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第25話 マクシミリアン・ダオスロードは何も分からない……絶対嘘だ

ダイ視点

『―――よぉ、ダイ。随分苦労したみたいだな』


「んん……ああ、マックス。おはよう……ってマックス!?」


 三徹明けに目を覚ましたら、いつの間にかまたマックスと通信が繋がっていた。


 前もそうだったけど、どうしてこういつも唐突なんだよ?


『正直、あれはもうダメだと思ってたぜ。あの数は流石に対処できないよな』


 そりゃそうだよ。四本脚だけで何機いたと思ってるんだよ。


 てか普通に覗き見ていたんだな。


 一体何処から見ているんだろう、マックスは。


『だがそれでも諦めずに戦い抜いたのは立派だったぜ。ダイ、お前はもう一端の兵士だ』


「えっと、ありがとう……そもそもマックスは、どこから俺の様子を見ているんだよ?」


 最初はこのプラント内にある監視カメラを使っているのかと思ったけど、どうやらそれも違うみたいだし。


 少なくともここの監視カメラは全て壊したから。


『お前さぁ、それストーカーに何処に盗聴器を仕掛けたんだって聞いてるようなものだぞ』


「……やっぱりマックスはストーカーだったのか?」


『ちげぇーよ! 誰がお前みたいな奴好き好んでストーキングするか。俺が言いたいのは―――』


「分かってるよ。聞いたって教えてくれないんだろ」


『分かってるなら聞くな』


「言いたくもなるさ。マックスは色々知ってる癖にこっちは何も分からずじまいで困ってるって言うのにさ」


『なんだ、弱音か?』


「文句だよ」


 そりゃあ弱音が全く無いとは言わないけども。


『ハハハ、言うようになったじゃねぇーか。だがな、ダイ。あんまり俺を過大評価するなよ、ぶっちゃけ俺だって何も分かってないのが本音だからな』


「……うそぉ」


『いや、本当だ。このプラントが何なのか、何故無人機がそこら中にわんさかいるのか、あとあの怪獣の事についてとかも全く分からない事だらけなんだ』


「だとしてもマックス自身の事はどうなんだよ? 結局マックスは今どこでどうなっていて、どうやって俺の行動を把握している?」


『一人称が“俺”に変わったのは、兵士としてはいい事だと思うぜ』


「誤魔化すな」


『分かってるよ。だが、実際にはそれも分からないと言うのが本音だな』


「それ絶対嘘だ」


『いやいや本当だって。俺は今どこでどうなっているのかは俺自身分かって無いんだ。ダイの行動を把握できている事も俺自身不思議でな、どうして分かるのかが分からない。これが俺の本音だ』


「……つまり、話す気は無いって事だな」


『まるで信用してねぇーんだな』


 それはマックスも一緒だろ。


 結局俺達に信頼関係は築けないんだし。


「じゃあ聞くけど、まさか自分が何者かも分からないとか言うなよ。そんなペラペラ喋る記憶喪失者がいてたまるか」


『本当に言うようになったな。確かに俺自身の事はちゃんと分かる。だがそれはその内分かる事だから、今は聞かなくてもいい』


「なら教えてくれてもいいんじゃないか? その内だろうと今だろうと一緒だろ?」


『時間がない。最初に伝えるべきだったがな、この通信は一時的に繋がっているだけで、小まめに繋がるものじゃないんだ』


「え? そうなのか? それってマックスの方で通信回線に問題があるとか?」


『いいや、問題があるのはダイ、お前側の方だ』


 俺の側? なんで……あ、ここが地下だからか?


『ダイ、お前の歩兵機ってネット回線はおろか、レーダーとかセンサーも役に立たなくなっているだろ。これが使えてれば敵の正確な数も把握出来たし、煙突人間の生き残りにも気付けた筈だ』


「うん……まぁそうなんだけど、地下にいる訳だから使え無くても仕方ないんだけど」


『馬鹿野郎。ネット回線はともかく、レーダーやセンサーが使えないのは地下とは関係ねぇー』


 そうなのか!? ……いや、言われてみたらそうだよな。


 なんで気付かなかった、俺。


『その原因は妨害電波だ、このプラントには強力な妨害電波が流れている。それを止めない限りレーダーもセンサーも使えない、目隠ししたままこのプラントを攻略するような羽目になるぞ』


「ならその妨害電波を止めたら、マックスとの通信も問題なくやりとりできるのか?」


『ああ、間違いなくな』


 そうか、なら絶対に止めよう。


 って、なんだかんだでマックスとの会話が大事だと感じている自分がいる。


 いいのか、それで。


『んで、今回のアドバイスだ。その妨害電波だがまず間違いなく地下7階の何処かにある』


「前と違って随分具体的なアドバイスだな」


『どっちも大事な事に変わりないだろ。だからな、ダイ。地下7階へ行って(くだん)の妨害電波を止めてこい』


「それは勿論だけど、なんで何も分からない筈のマックスが、地下7階にあるって事が分かるんだよ?」


『俺はお前の行動を把握しているからな。攻防戦の前、地下7階の隔壁を開けたろ? 四本脚がぞろぞろと押し寄せて来やがったが、その時に分かったんだ。その妨害電波はこの階層から発生してるってな』


