第28話 ジャマーの使い道ってのはな、こう使うんだよ
システム補助72%
さて、道は2つだ。
出っ腹8機が守っている閉ざされた扉と、新手が出てきたもう1つの通路。
閉ざされた扉に行くのは決定事項だとして、問題は今行くか後から行くかだ。
今行くんなら出っ腹8機を自爆させる事無く撃破しなけりゃならない。自爆なんてされたら扉ごと破壊されちまう。
んで、後からにするんなら取り敢えず通路の方へ撤退して準備を整えてから再チャレンジと言う事になるな。
まぁ普通ならここは後から、だな。今の装備だけでは対処するのは難しい。それに策も無いし。
「……あ゛」
ん? どうしたダイ―――あ゛
通路の方から新手の出っ腹がまた来やがった。さっき出て来たばっかだと言うのに。
しかしダイの反応も早かった。猛ダッシュで新手の出っ腹に接近し、素早くジャマーで動きを止めてライフルで銃撃、見事な手際で再び出っ腹を撃破した。
コイツも慣れたもんだなと感心していたんだが、新手の出っ腹に接近して分かってしまった。
このもう1つの通路は長い一本道になっていて、奥の方から出っ腹の増援がぞろぞろとやっていきている。
ダメだ、この通路は使えない。
「くっそー!」
とにかくダイは出っ腹2機の死骸を通路の出入口に詰めて塞いだ。これで多少は時間を稼げるだろうが、悠長にはやってられなくなった。
こうなったら道は1つだ、今ここで出っ腹8機を殲滅して閉ざされた扉に向かう。
でもどうやって?
最悪追い詰められる事になったら出っ腹をワザと自爆させる手段もあるが、その場合出っ腹8機は殲滅できても目的の扉は瓦解して塞がってしまう。
それはどうしても困るから、如何にして自爆させる事無く出っ腹を機能停止に追い込むかがポイントだ。
……無理じゃね、そんなの。
せめて1機ずつ撃破出来たらいいんだが、こいつら敗色濃厚になれば迷わず自爆するかもしれないし、何とか勝ち目があるように見せかけて一気に撃破したい。
ポイントはジャマーだ。ジャマーで機能障害を起こしてから素早くメインコンピューターを破壊して止める。そうすれば自爆する事無く撃破できるし。
1機ずつなら問題無い。しかしやはり8機、これがどうしてもネックだ。
自爆させない為には8機全てにジャマーを当ててメインコンピューターをほぼ同時に破壊する必要がある。どうやって?
スポットにしてもブラストにしても、あんな横2列に並んだ出っ腹全部に照射するのは無理だ。せめてもうちょっとまとまってくれたらいいんだがな。
「あ、そうだ」
何か思いついたダイはライフルで2、3発銃撃して出っ腹に接近した。勿論出っ腹はその程度の銃撃、簡単にガードしたよ。
そして接近してきたダイに出っ腹は容赦なくグレネードランチャーを撃ってきた。中にはサブマシンガンを乱射してくる奴もいる。
ダイはグレネードランチャーを徹底的に躱し、躱し切れないマシンガンはシールドで防ぐ。
たまにライフルで銃撃しているが、どうも攻撃と言うよりは挑発みたいな感じの銃撃だ。出っ腹を煽ってるように見える。
……まさかダイ、お前出っ腹どもの弾切れを狙ってるのか?
確かに弾切れになれば何か別の手段に出てくるかもしれないけどさ、自爆はあくまで最後の手段である訳だし弾切れになっていきなり自爆は無いだろうけど。
しかしまた気の遠くなるような手段に出たな。新手の出っ腹も迫ってきてるのに大丈夫か?
しかし出っ腹どもも中々の勢いで撃ってくる。両腕のグレネードランチャーを相互に撃つ事で連射に近い状態になっているから余計にだ。
だが102mmの弾だ、一発一発が強力である代わりに数は少ない。箱型弾倉に装填されているのは4発、予備弾倉が1枚のシールドに6個あるから装弾数は56発だ。
数字で見るとあまり大したことは無い。
サブマシンガンは片方だけで150発以上の装弾数を装填しているが、それも高速連射し続ければ7、8秒で撃ち尽くしてしまう。
出っ腹はほぼ一斉に撃って来ている。なら打ち止めになるのもほぼ同時、弾切れになるまで1分とかからない筈だ。
問題は火力だがな。グレネードランチャーは元よりサブマシンガンも精密に集中放火を狙ってるから当たったらヤバいの何の。
でもそこはダイも成長した。あの攻防戦で一皮むけて以来、中々的確な回避行動を取れるようになっている。
まぁ、それでもギリギリだけどな。
だって8機の集中放火だぜ。
1分とかからないとは言っても、こんなの躱し続けるのに1分も保つか? 無理だろ。
少なくともちょっと前までは絶対に無理だった。今のダイでもはっきり言ってギリギリだ。
いつ当たってもおかしくないし、当たったらその瞬間に終わる。危険な綱渡り状態さ。
だが、不思議とそんな心配をする必要が無いように思えてな。
特に根拠はないが、ダイならやってのけるんじゃないかってそう思えるんだわ。
そして、その予想は的中した。
出っ腹の集中放火が次々に打ち止めになったかのように止まっていく。残弾が残っている様子は無かった、空の弾倉を捨てたから。
何度か危ない事はあったが、ダイは見事に躱し切ったよ。グレネードランチャーは全て、サブマシンガンの弾は少し当たったが無視できる程度。
1分半と予想より長い回避劇になったがダイはそれを乗り切ってみせた。これで奴らは飛び道具を失った筈―――ん?
