第29話 ガッチガチやぞ! ゾクゾクするやろ!! ……しねぇーよ
システム補助、エラー中。
頭無し。それも全高13、4mもある頭無し。
しかし体格だけ見るとイングリッドの倍近くある相手だ。真正面に立たれるとプレッシャーがパネェぜ。
デカいが相手はあの頭無し、まともにやり合えば一番楽勝できる相手だが、しかしこのデカい頭無しはただデカいだけでは無いだろうな。
見るからに武装がガッチガチに構成されている。
[GAU-4402/A 25mmガトリングガン]
[M72S1FBAW 四連装ロケットランチャー]
[ライオットシールドSM14]
[BGM272JEL 三連装対戦車誘導ミサイル]
[BGM272JEL 三連装対戦車誘導ミサイル]
確認できただけでもこれだけある。右腕に四本脚が使ってたガトリングガン、左腕には初めて四本脚に遭遇した時に使ったロケットランチャー。ちょっと懐かしいな。
右肩にガトリングガン用のドラム型弾倉、左肩には四本脚と同様のシールド、更には脚にも扉を守ってた出っ腹が使ったミサイルを右脚と左脚の両方に装備している。
これでもスキャニングで確認できただけだ。見た感じでは両手の爪も武器だし、頭無しと同じなら腕の中にレーザーCIWSを内蔵している筈。
後は背中にも何か隠しているっぽいし、他にも何かあるかもしれない。それにコイツも頭無しの系統ならジャマーもある筈だ。
「……待てよ、ジャマーって妨害電波の事だよな」
ん? 確かにそうだが……え? ま、まさか!?
コイツが妨害電波の発信源なのか!?
よく見れば胸部の目玉っぽいレンズが露出して光ってるし、ジャマーを常に照射している!?
そう言えばこの部屋に入ってからシステム補助もエラーになってやがる。部屋の外は大丈夫でも、中に入れば影響が出るって訳か。
マズいぞ。こんなの相手にシステム補助無しで戦えってのは厳し過ぎる。
使えないのはシステム補助だけでは無い。手榴弾も使い切ってしまって今はもう無い。ライフルも弾倉が残り3個だし、シールドも疲弊してあまり期待できない。
そんな武装だけで戦えてって、流石に無茶が過ぎるんじゃねぇーか? いや、死ねってか?
そうだよ死ね、とでも言ってるかのようにデカい頭無しはガトリングガンを撃って来た。無論ダイも猛ダッシュをかけて逃げる。
本当ならここを出て一時撤退が最良なんだが、あの頭無しはそれを許さないらしく出入口の前で通せん坊しながらガトリングガンを撃ってくる。
ガトリングガンの対処は弾帯を切る事なんだけど、コイツも賢く左肩のシールドでガードしながら撃って来ている。
「だったら!」
しかしダイもお手の物、ライフルを頭無しの横の壁にフルオートで当てて跳弾させる。そして当たり所を調整して弾帯に命中、ズバッと切ってやった。
さて、次は何を使って来る? ロケランか? ミサイルか?
ミサイルはジャマーで対処できるがロケランは誘導性が無いからレーザーで迎撃するしかない。さて、どっちで来る?
しかしどちらでも無かった。頭無しが使って来たのは背中に抱えていた何かだった。
それは上に伸びていくと煙突か何かようで、そして前のめりになってガクンっと倒れると、本来頭がある筈の場所で止まって支えられた。
煙突みたいな何か、それでダイは直ぐに察して頭無しから距離を取った。
その直後に砲撃、ダイの予想した通りそれは―――波動砲だった。
「うぎゃあああああ!!」
なんとかギリギリで回避出来たものの、その一撃は怪獣並みの破壊力があった。
だが連射性は無さそうだ。そう考えると怪獣のと言うより煙突人間の物と同じと言った方が正解なのかもしれない。
ならなんとか躱せない事も無いだろうけど、しかし問題はそこではなかった。
このデカい頭無しは波動砲でこっちが退避した隙にちぎれた弾帯をガトリングガンに繋ぎ直していたんだ。
「マジかぁ……」
四本脚でもしなかったような器用な真似をしやがって。流石に頭無しや他の無人機とは違うって訳か。じゃあ区別する為に、大頭無しと呼んでやるよ。
さて、この大頭無しは相当厄介だぞ。こっちの武器も少ないときたし、どうするダイ?
「これならどうだ!」
半ばやけくそになってダイはジャマーをブラスト照射したけど、やはり電子戦特化の頭無しがベースになってるだけあって機能障害を起こすような事はなかった。
[システム補助71%]
「でも効果あった!?」
でも効果あった!?
