第30話 全力疾走フルマラソン上等! かかって来いやぁ!!
システム補助、エラー中。
現在大頭無しと絶賛戦闘中にも関わらず、ダイは呑気に食事を取っていた。
本日の献立もカロリーメイト1ブロック、ダイは特に味わう事も無くぽりぽり食べながら、たまに飛んでくる波動砲を避けていた。
たまに飛んでくる波動砲は大頭無しがダイのいる20m高の足場を破壊し尽くす為に撃って来ているものだ。
このままいけばダイは引きずり下ろされるのは確実……と言うか足場の半分くらいがもう破壊されてしまっとるんだが、それでもダイに焦りは無かった。
理由は単純、このまま引きずり下ろされるなら当初の目的通り銃撃を躱しまくって大頭無しを打ち止めにしてやる策に出てやろうとしていたからだ。
しかもシステム補助は無し。システム補助を回復させるにはジャマーをブラスト照射し続ける必要があるが、この策でそれは無理な相談だからな。
かなりスタミナ的に厳しい策だが、追い詰められたダイはもう腹をくくっている。猛ダッシュの全力フルマラソン、上等だと。
故に今はスタミナを回復する為に休んでいた。食事も取ってエネルギーも確保、あとはどれだけやれるかだ。
「……そろそろか」
ダイは動き出した。最悪また休憩を挟む事になるかもしれないから、足場はなるべく残しておきたい。
次の波動砲は、足場に当てないようにしないと。ダイは五感を研ぎ澄ませて波動砲が来るタイミングを見計らう。
そして波動砲が来ると察した瞬間、勢いよく足場から飛び出した。
しかし突然の事にも大頭無しは動じず、直ぐに狙いを足場から飛び出したダイに向ける。空中で身動きできないダイを的確に狙って撃ちやがった。
流石無人機と言ったところか。しかしダイも負けてはいないぞ。
前以て足場にフックを撃ち込んでおいた。よってダイはワイヤーに引っ張られて空中で止まり、反対側へ引き寄せられるように落ちていく。
勿論ダイの軌道を見誤った大頭無しの波動砲は明後日の方向に当たって終わり。
さて、これでまたフルマラソンが出来る様になった。まずは挑発を兼ねて少しライフルを撃つ。
外装の硬い大頭無しでは大したダメージにはならなかったが、敵意と見なして大頭無しもガトリングガンで反撃して来た。
さぁここからショータイムの始まりだ。
ダイが一方的に逃げるだけのショーだけど。
しかしその逃げるだけの事がとんでも無くハードなんよ。ガトリングガンの連射力は分かってたつもりだけど、それがマジパネェんだわ。
考えてみたら今までガトリングガンを防ぐ事はあったけど躱すのは大頭無しが始めてかもしれない。
凄まじい連射、ただ猛ダッシュするだけでは躱せない。ダッシュの動きにアレンジを加えたり姿勢をワザと崩したりして照準を狂わせる事で、ギリギリだが何とか回避できるんだ。
これって言う程簡単じゃねぇーんだぞ。常にガトリングガンの銃口に気を配って撃ってる場所を逆算して、そこから回避できる手段を1秒毎に調整しているんだからな。
例えて言うならサウナの中で秒読みからの囲碁を打っているようなものだ。
それをダイは一切悪手を指さず好手だけを指し続けている。プロ棋士もビックリだぜ。
ガトリングガンをくらい続けて慣れたせいか、或いはダイが飛躍的な成長を遂げたのかは定かではないけれど、しかしこれはいつまで続くだろうか。
スタミナが切れたら、流石にダイも回避し続けられなくなるだろう。その前に弾が切れるか、無理ならまた一休みするかだ。
それに撃ってくるのはガトリングガンだけじゃない、ロケランだって撃ってくるし。
「レーザー!」
撃ってきたロケット弾をレーザーで迎撃、爆発の煙が立ち込めて視界が悪くなる中でまたガトリングガンが襲って来る。
これも必死で回避し、躱し切れない銃撃はシールドでガードする。それでも何発か掠ってしまったが、これは無視できる程度。
そしてまた回避、また回避、回避回避の連続からまた回避。
ガトリングガンが執拗にダイを狙い、ダイはそれを的確に回避し続けながら猛ダッシュ。
お互い一歩も譲らない攻防戦だ。それはあの夥しい数の四本脚を相手にしているとのそう変わらない。スタミナの消費が激しいか緩いかの違いだけで。
実際もうダイの息も上がり始めている。足場から飛び出してからあまり時間は経過していないが、やはり常に全力疾走を強いられると息が上がるのも早くなる。
大頭無しはどうか? あれだけ高速連射しているにも関わらず弾切れの兆候は見受けられない。
あのドラム型弾倉は四本脚の物と変わらないように見える。もし同じならそろそろ弾切れになる頃だと思うのだが。
しかし大頭無しはまだまだ撃ってくる。そればかりかロケランまで撃って来たし。
「レーザー!」
これもレーザーで迎撃したが爆発の煙で視界が悪くなる。ここからまたガトリングガンが乱射されて―――じゃない!?
