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第31話 主人公は死なない裏事情があるんだよ……そうとも限らないと思う

 システム補助、エラー中。


 大頭無しの波動砲が床を抉り、ダイのイングリッドを吹き飛ばした後には何も残らなかった。


 そう、何も残っていない。


 それこそ不自然なくらいに残っていなかった。


 確かに波動砲は強大な威力だ、この抉れた床を見ればその凄まじさを嫌でも痛感する。半壊したイングリッドがまともに受けたとしたら、まず大破に違いない。


 だとしても、何も残らない事は無い。


 大破したのなら何かしらの残骸が残る筈なのに、そこには何も無かった。残骸も、破片すらも。


 大破して粉々に砕け散った―――と言うよりは忽然と姿を消したような感じだった。


 それこそ、ここにいた筈の従業員みたいにあまりにも忽然と姿を消していた。


 大頭無しもそれを不審に思ったのか、ダイの隠れていた柱の方へ歩み寄る。


 柱は粉々に破壊されているからもう身を隠す場所は無い、これではイングリッドも隠れようが無いだろう。


 なら、まさか上の足場に上ったのか? 波動砲の衝撃を利用して飛んだか? シールドも右腕も無くなっているのだから、そんな事できる筈は無いのだが。


 しかし隠れられそうな場所は他に無い。大頭無しはイングリッドが上がったと思われる足場を見上げた。その時だった。


「隙有りだぁー!」


 突然現れたダイのイングリッドにライフルを乱射された。それも真正面から胴体目掛けて。


 思わぬ不意打ちの銃撃をまともに受けてしまった大頭無し。ライフルの弾は跳ね返る事は無く、容易に大頭無しの外装を貫通して内部まで破壊する。


「思った通りだ! やっぱり目玉(レンズ)の周りは外装が弱い!」


 最初から不思議ではあったんだ。ライフルの弾を跳ね返す程の強度を持つ外装があるのに、大頭無しはシールドを使って小まめにガードをしていた。


 それにガード出来ているのは胴体周りだけだ、あの巨体では腰から下はガードし切れていないし当たってもあの外装なら元々問題にならない筈。


 なら何故ガードする必要があるのか。


 答えは簡単、守らないといけない外装の弱い所があったからだ。


 それが胴体の目玉(レンズ)周り、特殊な妨害電波を発信し続けている都合上、どうしてもその周囲は外装を薄くせざるを得なかったんだろう。


 だから身を隠してその一番弱いところを不意打ちさせてもらった。忘れたか、ダイの得意技は不意打ちなんだぜ。……威張って言う事じゃねぇーけど。


 さて、じゃあ何処に身を隠してたかって言うとだな、柱が立っていた床の下さ。


 実はこの柱、中が空洞になっていて床の下まで穴が空いていたんだ。それに土壇場で気付いたダイは、これ幸いと言う事で直ぐに身を隠すのに使わせてもらった。


 そして今、ダイはその穴から飛び出して近距離からライフルを乱射しまくった。銃撃は大頭無しの外装を貫通していってる。ダメージは絶大な筈だ。


 だが、まだ動ける。それどころかシールドでガードしようとしてるし。


 そうはいくか。


 ダイはライフルを腰にマウントして突進、脚からナイフを抜いて構えた。


 それに対して大頭無しが爪を振るう。巨体故に長い腕がそのリーチを活かして振るって来やがった。しかしダイはそれをスライディングで躱し身体のバネを使って起き上がり様に刺突。


「でりゃぁー!」


 システム補助が働いていないにも関わらずダイの刺突は大頭無しの右膝を突き刺し、素早く逆手に持ち替えて切り裂いた。


 その瞬間大頭無しは膝を崩して床にしゃがみ込んでしまう。あの巨体だ、もう立ち上がれまい。


 それに波動砲も、片膝がやられてしまえば反動の大きい火器は使えない筈だ。


「まだだ!」


 それでもダイはまだ止まらない。全力フルマラソンの末にスタミナはもう底を着いてる、今は気力だけで走り抜けている状態なんだ。


 そんな状態だが、ダイは大頭無しの背後に回るとジャンプして大頭無しの背中を蹴って更にジャンプ、大頭無しの頭上を捉えた。


「ナイフトゥミートゥー!」


 出っ腹を一撃必殺した頭上からの機重乗せナイフ突き刺し、ナイフトゥミートゥー(命名になった……)。しかしダイはこれで大頭無しの首元ではなく左肩関節を狙った。


 ザクっと鋭く突き刺さったナイフに危機感を覚えた大頭無しも暴れ出して左手の爪でダイを引き剥がそうするが、ダイも負けじとフックランチャーを左肩に打ち込み、振り払われないようにしながら爪を躱す。


