第26話 デブでいいのか!? 嫌なら痩せろ!!
システム補助73%
最後に確認した時から6%しか減っていなかった。
6%かぁ。
結構頑張ったんだからもう少し減っているものかと思ってたら、意外と微妙な減り幅だなぁ。
まぁそれはいいとして、突然だが新種の無人機を発見した。
「……なんだ、あれは?」
無人機、で間違いは無いだろうけどなんかその無人機は……なんとも残念な体型の奴だった。
なんと言うかそいつは、デブだった。
力士とかそんなんじゃなくてな、普通に腹の出たデブのフォルムなんだ。
そりゃもう見事な出っ腹でな、ダイが付けた呼び名もまんま出っ腹さ。
何故あんな出っ腹のフォルムにする必要があるんだろうな。まぁ無人機は無駄な事をしない、必ず何か意図があっての事だろう。
しかしいいのか?
そんなフォルムでいいのか、出っ腹?
「いいのか……無人機がそんなデブで」
今だから告白するけど、実はダイも肥満体型だったんだぞ。このプラントに来てから随分痩せたけどな。
だってもう5日目だぜ。5日間プラントで歩兵機を操縦しまくったからカロリーの消費量がエゲツない事になったさ、歩兵機の操縦ってのはそう言うもんだ。
しかも1日1食の過酷環境……いや、2日ほど抜いているからより過酷環境だ。
その結果、肥満体型だったダイは劇的に痩せた。無論ガリガリとかマッチョとかになった訳じゃなく、まだちょっとぽっちゃりしてる程度にまでは痩せたよ。
これが元々ガリガリ体型のハヤセとかだったら今頃骨と皮しか残ってなかっただろうな。……いかん、これセクハラか。
つまりダイもデブだったんだ。そのダイが言うんだぞ、お前らそれでいいのか?
―――ギロッ
ダイの心の声を察したのか、出っ腹がゲッコーの存在に気付いてを睨んできた。
「ヤバっ、気付かれた!?」
ダイはゲッコーから伸びる有線を引っ張って直ぐに回収したけど、出っ腹はそのフォルムからは想像出来ないようなスピードで追ってきた。
しかも脚を動かさずにな。
どうも出っ腹は足の裏にローラーっぽい物を付けているらしくてな、それ使って走行するから地味に速いんだわ。
出っ腹、お前デブはデブでも動けるデブだったのか。
そのスピードのせいでダイがゲッコー回収した頃にはもう、出っ腹はダイの目の前に現れてロックオンしていた。
こりゃ逃げられそうにないな。
「……いいさ、やってやる」
ダイは即座にライフルを抜いた。挨拶代わりのこの銃撃、まぁ堂々と出てきたんだからこれで終わりとは思って無いけどな。
だが、成果はあった。この出っ腹がどういう歩兵機かが大体分かったんだ。
ライフルを撃った瞬間、出っ腹はファイティングポーズを取った。すると突然背中の両サイドから2枚のシールドが出て来て、バタンと前で止まり出っ腹をガードしたんだ。
そう、バタンとな。
両サイドから出て来た2枚のシールドはまるで両開きの扉を閉じたかのようにバタンと閉じて本体をガードしたんだ。
一瞬だけ見えたがこのシールド、出っ腹の腹巻きみたいな外装に沿って動いていた。
おそらくあの腹巻きっぽいのはレール、普段は背中にある2枚のシールドはこのレールに沿って360度全方位を瞬時に移動するように出来ている。
腹が出てるのはシールドのレールを肩幅より前に出すため、ファイティングポーズを取ったのはシールドの移動を妨げない為だ。
つまりこの出っ腹は、耐久特化型の歩兵機と言う訳だ。
でな、スキャニングして分かったんだけど出っ腹のシールドも四本脚が使ってるのと同じライオットシールドだったんだけどな。
でもなんか四本脚の使ってる物よりデカいわ、分厚いわ、おまけに高圧電流を流しているから触ったらヤバいわの三拍子だったんだ。
全然同じじゃねぇー!