「っ!?」
飛んで来たのは2発のミサイルだった。煙のせいで至近距離に来るまで全く気付けなかった。
ジャマーもレーザーも間に合わない。ダイは飛来してくるミサイルをギリギリのところで回避した。
本当にギリギリだった。当たっても不思議じゃなかったんだが、ダイは見事に回避してみせて……ミサイルは背後の柱に当たって爆発した。
「うぎゃあああああ!」
ダイはミサイルの爆風をシールドで防いだものの、至近距離からの爆風に激しく煽られて吹き飛ばされてしまった。
まさか柱に追い込んだ所でロケランとミサイルのコンボを仕掛けてくるとは、流石に今のはヤバかったぞ。
吹き飛ばされて床に叩きつけられたダイはかなりの衝撃に頭を揺らされて意識が飛びかけたけどなんとか保つ事ができて、再びきたガトリングガンの銃撃を猛ダッシュで回避する。
それでも流石に何発かもらってしまった。シールドはさっきの爆風でお釈迦になったし、なんとか致命傷にならないようにするので精一杯だった。
それからどうにかして持ち直したけど、イングリッドの外装はかなり心許ない状態になるまで被弾してしまった。また同じ事をやられたら今度こそ終わる。
そしてまた大頭無しはロケランを撃ってきた。しかし今度はダイに、ではなく柱の天井付近にだ。
最初は何が目的なのか分からなかったが、しかしロケット弾が着弾した瞬間に大頭無しの目論見が分かってしまった。
何せ柱には既に下の方にもミサイルが撃ち込まれていたんだからな。
柱の下にミサイル、上にロケット弾、どちらも1発当てれば十分に破壊できる威力だ。それを破壊すれば柱は支えを失う。
つまり、倒れるって事ぉー!!
「だぁー!」
ダイはまたギリギリで倒れる柱を回避、だが大頭無しが続けてミサイルを2発撃って来たのにも気付いていた。
ミサイルならジャマー、なんだがダイは嫌な予感がしてジャマーを使わず全力で飛び退いた。
そしてそれは正解だった。
ダイが飛び退いたところにガトリングガンが乱射されたからだ。ミサイルはダイの注意を晒す為の目眩しに過ぎなかった。
しかもジャマーを使ってたらダイの近くでミサイルが落ちていた。ガトリングガンの弾が当たって誘爆すれば銃撃と爆撃の両方を食らってやられていただろう。
そのミサイルは2発ともガトリングガンの流れ弾が当たって爆破したけど、あそこにダイがいたら終わってたな。
しかし大頭無しめ、こんな絡め手まで使ってくるとは思わなかった。不用意に飛び退いたせいで、また体勢を崩してしまったし。
早く立ち上がって猛ダッシュしないとガトリングガンの狙い撃ちに―――あれ?
「……あれ?」
ガトリングガンを、撃って来ない?
よく見るとガトリングガンとドラム型弾倉を繋いでいた弾帯が、無くなっている。
弾切れ、なのか?
「やった……遂にやったか!?」
間違いない。その証拠に大頭無しは腕からガトリングガンを、肩からドラム型弾倉をそれぞれパージした。弾切れの銃は使い物にならないから。
ガトリングガンだけじゃない、左腕のロケランもパージした。そう言えばもう4発撃ち尽くしていたな。
脚のミサイルは片方2発ずつ撃ったからまだ1発ずつ残ってるか。
だが遂にやった。主力のガトリングガンやロケランさえ無くなって、ミサイルもあと1発ずつ、大頭無しの武器は大幅に制限されてしまった。
あとは使い勝手の悪い波動砲と手の爪、それから腕の中にあるレーザーCIWS―――と思ったらレーザーじゃない!?
「なぁ!?」
大頭無しが腕から撃ってきたのはレーザーではなく、実弾だった。それもガトリングガン並みの連射性をもつ実弾だ。
[M60DF 20mmサブマシンガン]
それ、煙突人間と出っ腹が使ってたマシンガンじゃん! そんなものまで持ってたのか!?