「レーザー!」


 この体勢でライフルは撃てない。ダイは大頭無しの肩関節目掛けてレーザーを連射し執拗に狙い撃った。


 そして最後にもう一度ナイフを突き刺す。その瞬間、大頭無しの左腕はだらんと垂れ下がり、腕の重さを支えられなくなって下に落ちた。


 やった、と喜ぶ間も無く今度は右手の爪がやって来る。これは躱そうとせず大頭無しから飛び降りて回避した。


 なんせ目的は達成したからな。


「……やっぱりあったか」


 大頭無しの落ちた左腕、これには肩のところにシールドが付いてある。


 そしてシールドの裏側には、手榴弾もあった。


 四本脚と同じものなら裏側に手榴弾もあるんじゃないかと思って正解だ。ならばこれを利用しない手はないだろ。


「ジャマー!」


 イングリッドのジャマーをブラスト照射する。電子戦特化の大頭無しにジャマーの効果は無いが


 [システム補助70%]


 システム補助を回復させることはできる。左手ってのはちょっと不安だがやるしかねぇ。


 大頭無しがこっちに振り向く直前、その瞬間に外れた肩関節から斜めへ打ち込むように胴体の目玉(レンズ)を狙う。


 見せてやれ、ダイ。絶体絶命の攻防戦で獲得した豪速球手榴弾を!


「でりゃあー!」


 システム補助のお陰で難なく出せた豪速球手榴弾、ほぼ真横からの投球にレーザーCIWSも間に合わない。


 手榴弾は半壊した胴体に当たり、その瞬間爆発した。大頭無しのゼロ距離で。


 ―――ズドォーン!


 シールドで執拗に守っていた胴体だ。ライフルの弾も効いたし、手榴弾なら確実にやれる。


 だが爆風が治ると、そこにはまだ片膝をついてしゃがみながらも立っている大頭無しの姿があった。


「バカな!?」


 まだ動けるのか、と思ったらよく見ると大頭無しは動いていない。


 しゃがんだままの体勢で機能停止していたんだ。


 勝ったんだ。今回もかなり危なっかしい勝利だったけど、ちゃんと勝てたな。


「か、勝ったぁ〜……」


 しかしダイははしゃぐ事も無く、脱力して床に倒れた。


 まぁそりゃそうだよな。スタミナはとっくに切れて気合いだけで戦っていたんだ。ぶっちゃけ暫くは動けないだろうし、仕方がない。


 これで大頭無しが復活とか、或いは新手がやって来るとかになったら終わりだけど、まぁ仕方ない。


 てか、これも毎度の事だけどな。


 ただ、腑に落ち無い事もある。


 大頭無しを倒してシステム補助は復活したけど、ネットや通信回線は回復していなかった。


 つまり、俺とダイの通信は未だ繋がらないままって事だ。


「……マックス? 聴こえてる、マックス? マックスゥ〜……やっぱ騙されたか」


 いやいやいや、騙してないからな。


 俺だって予想外なんだって。こんな事になるとは思わなかったんだって。


 これでやっと心置き無く話せると思ってたら何故か繋がらないままで本当ビックリしているんだって。


「まぁ何と無く予想はしてたけどな。あの性悪が具体的なアドバイスを出してきた時点で何かあるなとは思ってたけどな。案の定これだよ」


 コイツ俺が盗み聞きしてるのをいい事に言いたい放題言いやがって……聴こえてないだろうがそれでも言わせてもらうぞ、俺はそこまで性悪じゃねぇー!


「でも成果はあったな。レーダーとかセンサーは復活したみたいだし」


 ダイの言う通り、イングリッドのレーダーやらセンサーやらが遂に機能し出した。探知機能が使えるようになったのは非常に有り難い事だ。


 今まで無人機に遭遇するのは出たとこ勝負だったから前以て分かるようになったのはマジで嬉しいぜ。


 実際今もレーダーの探知で大頭無しが引っかかっていない事から、奴が完全に機能停止していると分かるし。こりゃあ大変便利なものをいただけたもんだ。


 ……いや、返してもらったと言うべきかな。元々備わっていた機能だし。


 あと、このフロアの外にも無人機がいないと分かって安心できる。どうやら暫く新手が来る事は無さそうだな。


 さて、問題はこの半壊したイングリッドだ。


 お色直しするには地下8階の拠点まで戻らないといけない。しかし今この状態で無事に戻れるだろうか?