勿論そんなシールド相手にライフルなんか通用しなかったよ。だが、そう言う戦法は既に四本脚で対処済みさ。
「くらえ、手榴弾!」
ダイは手榴弾を投げた、しかもシステム補助が復活したから豪速球が容易に投げられるようになったし。
使ったのは爆発の衝撃波に頼った攻撃手榴弾だ。衝撃波ならシールドを交わして本体にもダメージを与えられるし、シールドで防御してるとレーザーの邪魔になって迎撃も間に合わなくなる。
ダイはこの戦法で四本脚を攻略するに到った。
だが、出っ腹は違った。ダメージは通ったんだがな、それは四本脚に比べて微々たるものでしかなかったんだ。
「……嘘だろ」
どうやら出っ腹は本体の耐久力も高いらしい。この分だと残り3個しか無い手榴弾でダメージを蓄積させても出っ腹は倒れないだろう。
マズいなぁ、ライフルも手榴弾も効かないときたか。
そして今度は出っ腹が仕掛けた。しかしこいつ、ファイティングポーズを取った両方の腕の先に手が無かったんだ。
その代わりに砲門が付いている、これは砲腕だ。
かつてダイのイングリッドに備わっていた波動砲と同じ、前腕そのものが砲になっている砲腕だった。
まさか奴も波動砲を……と思ったら撃って来たのは実弾だった。
やけに大きな実弾だが弾速は遅い、これなら発射してからでも躱せる。しかし何か嫌な予感がしたダイはその実弾から大袈裟に飛び退いた。
そしてそれは正解だ。
着弾した実弾は手榴弾並みの威力で爆発したんだからな。
「……っ!? す、スキャニング!」
[XM75AAIWS 102mmグレネードランチャー]
あの出っ腹の砲腕をスキャニングしたらなんと102mmもある火砲だった。
ただし銃や砲腕と違って反動の少ない擲弾発射器だから余裕で撃てるし、弾速もあまり速くないから当たってもそこまでのダメージにはならないけど。
まぁ爆発の威力がメインなんだけどな。
流石にこんなもの撃たれたら厄介だ。直撃しなくても至近距離に着弾して爆発したならイングリッドもそれに巻き込まれてお陀仏だろうし。
有効範囲が割と広いから、大きく回避しないと本当に巻き込まれる。しかも
「うぎゃぁあああああ!!」
そのグレネードランチャーは両腕にあるから、相互に撃たれたら連射も同然だ。
弾切れを待つか? いや、あのグレネードランチャーは箱型弾倉を肘の辺りに差し込んでいるけど、おそらく予備弾倉をシールドの裏にいくつも持っている筈だ。
それに時間をかければ増援がやってきて詰む事になるかもだし。その前にこいつを倒すべきだ。
だがどうする? ライフルも手榴弾も効かない相手に逃げ続けないとやられる防戦一方なこの状況、打開策はあるのか?
「あれを使ってみるか。ジャマーブラスト!」
ダイは最後の手段に出た。頭無しから頂いたジャマーブラストを使う手段に。
イングリッドにもジャミングは搭載されているが、ジャマーブラストはそれよりも遥かに強力なジャミングを発生させる。
それをピンポイントで出っ腹に向けて集中照射、目に見えないこの電波がどのような効果をもたらすか。こればかりは出たとこ勝負だな。
グレネードランチャーを回避しながら照射したジャマーをまともに受けて出っ腹は―――突然動きを止めた。
「え?」
え?
単にグレネードランチャーを止めただけでなく、身体の各関節全てに異常をきたしたように動きを止めてしまったんだ。
ついでにシステム補助もエラーになったけど、これは使う前から分かっていた。プロテクトを使ってもシステム補助には影響するみたいなんだ。
だが無人機が固まってしまったのは予想外だ。まさかと思ってライフルを撃ってみたら、あっさり命中したよ。
流石に耐久力が高いから1発ではやられなかったけど、数発当ててやったら簡単に機能停止しやがった。
マジかぁー。
無人機だからジャマーに弱いんじゃないかとは思ってたけどここまでとはなぁ。
頭無し、お前割と凄い奴だったんだなぁ。
これならこの先の無人機も余裕で勝てる気がする。1対1ならな。
さて、増援が来るかもしれないし何処か身を隠せる場所に移動しよう。この出っ腹の死骸も連れて。
「おもっ! なんだよコイツ、滅茶苦茶重いぞ……」
まぁ予想はしてたけど移動するだけでも一苦労になった、出っ腹は見た目通りに重かったよ。そして増援は来なかったよ。
取り敢えず一度休んでから出っ腹を解剖する。コイツの情報もなるべく収集しておかないとな。
それで色々調べてみたらやはりシールドの裏側にグレネードランチャーの予備弾倉が6個ずつもあった。
あと肩の上に煙突人間が使ってたサブマシンガンもあったけど、これは肩に固定したまま使うものらしく弾も本体から直接供給できるみたいだ。
肝心のシールドだけど、これ滅茶苦茶硬いわ。
多分これガトリングガンを全弾撃ち尽くしても耐えられるだけの耐久力がある。あの攻防戦で使っていれば凄く役に立っただろうな。
硬いのはシールドだけじゃない、本体の装甲もかなりの耐久力をもっている。相当防御力を特化させているんだな。
その証拠にレーザーCIWSが複数内装されていた。頭や胸部、腹部、膝、背中にも至る所に内装されている。
CIWSは近接防御火器システムだ。つまり防御の為の火器。防御を特化させようとしている意図がひしひしと伝わってくる。
そこまでして何を守ろうとしている?