「その根拠は?」


『根拠は、勘だ』


 ―――ブツ


「え、ちょ、ちょっとマックス? マックス!? おぉー――――い!! ……切れたよ」


 それを最後にマックスとの通信は終わった。


 しかも最後は勘って、他人事だと思っていい加減な事ばかり言って。


 でも、多分妨害電波は本当にあるんだろうな。


 あのしたたかな男がいい加減な事を言う筈がない、いい加減を装って真実を隠しているんだ。


 真実、妨害電波が地下7階から発生している根拠。それはマックスが隠しておきたい何かに繋がっている事実なんだ。


 そこまでして隠し通したい事実って何なんだ。マックスは(いず)れ分かるみたいな事を言ってたけど、何れ分かる事を何故今は隠す?


 結局分からないのは俺だけって事か。


 仮にマックスの言うように、何も分かっていないとしたら……どう考えても有り得ない気がする。


 そもそも俺の行動を常に把握してる奴が、何も分からない筈が無いんだ。何かしらの手段で覗き見ている訳だし。


 この攻防戦の事も、ずっと見ていたようだ。最後の煙突人間の生き残りの(くだり)まで余す所無く知っていたし。


 …………


 ………………


 ……………………ゾクッ!


 ちょっと待て、おかしくないか?


 煙突人間、マックスは確かにそう言っていた。煙突人間と。


 他にも怪獣とか、そもそも前の通信では眼帯野郎ともはっきり言っていた。


 おかしくないか?


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 少なくとも俺は口に出してなかった筈だ。何故マックスはその呼び名を知っていた?


 偶然の一致……な訳が無い。そんなの出来過ぎている。


 あの美人さんは眼帯野郎の事をオッドアイと呼んでいた。ちゃんとコードネームみたいなのがあるんだ。


 なのにマックスはコードネームではなく俺が勝手に付けた呼び名を知って、当たり前のようにその呼び名で呼んでいた。


 何故その呼び名を知っている?


 何故その呼び名で呼ぶ?


 まるで俺自身の思考に合わせているかのように。


 思考。頭の中。それに合わせてる?


 まさかマックスは、俺の頭の中を見ている?


 マックスは……俺の頭の中に、いる?


 ……まさかな。


 流石にそれは現実離れし過ぎな気がするけど、でも一度そう考えてしまうとそうとしか思えなくなっている。


 しかし現実的にそれは有り得ない筈だ。そんなの幽霊でもないと無理だろうし、これじゃあ考えが矛盾してまとまらない。


 結局結論は出せずに保留とするしかなかったけど、だがやはりマックスの事は警戒しておくべきだ。


 今ので確信した、マックスはただならない危険な人物だ。気を許したら取り返しのつかない事になる。


 まぁそれでも、今はマックスの言う通りにするしか無いよな。


 地下7階へ行って、噂の妨害電波を止める。それはやらないといけないだろう。


 さて、装備も整えたし、ジャマーブラストも使えるようになったし、いざと言う時の拠点も確保した。


 そろそろ出発しよう。どの道急がないといけないしな。


 だって……食料があと4食分しか無い。


 攻防戦の際に少し多めに食べてしまったからなぁ、あと4日で何とかなるかな?


 本当は地下4階まで行きたいところだけどマックスに言われた手前、妨害電波を止めない訳にはいかない。


 それにレーダーとかが回復したならより動き易くなるだろうし、その分早く上へ行ける筈だ。


 そんな訳で俺は倉庫を出た。なるべく周囲を警戒しながら、だけど。


 途中落盤で塞いだ筈の通路にも差し掛かったけど、四本脚が撤去したのか通路は綺麗に確保されていた。


 それだけは四本脚に感謝かな? ……いや、そもそもは全部四本脚のせいだ。感謝なんぞしてたまるか。


 それから程なくして上に続くトンネル状の通路に出た。


 思えばこの先の隔壁を不用心に開けたところからあの攻防戦が始まったんだよなぁ。


 あぁ、俺の馬鹿野郎。


 いかん、マックスの口癖が移りつつある。


 まぁいいや。それよりも遂に地下7階に着いた。


 前来た時は直ぐ四本脚に襲われたけど、この地下7階は地下8階と違ってちゃんと整備された施設のようだ。


 最初に入ったフロアだけ見ても機材とかがしっかり設置されているし、何よりここには人がいた形跡ある。


 人がここにいて作業をしてる途中で急にいなくなって、それから長い間そのままにされていたかのような、そんな形跡が。


 一体このプラントで何が起こったのか、そして俺は何故ここに連れて来られたのか。結局分からない事だらけなんだよな。


 全ての鍵はマックスだ。


 マクシミリアン・ダオスロード。


 あいつが何を知っていようなかろうと、間違いなくこの事件の中心にはマックスがいる。それだけは間違いない。


 さて、推察はこの辺にして調査を再開しよう。幸いこのフロアには例のガラス地図もあったから、写真に記録してそれを頼りに移動する。


 地図を見た限りだと妨害電波のある場所はこのフロアではなさそうかな?