どうやらこっちからジャマーをかければシステム補助は回復するらしい。ならば、まだ少しはなんとかなるかもしれない。
それにダイもビビってる様子はない。流石にあの怪獣と比べたら大頭無しなんぞそこまで怖くは無かったんだ。
問題はこちらの火力が少ない事か。
ライフル一丁でどう戦うか、残弾もそれ程残って無いのにあんなガッチガチのフル装備で固めた大頭無しを倒せる事ができるだろうか?
そして大頭無しも再びガトリングガンを撃ってきた。ダイはこれをひたすら猛ダッシュで回避する。
あの重武装とまともにやり合って勝ち目が無いのは明白だ。かと言って撤退も無理っぽい。
やるんならここはまともにやり合わずこちらの優位を取れる策を講じる必要がある。
そしてダイは既に策を練っていた。先程の出っ腹8機を相手にした策と同じ、打ち止めを狙う策だ。
ここは完全に密閉された密室空間だ。新手も増援もやって来る事は無い。
ならば時間をかけて弾切れを待ち、打ち止めになったところを一気に攻める。波動砲に弾切れは無いだろうが1発ごとのチャージが長い筈だから心配は無い。
大頭無しもダイの意図に気付いているのかいないのかじゃんじゃん撃ってくるし、このまま撃ち尽くしてくれるのを待とう。
だがこの策で不安なのは、ダイのスタミナだ。
長期戦は避けられないし、ガトリングガンを避け続けるのに猛ダッシュを絶やしてはならない。そんな全力フルマラソンをダイにこなせるだろうか。
……無理じゃね?
ダイに限らず無理じゃね? 全力疾走のフルマラソンとか……。
いや無理だ、ダイ。直ぐに別の策を考えろ。これはダメだ、詰むぞ。
まぁダイもヤバいんじゃ無いかとは思ってるんだが、今は他に策が思いつかないし、どうしようも無い。
とにかく今は回避、妙案が思いつくまで回避あるのみだ。
それに大頭無しも馬鹿の一つ覚えみたいにガトリングガンを撃ち続けるだけでは無かった。回避し辛いタイミングを見計らってロケランも打って来よるし。
「レーザー!」
ロケランはレーザーで迎撃できるけど、爆風に煙が立ち込めて視界が悪くなる。この瞬間がガトリングガンを躱すのが一番難しいタイミングだ。
シールドでガードしつつもやはりガトリングガンの弾は何発か当たる。
直ぐにまた猛ダッシュで回避するが、この当たる何発かが致命的なところにでも当たったら、 その時点で一巻の終わりだ。
果たしてこれはいつまで続くのだろうか。ダイも頭をフル回転させて知恵を絞っているが、猛ダッシュに身体をフル回転させているせいで全然絞り出せない。
これは無理かもしれんな。せめてどこか身を隠せる場所でもあればいいんだが、ここにあるのは柱一本だけだ。
かなり太い柱だが、あれではロケラン1発で破壊されるのがオチだしな。もっと安全に身を隠せる場所が欲しい。
それにもう息が上がってきた。考えてみれば大頭無しの前に出っ腹8機ともやり合っていたんだ。
その時も打ち止め狙いで猛ダッシュと回避を続けていたからスタミナも当然減っている訳だし。
こんな事ならここに入る前、ゲッコーで様子見した時にもっとよく調べておけば良かった。大頭無しの存在に気付けたらスタミナも装備も整えてから挑む事もできたのに。
……ん? 待てよ。
「そう言えば……俺がここに入って来た時、大頭無しは何処にいたんだ?」
大頭無しは最初このフロアの中の何処にもいなかった。それで気が付いたら背後から襲われたんだ。
背後、しかしその時ダイの背後には出入口しかなかった。なら大頭無しは何処にいた?
背後の……上?
まさか壁に張り付いて待ち構えていた? あの巨体でか?
でも他に考えられるのは……
「……あ、ああ!?」
他に考えられるのは、そう色々考えて上の方に目を向けたら何とビックリ。20m程上に奥行きの足場があったんだ。
円いフロアだからよーく見ないと気付けなかった。壁側の20m上に奥行きができていて、そこが足場になっていた。大頭無しはそこにいたのか。
しかも奥行きを見た感じ、割と広い幅の足場になっている様子だし。ここなら身を隠せられるかもしれない。ならなんとかして登らないと。
しかしどうやって?
イングリッドの脚力では到底無理。フックランチャーを使えばよじ登れるけど、そんな猶予は無い。
なら、手段は1つだ。
ダイはもう一度ライフルを跳弾撃ちして大頭無しの弾帯を切る。すると大頭無しはさっきと同じように波動砲を出して容赦無く撃ってきた。
そう、さっきとまんま同じ単純行動だが、対処のしようが無い攻撃手段であるが故に最も効果的であるとも言える。
だが対処はできずとも利用はできるさ。
ダイは波動砲をジャンプで躱し、着弾時の衝撃波をシールドでガードすると、衝撃波に持ち上げられてより高く上がった。
あとは足場より上の壁に両腕のフックランチャーを撃ち、足場までぶら下がって難無く着地した。波動砲を利用した見事な大ジャンプだぜ。
着地して分かったけど、この足場は結構幅が広く途切れる事の無い輪っか状に一周している一本道となっていた。
そして壁側はガラス張りになっている。まるでこのフロアの様子を眺める為に設置したようだ。
このフロアは実験場か何かだったのだろうか?
