だ。どうして俺の思考まで分かる?」
ああ、分かってるよ。俺が煙突人間や怪獣、眼帯野郎の事まで口走って疑問に思っていた事も、俺は知っているよ。
ダイは俺が、ダイ自身の頭の中にでもいるんじゃ無いかと疑っていた事もな。
「それとも、このプラントの事を教えてくれるか? ここで一体何があったのか、マックスは知っているんじゃないのか?」
本音を言うと知っている、全部じゃないがな。
だが、それでも言えない事情はあるんだよ。そうでなかったらもっと早くに話していたさ。
「それも話せないと言うのなら、これだけは答えろ」
これだけ、それが何を指すのかは知っていた。それはダイ自身の事だ。
「俺は、一体誰なんだ?」
『……お前は最上ダイだ。身の丈に合わない高校に通う男子高生で、偶然にも歩兵機を見つけて興味本位で乗ってしまい、そして今はこのプラントで必死に生きている一端の兵士』
「それで?」
『……歩兵機の戦術は不意打ちや陽動を絡めた奇襲が主体。まともにやり合う場合は脚力頼りの機動戦で、主に手榴弾を得意武器としている』
「それで?」
『……家族構成は母親1人と姉1人、大のコミュ障で人との関わり合いを苦手として……なぁダイ、お前の聞きたい事は分かる。けどそれは勘違いだ、お前は誤解してるんだよ!』
「質問に答えてくれ、マックス。俺は、一体誰なんだ?」
『だからそれは―――』
「俺は、最上ダイだと思い込んでいる別人なのか? それとも、死んだ筈の最上ダイ本人なのか? どっちなんだ!?」
……やはりそうだ。ダイは、死んだ事に気付いている。だがそれは―――
「このプラントへ来た時、最初に遭遇したのは怪獣だ。俺は怪獣相手に戦う姿勢も見せずに逃げ出した。敵に背を向けてな」
『それでトンネルを通って地下4階に来た。逃げる途中で怪獣に襲われはしたが、命かながら逃げ切っただろ』
「ああ、そんな風に思ってた。でも今は違う、あの時俺は後ろから撃たれて死んだんだ」
『ダイ……それは違う』
「あの時、本当は逃げ切れていなかった。逃げ切れずに後ろから波動砲を受けて死んだ。俺は……いや最上ダイは、その時死んだ筈なんだ」
『違うんだ! ダイ、お前は―――』
「なのに逃げ切れて命拾いした事になっている。そればかりか拠点で200機もの無人機を相手にしたり、大頭無しと苦戦を強いられながらも勝利したり、俺が最上ダイならそんな事できる訳が無いんだ」
『いやそれは……一理あるけど』
「本当の最上ダイは頭も悪い運動も出来ない、何をやってもダメな奴だ。そんな奴にこんなヒーローみたいな活躍が出来る訳が無い」
『聞け、ダイ。本当のお前は―――』
「じゃあ俺は誰だ、最上ダイじゃない誰かか? それとも死んだ最上ダイが夢を見てるだけなのか?」
『聞け、ダイ―――』
「もし夢を見てるだけなのだとしたら、今こうして話をしているマックスの声はただの幻聴だ。だから何も答えないし、俺も答える義務は無い筈―――」
『聞けぇ!!』
思わず声をあげちまったが、お陰でダイも俺も頭が冷えたかな。
だが、もう隠せない……ダイは踏み込み過ぎてしまった。もう隠す訳にはいかない。
俺自身の為にも、な。
『……聞いてくれ、ダイ。お前は死んでなんかいない、お前は正真正銘の最上ダイだ』
「根拠は?」
『お前は、あの時怪獣の波動砲を逃げ切って命拾いをしたと思い込んでいて、本当は逃げ切れずに背中を撃たれて死んだと、そう言ったな』
「ああ、今はその撃たれた記憶が鮮明にある。今まで忘れていたのが不思議なくらいで―――」
『そうじゃない、逆だ! 逃げ切って命拾いしたのが本当で、背中を撃たれたのが思い込みだ。お前は死んでなんかいないんだよ』
「じゃあ俺が撃たれた記憶は何なんだ? 逃げ切った記憶の方はもう霞んでいるのに、撃たれた記憶の方は鮮明に出てくる。それはどう説明するんだ?」
『それは……俺の記憶だ』
「……え?」
驚くのも無理は無いだろう。何故なら、必死の逃走も虚しく、背中から撃たれたのは―――俺なんだからな。
『ダイ。……死んだのは俺の方だ』
う~ら~め~し~や~……。