 ……いや、そうとは限らないか。


 地図はここにいた筈の人が作ったもの。でも妨害電波は後から無人機が発生させたもの。


 なら妨害電波を発信する場所は地図に載っていない。となれば一つ一つ網羅して調べて行くしかないな。


 出来れば上に続くトンネル状の通路を発見する前に見つけたいところだけど、そう都合よくはいかないよな。


 ただ、都合のいい事は1つあった。無人機がいないんだ、このフロアには。


 新しいフロアにも来て見たけど、どうやらもう無人機はいないらしい。


 ……そりゃそうだよ。


 あの攻防戦でとんでもない数の無人機が押し寄せて来たんだ。多分この階層全ての無人機があの攻防戦で撃破されたと考えるべきだろう。


 まぁだからと言って警戒は怠らないけど。そんな事したらまた足元をすくわれるパターンだし。


 しかしどこを探しても無人機はいないし、人もいない。人がいた形跡だけはちゃんとあるのに。


 ここには間違いなく人がいた、それだけは確かだ。もしかしたらマックスもその中の1人だったのかもしれないな。


 だとしたら他の人達もマックスと同様に身動きがとれない状態にいるのかも。


 もしそうなら早く助けないと……まぁ俺に出来るかどうかは分からないけどな。


 そんな事を考えながら散策していると、俺は奇跡の一品を見つけ出した。


「あ、あれは……」


 そこで俺が目にした物は、人が作業していたと思わしき机の隅に散らばっていたいくつかの品々。


 その中の黄色い箱に入った銀の包み。それはまさしく―――


「カロリィィィィィメイトォ!!」


 俺は警戒するのも忘れて直ぐさまイングリッドから降りると、そのカロリーメイトに飛び付いた。


 チョコレート味の、まだ封の開いてないカロリーメイトが一袋見つかった。多分この机で作業していた人の食べ残しだろう。


 ロングライフだから賞味期限は3年ある筈……やったぁー! まだ2ヶ月ちょっと残ってる。


 貴重な食料をまさかのゲット。これ一袋あればもう2日保つ。なんせ一袋に2つも入ってるんだからな。


「ああ、嬉しい。これマジで超嬉しい……ん?」


 ふと、同じ机に紙束の資料が置かれていた。


 なんとなく気になって手に取ってみると、そこには[Project MACHINEROID]と書かれていた。


「ぷろじ……プロジェクトか。ま……まちんろ……なんて読むんだ、コレ」


 英語なんて碌に読み書きもできないからサッパリだ。


 開いて見ても内容は全部英語だから何にも分からない。もうちょっと英語の勉強しておけばよかった。


 でもプロジェクトって書いてあるくらいだし、よくよく見れば他の机にも同じ資料が置いてある。


 おそらくこのプラントで行われていた何かしらのプロジェクトなんだろう。まぁ、だから何なんだって話だけど。


 ……待てよ。ここにいた筈の人々が突然失踪した原因にこのプロジェクトが何かしら関わっているとしたら……有り得なくも無いんじゃないか?


 少なくともここにいた人々は無人機に襲われた訳ではなさそう。なら無人機が現れるまでの間に何があったのか、それがこのプロジェクトに関わっている可能性はあるんじゃないだろうか?


 なら、これを解読すればいなくなった人達の事が何か分かるかも……でも後回しにしよう。


 食料も少ないし、今は地下4階を目指す事だけ考えよう。


 取り敢えず資料は回収して……あれ?


 なんか今、足音のようなものが聞こえなかったか?


 なんか……ヤバい!?


 直ぐにイングリッドに戻って周囲を探る。足音が聞こえてきたのは右側の通路からだ。


 あっちはまた未開地だから何があるのかは分からない。でも足音らしいのが聞こえてきたのなら何かいるんだろう。


 なので俺はイングリッドの身を隠して小型カメラロボットのゲッコーを射出した。こいつでまずは探りを入れてみる。


 ヤモリのような姿をしたゲッコーは壁や天井にも貼り付ける。俺はゲッコーを通路の天井隅に張り付かせて進ませた。


 先を進んだところで曲がり角に行き当たる。だがこの角を曲がった先に何かいるかもしれない。


 まずは慎重に首を伸ばしてカメラの頭だけを角から出して覗き見る。そして見てしまった。


 その時、俺がゲッコーのカメラ越しに見たもの。それは―――

断じて俺はストーカーではないんだけどな、でもやってる事を客観的に見たらどうしたってストーカーだよな……orz


 ―――by,MAX

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