試しにイングリッドの拳で叩いてみたが割れず、蹴ってもヒビ一つ入らなかった。こりゃかなり丈夫な特殊ガラスだな。
取り敢えずガラス張りを割るのは一旦諦めて、やっと一休みできる。ここなら大頭無しに襲われる心配は―――
―――ガッ!
心配は……ない訳無いよな。
大頭無しは壁に爪を立ててよじ登ってきやがった。
登り切られる前にライフルで撃ち落とそうとしたが、先に大頭無しのガトリングガンが火を吹いてダイは再び猛ダッシュで逃げざるを得なくなる。
本当に休む間もないな。まるで大頭無しもダイのスタミナ切れを狙っているかのようだ。
しかしそれも直ぐに終わった。考えてみたら今の大頭無しの体勢はかなり無理があったからな。
左手の爪で壁をよじ登り、右腕を出してガトリングガンを撃つ。これって身体が半分宙に浮いた状態になってるんだぜ。
背後にまで回って来られたら流石にガトリングガンも向けられない。それどころか無防備を晒している状態だ。
「隙あり、でりゃぁー!」
ダイはその隙を逃さずライフルをフルオートで連射し大頭無しの左脇腹辺りを狙った。
ライフルの射程圏内には十分収まっているし、システム補助が活きているから弾もちゃんと当たる。
だがこの大頭無し、外装もかなり硬い。並みの頭無し程度なら1発で外装を貫通するんだが、大頭無しは寧ろ跳ね返している。
勿論ダメージが無い訳じゃないだろうけど、残り少ない弾で何とかなるだろうか?
なるべく一点に集中して撃ち続ける。すると外装もダメージが蓄積しているのか、徐々にヒビ割れが目立つようになってきた。これはいけるか?
流石に危ないと察したのか、大頭無しもよじ登るのをやめて一旦下に降りた。
何とかなったか、取り敢えず一息はつけそうだ。
しかし向こうも一旦降りたと言う事は、態勢を立て直してくるつもりでいるのかもしれない。
こっちはライフルの弾も無くなった。新しいのに変えておくけど、これで弾倉は残り2個だ。
これで立て直してきた大頭無しを相手に、果たして戦い切れるだろうか?
まぁまたよじ登ってきたら格好の的にするだけだ。この足場にいる限りこちらの優位は変わらない筈。
でもそれは大頭無しも分かってる事なんだよな。だとしたら次どんな手段に出てくるかが不安なんだが。
「……っ!?」
不意にダイは独自の感で察した、波動砲が来ると。
直ぐにその場から飛び退くと、さっきまでダイのいた場所がエゲツないまでに抉られて足の踏み場も無くなっていた。
それはいいんだけど大頭無し、何故このタイミングで波動砲なんだ?
まさか不意打ち狙いで撃ったと言う訳でも無いだろうに、何が狙いで波動砲を使った?
しかも、大頭無しはそれから全く動かない。そりゃこちらが姿を見せたらガトリングガンを撃ってくるけど、身を隠している間は一切動こうとしない。
それから暫くして、また波動砲を撃ったきた。
勿論これも回避できたけど、大頭無しの意図がまるで掴めなかった。波動砲だけに徹して、チャージが終われば直ぐに砲撃するばかり。
そんな見え透いた砲撃にダイが躱せない訳無いだろ。ただ足場が無くなるってだけで。
……足場が無くなるって、だけ?
「ま、まさか……足場を壊し尽くすつもりか!?」
俺もまさかとは思うが、しかしそう考えると合点がいく。
大頭無しは足場に登れないのならダイを引きずり下ろすしか無い。その為に足場を破壊し尽くすと言うのは理屈は通るけど。
それに波動砲ならチャージこそ長いが弾切れは起きないし、威力もある。破壊すると言う単純な作業にはもってこいだ。
しかしなんてまた気の遠くなるような手段に出るかねぇ。まぁダイも人の事言えた義理じゃないけど。
だとしてもこのまま行けば問答無用で引きずり下ろされるのは目に見えている。そうなったらまた猛ダッシュの全力フルマラソンに陥るだけだ。
どうする、ダイ? 毎度の事だが、追い詰められたぜ。
今更だけど、ダイここに来て何度追い詰められてんだよ。……よく生きてたな、お前。




