第22話 絶体絶命の攻防戦、そう言えば新兵器持ちがいたのを忘れてたなぁ
システム補助、エラー中
これ、軽く考えてもらっちゃ困るぜ。
システム補助が突然使えなくなるってさぁ、命綱を付けて綱渡りしてたら突然命綱が切れたようなもんだからな。
そうなったらどうする? ゾッとするだろ。
もうさぁ、そんな事になったらさぁ、前だけ見て突っ切るしかねぇーじゃん!!
「でりゃぁー!」
今のダイみたいにさぁ!
頭無しをほぼ全滅しても未だシステム補助は復旧しないダイは、システム補助無しでも必死に戦っているんだぜ。
秘密兵器の弾帯玉手榴弾を駆使してな。
「でりゃぁー! でりゃぁー! でりゃぁー!」
しかし戦果は散々だった。
豪速球を目的としたせいで弾帯玉手榴弾は碌なところに行かない。しかも大した豪速球でもないから当たる前に迎撃される。
まぁ、分かってたけどさぁ。システム補助無しで、碌に投球フォームも知らない不器用なダイが、そんな豪速球を編み出せる訳がなかったんだ。
分かってはいたけど、何も言えない俺にダイは止められないから期待するしかなかったんよ。はぁ……。
「でりゃぁー! ……あ、これ片手で投げた方が投げ易いや」
当たり前だ、馬鹿野郎!
今まで敢えて指摘しなかったけどな、こいつさっきからサッカーのスローインみたいに両手で投げていたんだ。
まぁ弾帯玉手榴弾はイングリッドから見てバランスボールくらいの大きさがあるから片手で投げ難いのは分かるんだけどな。
だが豪速球を叩き出すには片手で投げるしかない。両手投げで豪速球が出る筈ねぇーよ。
メジャーリーグに両手で投げるピッチャーはいねぇーだろ。
「でりゃぁー! ……あ、ちょっと速くなった?」
ああ、今のは目に見えて速くなっていた。迎撃されない程の豪速球では無いし、四本脚のいないところに行ったけどな。
ついでに言うと四本脚もガトリングガンは撃ち続けている。弾帯玉手榴弾は殆ど明後日の方向ばりだから撃ち放題だ。
ダイは死骸脚に隠れて投げ続けているが、それも死骸脚が無くなれば終わりだ。そして死骸脚の残機は―――
「くそっ、乗り換えだ!」
盾にしていた死骸脚がやられた。これで残機は1、遂に追い詰められた。
ダイは乗り換える為に別の死骸脚へ駆け抜けた。その際に弾帯玉手榴弾をもう1球、直線コースで投げてやった。
直線コースと言ってもまんま直線じゃない、そんな事したらガトリングガンの射線上に入って即座に迎撃されるからな。
故に若干上に向け僅かに放物線を描くように投げるしかない。そして今度はいいポジションに投げられた、四本脚群衆のほぼど真ん中だ。
豪速球とはいかなくともほぼ直線コースの勢い重視な投球は、それなりに四本脚へ接近してから迎撃され爆破した。
それによって数機の四本脚を巻き込み、撃破するに到る。それだけじゃない、爆発の余波で殆どの四本脚が動きを止めた。
ダイはこの隙を待ってましたと言わんばかりに―――
「待ってました!」
……本当に言いやがったよ、こいつ。
まぁその隙を逃さずに、最後の死骸脚に乗り換えてガトリングガンで一気に殲滅した。
70機(また増えた)もいた四本脚が一気に50機くらいまで減った。やりぃ。
「よし、この調子でもっと……ん?」
ん、って何だ、ダイ……ん?
……んんっ!?
なんか、いる!?