なんか出っ腹の両脚の側面から三つの穴が出てきた。
何の穴だ? そう言えばこの出っ腹、他の奴より脚が太いような……。
ま、まさかそれって―――
「ミ、ミサイル!?」
ミ、ミサイル!?
[BGM272JEL 三連装対戦車誘導ミサイル]
ヤバい、これ戦車ぶっ壊す為のミサイルだ! 歩兵機なんか簡単にぶっ壊されるぞ。
しかも片脚に3発、計48発がダイをロックオンして飛んで来やがった。
誘導性がある、これは躱せない。
普通なら慌てふためくところだが、しかしダイは咄嗟に思い出した。こっちにはジャマーがあると言う事を。
「ジ、ジャマー!」
ジャマーのブラスト照射を受けたミサイルはロケットがガス欠したかのように止まって次々に落ちていく。爆撃の心配は、なさそうだった。
と言うかジャマーって、これが本来の使い道だからな。今までのがちょっと特殊なだけで。
「ふぅ……って、ぎゃあああああ!!」
一難去ってまた一難、ミサイルの次は出っ腹が突進して来た。
ギリギリシールドでガードしたけど、ガードが間に合わなかったから出っ腹のシールドアタックをまともに受けていただろうな。
出っ腹のシールドアタック、それは想像以上の破壊力がある。
ただでさえデブな巨体に足裏のローラーを使った地味な速さ、頑丈なシールドの表面は高圧電流も流れている。
そんなのでシールドアタックされてみろ、まともに受けたらペシャンコか、そうでなくても高圧電流で機能停止だ。
飛び道具が打ち止めになった出っ腹に出来る事と言ったら肉弾戦、それも巨体を利用した体当たりくらいのものだと思っていたが、シールドアタックまでは想定外だったな、
しかもシールドアタックを仕掛けてきたのは1機では無い。8機中の4機が前に出てきていた。
4機が攻撃に、後の4機は守備にそれぞれ役割分担して別れたみたいだ。
4機か。実際ダイは防戦一方だったからな、攻撃に4機配置すれば十分だと思ったんだろう。
それに新手だって何れやって来る。その前に決着を付けたいところだな。
しかしこれヤバいなぁ、まとめて撃破しようって時に二手に分かれてしまわれるとは。
兎にも角にも今は回避、回避回避回避でひたすら回避だ。
打開策が見つかるまでただただ回避あるのみだ。
まぁ出っ腹4機のシールドアタックくらい、今のダイならなんとかなるけどな。
「とか安心してたら後ろから来たぁ!?」
まさかの守備の4機が仕掛けて来た。なんとか回避したが、結局お前らもやる気だったのかよ。
いや、ダイが近づき過ぎたんだな。防衛行動って訳か。
下手に近づくと守備の奴らまで襲ってくる。そいつらまで警戒しろってか? 最悪挟み討ちじゃねぇーか。
おまけにそろそろ新手もやって来そうな勢いだし、新手はとっくに通路を開通して入って来る。またぞろぞろとやって来やがったな。
どうするよ、ダイ?
「待てよ……そうだ!」
おっ? 何か閃いたか?
ダイは突然、守備の出っ腹の方へ走り出した。勿論攻撃の出っ腹もシールドアタック状態で追う。
そして向かって来たダイに守備の出っ腹も防衛行動としてシールドアタックを仕掛ける。
つまり、挟み討ちにされた。
しかも逃げ道を塞ぐように四方八方から追い込まれる形になっているし。
ダイ……何か策があるんだよな?
「……ここだ、ジャマー!」
出っ腹のシールドアタックが全方位から直撃する寸前でダイはジャンプ、しかもジャマーをスポット照射して。
……そうか、スポット照射は射程距離が短いが全方位に照射できる。
ワザと追い込まれて全ての出っ腹をジャマーの射程圏内に収めた訳か。考えたな。
だがジャマーは効いても自爆くらいはできる。しかもジャマー発動中はシステム補助が使えない。
つまり、ジャマーが効いてから自爆する前に、システム補助無しで8機の出っ腹を撃破しなければならない。できるのか、ダイ?