コイツらは攻防戦の時には現れなかった。ダイを始末する事よりも、ここを離れる訳にはいかない理由があったんだ。何かを守る理由が。
防御特化と言うのは何かを守るために特化されたんだ。その守るべき対象が何かと考えれば……
「……やはり、妨害電波か」
だろな。コイツらはその警備係ってところか。
だとしたら目的は決まった。この出っ腹が現れた通路、その先に向かうだけだ。
ただ、次に出っ腹と戦う時はもっと慎重にならないと。複数で来られたら最悪の事態になる。
だってな、解剖してわかったんだけど出っ腹、腹ん中に爆弾抱えてやがったんだ。
通常兵器の枠組みに収まっているがとんでもない威力の爆弾でな、爆発すればキノコ雲が出来る程のものだと。
このフロアの1つくらい簡単に吹っ飛ばさせる破壊力だ、これはいくらなんでも逃げ切れん。
今回はジャマーを使ったから爆発せずに済んだけど、出っ腹にジャマーを悟られたら終わりだ。奴らは無人機だから自滅覚悟で自爆する事も厭わないだろうし。
何か対策を考える必要があるな。でないと先へ進めないかもしれない。
「取り敢えず食事しながら考えよう」
ってこのタイミングでか?
しかし気付けばもう半日が経っている。空腹も限界に達してきたし、今日は運のいい収穫もあったからそれをいただいて腹ごしらえといくか。
カロリーメイト、チョコレート味。本日の献立はこれ1ブロック、痩せる訳だ……。
それと気付いたんだが、このカロリーメイトは3年も保存が利くロングライフのものだけど、それでも賞味期限はあと2ヶ月くらいしか残ってなかった。
逆算すると2年と10ヶ月、購入はもっと遅いかもだし、大体2年半と想定する。
これを購入した人物は、おそらくその2年半前に忽然と姿を消したんだ。他の従業員共々一緒に。
つまり事件は2年半前、ここで何があったかって事になる。それでも結局は何があったのか分からないんだけど。
外堀は埋まっていってるのに本殿には全然辿り着けていない。なんとももどかしい限りだ。
ダイが手元に持っている資料にしてもそうだ。
[Project MACHINEROID]
おそらくこれも2年半前に計画されたプロジェクトで何らかの関係があるんだろうけど、ダイは英語が分からないから直ぐに閉じた。
そんな小難しい文書を気長に解読する余裕は残されてねぇーんだからな。
何れにしても全部保留だな、仕方ねぇー。
んじゃあそろそろ食事も終わったし、これからどうするか。
まだ出っ腹と乱戦になった時の策はまだ思いついていない。半日が過ぎた現時刻を考えると、そろそろ睡眠を取る事も考えた方がいいかもしれないな。
「いや、休もう。この前はそれで失敗したし」
そうだな、それがいい。
流石に倉庫まで戻るのは手間だから、隔壁のところまで戻ってそこで休もう。隔壁を閉じておけば寝込みを襲われる心配は無いだろうし。
そんな訳でダイは隔壁の外まで戻った。
勿論隔壁はちゃんと締めておく。無人機も開けられない事は無いだろうけど、いざ開けて来たのなら逃げればいいだけだしな。
明日は出っ腹がいた通路の先を進もう。必ず何かある筈だ。おそらくは妨害電波を発信する装置か何かが。
それさえ破壊してしまえば、レーダーもセンサーも回復するし今よりずっと戦い易くなる筈だ。
それにダイとの連絡手段が自由になるのもいい。コイツには、早く真相に辿り着いてもらわないと困るからな。
俺の……いや、俺達の真相にな。
考えてみたらダイはたった5日間で激痩せしたんだよな。まだ余分な脂肪は残ってるけど、これプラントを脱した時になったら骨と皮しか残ってないような事になるんじゃねぇーか? ……頑張れ、ダイ!