四本脚の数が一気に減って見えるようになった、初めて見る歩兵機がそこにはいた。
そいつは頭無しとも四本脚とも違う全く別の機種だが、一目で無人機だと分かる奴だった。
何故ならそいつはお世辞にも人型とは言えない異形の歩兵機だったからな。
何と言うかそれは、煙突だ。煙突に腕と脚を生やしたような、そんなずさんでちょっとユニークな歩兵機だった。
呼び名は……煙突人間、と言ったところか。
その煙突人間が50機くらいいる四本脚群衆の中にちらほらと。全部合わせても20機もいないだろう、15機くらいの数だ。まぁまだ増えるかもだけど。
問題はこの局面で何故に煙突人間が現れたのかだ。
第1ラウンドは元より、第2ラウンドが始まってからも煙突人間の姿を見ていなかった。
単に四本脚が多過ぎて分からなかったんじゃない、それまでは間違いなくいなかったんだ。おそらく倉庫の外で待機していたからだろうが。
それがなんで今になって出てきた? このタイミングで出てきた目的はなんだ?
そもそも現状は四本脚だけでも十分な戦力だ。にも関わらずわざわざ戦力を増強する必要があるのか? まぁ頭無しを投入してるから、あると言えばあるんだろうけど。
そして煙突人間も動き出した。
四つん這いの体勢なってその煙突状の筒の穴をダイに向けてきた。
するとその穴の中で空間が歪み、青紫色の光が揺らめく炎のように灯る……って、ちょっと待て!
それってまさか―――
「は、波動砲!?」
直後、楕円球状の圧縮された空間の波動弾が飛んで来た。しかもデカい、怪獣の波動弾と同じサイズだ!
その波動弾が同時に3つも飛んで来よった。死ねってか? ……そりゃそうか、奴ら殺すつもりでいるんだしな。
「うぎゃあああああ!」
ダイは跳躍して回避した。しかし波動弾によって足場のコンテナが2段分無くなったし、死骸脚も一瞬で吹っ飛ばされた。
おまけに跳躍中も四本脚がやたらめったら撃ってくるし、とにかく無事な足場に着地して逃げるしか……って、また撃って来よったぁー!?
怪獣並みの威力だけでなく連射性まで持ってる? いや、違う。これは別の煙突人間による波動砲だ。
こいつら入れ替わり立ち代わりで持続的に波動砲を撃って来やがる。数の暴力を存分に活かして来がったか。
次の波動弾も寸前で回避したが、システム補助がない状態ではそう何度も着地は成功しない。今度は足を滑らして落ちた。
「うわっ!」
だが逆にそれが良かった。ダイが落ちた先はコンテナと頭無しの残骸の山、身を隠すには丁度よかった。
「はぁ……はぁ……危なかった」
まったくだな。
まさかこの局面で波動砲を使ってくる奴が出て来るとか、最悪以外の何物でもないぞ。
スキャニングする余裕は無かったが、おそらく煙突人間もスキャニングは出来ないだろうな。
煙突人間の主力は波動砲、これを駆使して遠距離から砲撃する戦法で間違いない。
見た感じでは鈍重そうで四本脚ほど軽快には動けないようだ。その上シールドの類いは持ってないからこっちから撃ってば十分対処できるだろう。
だから壁役に四本脚がいるんだろうがな。先に四本脚をなんとかする事は変わらないって訳だ。
あの波動砲も驚異的だ。怪獣並みの威力で1発がコンテナの足場を2段分も吹っ飛ばす。あのまま高台に陣取ってたらやられていたな。
連射性は無さそうだが、交代交代で撃たれると連射してるようなものだ。それを3発同時撃ちとか、怪獣よりタチが悪いぞ。
煙突人間はおよそ15機くらい、大目に見て18機いると仮定すれば、あの波動砲3発同時撃ちは6回までって事になる。
だがその6回の間に1発目の奴がまた撃てるようになったら……無限連射になる。無理ゲーだろ、こんなの。