しかしダイに迷いはなかった。
ライフルを構えると同時にありったけの手榴弾を撒き散らすように投げた。そしてライフルをフルオートで銃撃。
ジャンプ中の間にライフルで2機、撒き散らした手榴弾では4機撃破した。そして落下の勢いを乗せてナイフで首筋を一突き、これで7機撃破だ。
……1機残ってしまった。
最後の1機は既に腹が震えて赤くなってる。爆弾が起動したんだ。やっちまった……。
「まだだ!」
ダイは扉から一番近い出っ腹の死骸を引き寄せ、扉を背に出っ腹の死骸でバリケードした。
しかも死骸はシールドアタックした状態、つまりシールドを前へ出している。
これは、防げるか。
考える間もなく最後の出っ腹は自爆、かなり近い距離からの爆発に飲まれてしまい、ダイは意識を保つ事が出来なかった。
これで助かるかどうかは、運任せだな。
しかし驚く事無かれ、あれ程の爆発でもダイのイングリッドは無事だった。
流石に外装が黒焦げになったが、目立った破損も見当たらないし、無事と言う事でいいだろ。
そして背後の扉もほぼ無事だった。
流石は耐久特化の出っ腹だ。よく持ち堪えたよ―――と思ったら出っ腹はシールドを失って本体もフレームが剥き出しの状態になっている。コイツでもギリギリだったか。
危なかったなぁ。まぁ事前に解体して出っ腹の爆弾事情を知っていなかったらバリケードにしようとは思わなかったけど。
出っ腹の爆弾はちょっと特殊でな、起爆はしても誘爆はしないって言う安全的な特性があるんだ。だからバリケードに使う事を躊躇わなかった。
おそらく8機の出っ腹全てが誘爆で爆発してたらこの扉の奥にまで被害が及ぶかもしれない。それは無人機にとっても好ましく無い事態なんだろう。
大事な何かが壊れるのは避けたかったから誘爆しないようにしていた、ってところか。
そのお陰でなんとか命拾いしたけど、今回も綱渡りには違い無かったな。でもまぁ見事だったよ、ダイ。
新手の奴らも今の爆発にやられて大破している。気を失ってる間にやられたらどうしようかとヒヤヒヤしたぞ。
さて、これでやっと開かずの扉を開ける事が出来る。
扉は自動開閉式だがセンサーが壊れて開かなかった。なのでぶち壊して中に入った。手間はかけないさ。
扉の先は通路だ。他より少し広めで、如何にも何か大きな物資を運んでいたかのような感じがする。
間違いない。この先にお宝がある。
妨害電波を発信する為のお宝が。
「……ここか」
通路の出入口に辿り着いた。出入口もまた扉で閉ざされているけど、これはボタン1つで簡単に開きそうだ。
ならばもう迷う事は無いが、しかしここでもダイは慎重策に出る。
ここにも人が通る専用の扉があったからな、ゲッコーを使って先に様子見をさせた。
まぁ中で待ち構えているような奴は無く、ダイは安心して扉を開けたけどな。
中は相当に広い空間だった。東京ドームくらいはあるだろうか、やたらと広くてそして何も無い。
ただ広間の真ん中に柱が一本あるだけで。
中々太い柱だ、直径だけでもイングリッドの全長ほどもある。そして高さも、天井まで続いていたけどこの広間の天井、滅茶苦茶高くないか?
と言うかこれ、ひょっとして地下6階まで続いているかもしれないんじゃ……だったら天井付近の壁をぶっ壊して上の階層のフロアに出られるかもしれない。
ラッキー! まさか地下7階をこんなに早く通過できるとは思わなかった。都合のいいショートカットコースを見つけたもんだな。
さぁて、じゃあまずは妨害電波を発信している装置か何かを探すか。と言っても見渡す限り何も無いんだけどな。
広間はただ広いってだけで本当に何もなかった。装置はおろか、何かしらの機器も一切なし。
しかしダイはここの光景を以前にも見た事を今更ながらに思い出す。ここよりもっと広いが、同じように何も無く、ただただ広いだけの空間。
あの怪獣のいた地下3階、そことここはどこか酷似していた。
まさかここにも怪獣が現れたりとか……無いよな?
―――ゾクっ!?
急に来た怖気、そしてバックモニターには床に陰りが映る。
ヤバい、そう察して直ぐに飛び退いたのは正解だった。ついさっきまでダイのいた所に、鋭い爪が深々と突き刺さったんだからな。
「……な、あっ」
その爪で襲ってきた相手を見て、ダイは思わず言葉を無くした。
だってそいつはどう見ても……頭無しだったから。
13、4mはあろうかと言う巨大な。
頭無しの全高だけどな、イングリッドが8m半に対して6mくらいしか無いんだ。体格も標準体型でイングリッドより一回り小さいけど。だがらこの大きさは並みの奴より倍以上デカい事になる。マジかぁ……。