しかも片腕じゃない、両腕から撃って来やがる。
流石にこれはダイでも躱し切れない。ガトリングガンは単発だからなんとか躱せたんだ。
だがマシンガンは両腕だから2発同時、同じ連射性があるならマシンガンの方が躱し難いのは当然だ。
シールドが無くなった今、ダイに防御と言う選択肢は無い。外装だって随分やられてしまったんだからな。
「くっそぉおおおおお!!」
ならば反撃、ダイは咄嗟に反撃に出た。
大頭無しの胴体目掛けてライフルをフルオート射撃。更にジャマーもブラスト照射してシステム補助を回復させる。
大頭無しは肩のシールドでガードするが、それでも片腕のマシンガンは撃ってきた。
撃ってきたと言う事はつまり、銃口は露出してるって事。ならばそこを狙うまでだ。
システム補助があれば露出した銃口を狙撃する事も可能―――と思ったらそんな事も無く、システム補助の力を借りてもそんな精密射撃は無理だった。
だが効果はあった。撃ち合いになればライフルの方が威力は高い。フルオートで弾幕を張ればマシンガンの弾を大幅に撃ち弾く事は出来たんだ。
「これだ!」
ダイは倒れた柱に身を隠してライフルで撃ち合いに出る。威力の高いライフルならマシンガンの弾を弾きつつ銃本体へも攻撃出来るだろう。
両腕の二丁撃ちだとシールドのガードが解ける、大頭無しはそれを嫌って止む無く片腕だけで撃っているから、ダイにも勝機はあるかもしれない。
これは、いけるか?
……そんな訳は無かった。大頭無しは撃ち合いの途中で波動砲を使って来やがったんだ。やはりチートだ。
「いいっ!?」
柱に隠れていてもこれはヤバいと察してダイは直ぐにその場から退避、その直後に波動弾が柱に直撃して凄まじい衝撃が襲う。
しかも襲ってきたのは衝撃波だけじゃなかった。破壊された柱の破片なんだが、その殆どが金属で出来ていたから飛んでくると十分な凶器になるし、実際イングリッドの外装に結構刺さっているからな。
だが問題はそこじゃない。波動砲によって柱が破壊され、ダイも炙り出されてしまった。
つまりマシンガンがツインで銃撃してくるって事だ。
だが意外と言うか大頭無しが撃ってきたのはマシンガンではなく、ミサイルだった。
体勢を崩したせいでジャマーが当てられない、そう判断してダイはライフルで何とか迎撃した。1発だけな。
だって今、システム補助がまた無くなったんだし。
「うぎゃあ!」
最後のミサイルは身体のバネを使って跳んで避けるしかなかった。しかも避けた瞬間、大頭無しのマシンガンに迎撃されて至近距離での爆破をもろに食らったけどな。
一瞬終わったかと思ったぞ。助かったのは奇跡と言っていい。
だがイングリッドの損傷は激しかった。爆破の被害は右半身に集中している。右腕は肩までゴッソリ無くなってしまったし、胴体まで被害が出ている。
脚も損傷してるが、まだ立つことは出来そう。利き腕が無くなったのは痛いが落っことしたライフルはまだ使えそうだ。
「くっ!」
ダイは直ぐに立ち上がり、ライフルに向かって走る。
大頭無しもマシンガンを撃ってきたが構わず猛ダッシュ。この土壇場に来てまたダイのダッシュ力が上がり、マシンガンの弾は思ったほど被弾しなかった。
そしてスライディングでライフルを左手に拾い、銃口を大頭無しに向けて反撃に出る。
が、銃口を向けた瞬間それは無意味だと悟った。ライフルでは無意味だと。
大頭無しは波動砲を向けていたからな。
―――ズドォォォォォン!!
凄まじい破壊力の砲撃がダイを襲った。
身を隠すところも無く、躱す余裕も無い。直撃は免れず、波動砲の衝撃はフロア一帯に広がる。
衝撃が止んだ頃、そこには抉れた床があるだけで後には何も残っていなかった。
ダイのイングリッドも、そこに残ってはいなかった。
え? ちょっと待て。
まさか本当にこれで終わりとか言うなよ。
いや、いやいやマジで言うなよ、これで終わりとか。
だから言うんじゃねぇーぞ!
てか誰か何とか言ってくれぇぇぇぇぇ!!