考えてみれば第2ラウンドの時に簡易バリケードを吹っ飛ばした新兵器があった事をすっかり忘れていた。その新兵器が波動砲だとすれば納得物だしな。
……待てよ? 簡易バリケードを吹っ飛ばしたって事は―――
「うぎゃあああああ!!」
この残骸の山も簡単に吹っ飛されるわな。
残骸の山ごと吹き飛ばされて床に叩きつけれたダイだが、それでも直ぐに散らばったコンテナの1つに身を隠した。
だって四本脚が容赦なく撃ってくるんだし。
だが隠れてもヤバい事に変わりない。このコンテナでは波動砲に耐えられない。コンテナから出れば蜂の巣にされる。
ダメだ、これ詰んだ。
「っ!?」
僅かな空間の歪みを、ダイは五感で察する事が出来た。散々怪獣に撃たれたせいか、不思議と分かるようになったんだ。
つまり、波動砲が来る。
「うわぁあああああ!!」
ダイは意を決して猛ダッシュ、別のコンテナに隠れようとした。ガトリングガンに撃たれて、波動砲まで飛んで来たけど。
「あああああ!!」
しかし猛ダッシュしたお陰で波動砲はなんとか躱せた。その余波で飛ばされて床に叩きつけられてしまったけどな。
そして何故かガトリングガンも止んだんだ。
「えっ!?」
何故ガトリングガンが止んだのか、目で見れば一目瞭然だった。
ガトリングガンを撃っていた四本脚が殲滅されたからだ。煙突人間の波動砲によってな。
ダイは今まで高台で戦っていた。だから四本脚にしてみれば味方の銃撃にやられるFFが起こる事は無かったんだ。
しかし下に降りれば話は別、ましてや波動砲とか使われたらたまったもんじゃない。
おそらく最初は四本脚も射線上を避けていたんだろうが、ダイが急にコンテナから出てきたせいで狙いが変わった。勿論射線上もな。
四本脚はそれに巻き込まれたってところか。それも3発同時撃ちだ、巻き込まれただけで1、20機くらい殲滅されたぞ。
やはり恐るべし波動砲。
だが四本脚はまだ40機以上いる……また増えたな。
無事だった四本脚は波動砲の余波で怯んでいたようだが、それも直ぐに立て直してる。その前になんとか別のコンテナに隠れる事に成功した。思わぬ土産付きでな。
弾帯玉手榴弾だ。波動砲で破壊された高台の中にあったやつが1つ転がってたんでな、拾っておいた。
さっきは詰んだと思ってたが、波動砲のFFを利用すれば勝機はあるかもしれない。
さっきみたいに突発的な行動で照準を狂わせて波動砲を撃たせればいいだけ、それで四本脚を大幅に殲滅出来るしガトリングガンも止む。
そこを突いて弾帯玉手榴弾を投げ込めば豪速球でなくても当たるだろう。それで四本脚を全滅に追い込める筈だ。
煙突人間だけならダイの実力でもなんとかなるかもしれない。奴らは波動砲しか能が無いようだからな。
「よし、次で終わりに―――」
だが、結局そう甘くはなかった。
隠れていたコンテナの両サイドから四本脚が出てきたからだよ。
まさかの接近戦だ。四本脚はガトリングガンを乱射しながら接近して、直接ダイを殺しに来やがった。
「うわぁあああああ!」
ダイは直ぐに逃げ出したが、殆ど逃げ場なんてない。
猛ダッシュでガトリングガンの弾から逃げるがそれも何発かは当たる。外装がアウトになる前に他のコンテナに隠れないと。
そして割とコンテナが密集したところを目に付けて一目散に猛ダッシュ、コンテナの影に飛び込んだ。
その瞬間、波動砲を撃たれたけどな。
「ええっ!?」
まるでダイがそこに飛び込む事を予測していたかのようなベストタイミングの砲撃だった。まぁ、実際予測したんだろうけどな。
今までのダイの行動を見ていりゃあ簡単に予測は出来るもんな。こいつ単純だから。
これはやられたか?