 右腕は無くなって右半身にも損壊が多く、全体的に外装も剥げつつある。あと少しでもダメージを受けたら終わりと考えていい。


 武器もそうだ。ライフルの弾もあと10発足らず、手榴弾は持って行けるだけなら5個はあるし、ナイフもあるけど。


 しかしメインのライフルが使えないのは痛い。予備弾倉もシールドごとお釈迦になったし、大頭無しのシールドに予備弾倉は無かったしな。


 そして帰り道、ここを出た先のフロアは通路を塞いでしまったし、もう一方の通路から帰り道までのルートは分からない。


 出っ腹も現れるだろうし、下へ行くにはかなり難航しそうだ。


 まぁ、抜け道が無い訳ではない。てか直ぐ隣にあるんだけどな。


 大頭無しの最後の波動砲から身を隠すのに使った穴だ。柱が壊されて初めて分かった空洞の穴。


 身を隠していた時に分かったんだが、どうもこの穴は地下8階に続いているんじゃないかと思う。それくらいの深さがあった。


「……ゲッコー」


 ダイはゲッコーを出して穴の中に行かせた。大頭無しが機能停止して妨害電波も止まった今、小型カメラロボットのゲッコーも無線操作が可能となっている。


 本当は自分で調べた方が早いんだけど、まだ疲れて動けないんだよ。


 それでゲッコーに下まで行かせた。真っ暗だが暗視モードのお陰でよく見えるし、センサーのお陰で移動距離も正確に把握できた。センサーって素晴らしい。


 程なくすると壁側に光が差し込んでいるところへ来た。縦の直線状に差し込んでいる光は長さ10m前後、光の差す壁をよく見るとそれは両開き扉だ。光は扉の隙間から差し込んでいたんだな。


 下はまだあるが移動距離を考えるとこの両開き扉の先が地下8階で間違いなさそうだ。


 ゲッコーではこの扉をこじ開けるのは無理だし、下まで調べて見たが底まで行っても特に何もなかった。ここでゲッコーを引き返さそう。


 さて、まだ身体は動かせそうにないし他を調べてみるか。


 穴は床だけで無く天井にも空いているけど、これはイングリッドでも行けそうに無いから調べ無くてもいいだろう。


 なら他に気になるところと言えば……


「やっぱあそこだな」


 あそことは、20m上にある足場、そこの横壁にあるガラス張りの向こうだ。


 人がいればそこからここの様子を観察するように見えるであろうあの場所は、歩兵機だと入れそうには無いけど気になると言えば気になる所ではある。


 手榴弾を1個使って壊してみるか? いや、お色直しをするまで余計な事はしない方がいい。


 それよりかはあっち、大頭無しの波動砲が1発明後日の方向に撃たれて空けた大穴。あそこも足場の横壁だ。


 ガラス張りでは無かったけどあそこに行けばガラス張りの向こうの部屋に通じているかもしれない。


 てな訳で行けぇーゲッコー。


 どうでもいいけど、コイツ一歩一歩が遅ぇーな。まぁゆっくり休めるから構わないけど。


 それから暫くして漸くゲッコーは大穴まで来た。レーダーを見る限り無人機がいる様子も無いけど、一応中を確認してから入ろう。


 大穴の先は何処かのフロア……いや、これは


「歩兵機……ここは歩兵機の格納庫だ!」


 そう、そこは歩兵機の格納庫だった。


 お馴染みのコックピットが無いイングリッドが何機か佇んでいるし、整備する機材も予備パーツも幾つかある。


 まさかここに来てこんなボーナスステージに来られるとは思わなかった。お色直ししても胴体のフレームとかは交換出来ないから1度メンテナンスしておきたいところだったからな。


 よし、そろそろ動けるようになったし、せっかくだから下は止めて上の格納庫に行くか。


「……ん? あれは?」


 しかしいざ行こうとしたとこでゲッコーが映す光景にダイの目は止まった。


 映し出しているのはその格納庫の一番奥の場所、メンテナンスドックのようで1機の歩兵機が直立させられていた。


 整備し易いように直立させられているんだろうが、脚に負荷がかからないように全身の幾つかの箇所で機体を支えている。


 ただ、そこに立たされていたのはイングリッドのようでイングリッドでは無い、初めて見る機種だった。


 無人機では無く有人機専用の、初めて見る歩兵機だ。

本音を言うと、ダイが無事だったことに凄くホッとしてる自分がいる。

よかっっっっったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

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