「フックランチャー!」
ダイは奥の壁に両腕のフックランチャーを撃ち込み、コンテナに飛び込む軌道から壁に飛び移る軌道に変えた。
それによって3発の波動弾をギリギリ回避できたんだ。そう言えばこいつ追い詰められると凄い事するんだったな。
だが壁に張り付いていたら格好の的だ。ダイはフックランチャーをパージして直ぐに身を隠そうなコンテナを探し出し、そこに飛び移る。
だが飛び出した時ダイは見てしまった。煙突人間が波動砲を向けているのを。
このままコンテナに飛び移れば、放たれた波動弾にやられる。フックランチャーはもう使えない、パージしてしまった。しかも両方とも。
だってフックを抜くのも巻き戻すのも手間なんだぞ。一分一秒を争うのにそんな手間かけられねぇーよ。
残された手段は、大事に抱えておいた弾帯玉手榴弾。これを使うしかない。
狙いは波動砲を構える煙突人間、その3機のうちの真ん中にいる奴。
距離はかなりある。僅かに狙いがズレたらその誤差は大きくなるだろう。
しかも煙突人間は既に筒の中で波動弾を形成している。今から投げてもダイの最速球で間に合うかどうかだ。
勿論システム補助だって無い。だが、やるしかない。
「やってやる!」
やれ、ダイ!
四本脚がガトリングガンを乱射する中、ダイは空中で全身のバネを使い、煙突人間目掛けて弾帯玉手榴弾を投げた。
「でりゃぁー!!」
全身全霊で弾帯玉手榴弾を投げたが、しかしそれに合わせるように煙突人間も直ぐに波動砲を放ってきた。
その時にはもう、弾帯玉手榴弾は煙突人間の筒に当たったけどな。
―――ズドシャァァァァァン!!
まさかの豪速球だった。ダイはまぐれにも豪速球の球を投げられたんだ。
放たれた波動弾は弾帯玉手榴弾の爆撃で霧散し、凄まじい爆発力に飲まれていった。
その結果、煙突人間を含む周囲10m圏内の歩兵機が殲滅された。
まぁ当然だろうな。飛んで来た破片やら弾丸やらがダイのイングリッドにまで当たって装甲が剥げたんだから。
だが、それは四本脚も同じ。弾帯玉手榴弾の爆撃に防御も間に合わず、かなりの数が巻き込まれて大破した。
他にも破損したり怯んだりして全ての四本脚がガトリングガンを止めていた。
着地したダイは身を隠す前にライフルを抜き、出来る限り四本脚を殲滅していく。ここはやれる時にやるべきだ、当然だろ。
「一丁じゃ足りない、もう一丁!」
大破した四本脚の1機からライフルを奪い取ると、両手に構えて撃ちまくった。
特に煙突人間はな。ここで撃破できるなら波動砲をまた撃たれる前に殲滅しておきたい。
四本脚も立て直しつつある。その前に出来る限り、出来る限り殲滅する。
豪速球の弾帯玉手榴弾が成功して一気に形成逆転したかのように見えたが、実際はまだ多勢に無勢。四本脚が立て直せば、また追い詰められられるだけだ。
煙突人間も全滅は出来ない。この隙に撃破出来た数も数機程度のもの。まだ半分くらい残っている。四本脚が立て直したらそれも滞るだろう。
それに四本脚も際限なく増えてくる。この瞬間に大量撃破を成してもまた増えて来たら元の木阿弥だ。決して逆転出来た訳じゃないんだよ。
それにダイはまだ気付いていない。奴らは四方八方だけでなく、既に真上にも来てるって事にな。
煙突人間の体格は四本脚よりも一回り小さいんだが、頭の上まで煙突状に伸びた筒があるから全高だけだと四本脚よりもずっと高いんだ。だから四本脚がいくら集団で群れていても一発で分かるもんなんだけどな。




