第20話 絶体絶命の攻防戦、第2ラウンド速攻で詰んだ!?
システム補助79%
―――ズドォーン!!
コンテナを崩しただけの簡易バリケードは意外と持ち堪えた。お陰で下準備はほぼ終わっている。
今度も高台からの奇襲作戦に徹する事にした、これなら四本脚の防御を掻い潜って直撃させられるからな。
ただし今度は出入口付近の側面からじゃない、最奥部の正面からだ。
正直増援がどれ程やって来るか分からないからな。ある程度通路の奥の方まで見えるようにしておきたかったし、正面ならこちらの流れ弾で思わぬ撃墜と言う事もあり得るだろう。
そして今度の高台はなんと動ける。前は防壁とか作ったせいで立っているのがやっとだったけど、今回は左右に動けるように足場を横に伸ばしたんだ。
高台は階段状に9段分を積み上げた。高台を作るなら9段のコンテナを積み上げればいいだけなんだが、敢えて階段状に積み上げたのは理由があった。
高台の上に機能停止した四本脚を持ち上げる為だ。この四本脚の死骸は色々と役に立ちそうだから有効利用する事にしてな。
まずガトリングガン。これって手で持っているだけじゃなくて四本脚のマッチョ腕にも固定されるから、そのままグリップだけイングリッドに持たせて撃てば負荷がかからないんだ。
何という裏技、何度も試し撃ちしたから腕が外れる心配はまず無い。これでここぞと言う時に外れたの悲劇は起こらないだろう。
更にシールド。デカいままだと使い難いが防御範囲は広いから耐久力も上がる。
これを持たせて防御体制にさせればダイはシールドと四本脚の死骸を壁にしてガトリングガンを撃ち放題って訳さ。
その四本脚の死骸からなるべく無傷に近いものを選んで高台に乗るだけ乗せた。ある程度やられる事を見越して使い捨てにする事を計算したからだ。
言うなればこれは砲台だ。
この四本脚の死骸によって出来た砲台が第2ラウンドの要、ガトリングガン1つでもそれなりの殲滅力があったんだ。60機くらいで押し寄せて来ても大丈夫だろう。多分だけど……。
さぁーて、いよいよ後は四本脚を待ち構えるのみ―――
―――ドガシャアアアアアン!!
「っ!?」
っ!?
な、なんだ!?
簡易バリケードがいきなり1発で吹っ飛んだぞ?
そろそろ破られるかとは思ってたけど、それでも吹っ飛ぶのはおかしい。今までのズドォーンって音で吹っ飛ぶのはおかしい。
てか音が違う。明らかに手榴弾とは違う、何か別のものだ。
まさか奴ら、ここに来て新兵器とか出して来やがったか?
「……いっ!?」
しかし現れて来たのは見慣れた奴らだった。
四本脚。4つの脚と筋骨隆々なマッチョ腕に犬のような頭の無人機、それが出入口の前で密集している。
正確な数は分からないが、60機は悠にいるだろうな。ここは一応予想通りか。
意外だったのは四本脚と一緒に、頭無しもいた事だ。
頭無し。イングリッドよりも一回り小さく、標準な人型であるにも関わらず意図的に頭だけが無い無人機。
思わぬ増援だったが、しかし頭無しはそれほど脅威では無い。
所詮こいつらは巡回係だ。階層を巡回して異常があれば四本脚に知らせるだけ、武器と呼べる武器も手の爪くらいのもの。
新しい武器を装備してる様子も無いし、せいぜい四本脚の盾になる事しか役に立たないだろう。なんでこんな奴を連れて来た?
そしてもう1つの疑問がさっきの新兵器だ。
パッと見で四本脚がそれらしい武器を装備してる様子はない、お馴染みのガトリングガンとシールドだ。
背中にキャノン砲とかロケットランチャーとかの類いは見受けられない。数が多いせいで確かな事は言えないけど。
なら頭無しが新兵器を搭載してる? ……無いな。あの水陸両用みたいなシルエットにそんな危ない物を搭載してるとはどうしても思えん。
じゃあやっぱり四本脚か? 視界に入ってないだけで奴らの中に新兵器を搭載した特殊な機体があるのか、或いは見た目からは分からないだけで既に目の前にいるのか?
「……き、来た!」
四本脚と頭無しは倉庫内へドドドっと入ってきた。四本脚は後続の為になるべく前へ出て銃撃しようとしている。おそらくコンテナの前で止まるだろう。
それに対して頭無しは飛び道具が無い。コンテナを登って接近戦に出てくるに違いないだろう。と言っても小柄な頭無しではコンテナを登るのも一苦労の筈、暫くは放っておいていいな。
取り敢えず新兵器の事は一旦保留にしよう。だったらまずは……
「まずは四本脚からだ!」
ダイはガトリングガンを発射。少し遅れて四本脚も一斉発射する。
ダイは大型のシールドと、それを持たせている四本脚で防御。コンテナを使った防壁よりもよく防いでくれるのは有り難かった。
それに対して四本脚はシールドで防御するも、跳弾によってシールドの下を掻い潜って本体に当たる。
距離が開いたせいで射角が緩やかになり跳弾が脚にしか当たらなくなったが、脚を破壊すればへたり込む。へたり込めば胴体にも当たる。
手間は増えたがやることは変わらない、殲滅あるのみだ。
手間と言えばもう1つ、頭無しが高台の1段目に差し掛かったんだけどな。こいつらフックランチャーとか使うのかと思ったら仲間を踏み台にして登ってきやがった。
組体操かよ……。
なんだか可愛く見えてきたぞ。小学生の運動会みたいで。
だが頭無しの行動は予想よりも早い。このままだと直ぐに9段目まで登って来るかもしれないな。
なので迎撃しよう。
「でりゃあー!」
ダイはガトリングガンを撃ち続けながら四本脚の死骸の後ろに隠れたままライフルを左手に取った。
防御手段を持たない頭無しは防ぐ手立てがない、ライフルだけでも十分な殲滅力だ。
しかしこの体勢は……ダサい。
四本脚の死骸の背中に隠れたまま右手でガトリングガンを撃ち、左手でライフルを撃つ。これ客観的に見たら二人羽織でしかないな。
それはもうこの際仕方ない。今は徹底的に殲滅して殲滅して、この有象無象を殲滅し尽くすのみだ。
フフフ……有象無象か。ついこの間まで1機でも勝てるかどうかの相手だったにも関わらず、今じゃ1機また1機と次々に殲滅し得るまでに到った。
本当に成長したもんだぜ、ダイ。
でもさぁ……そもそもさぁ……こいつら、数が減らなくない?
結構な数を撃破したとは思うんだけど60機は悠にいた四本脚が全然減ってないし、それどころかまたぞろと倉庫内に入ってくるし、まるで終わりが見えないんだど……。
「うぎゃっ! し、死骸脚がやられた!?」
死骸脚? ……ああ、盾にしてる四本脚の死骸の事か。
そりゃあこの数で集中砲火を食らったらな、いくらシールド越しだったとしてそう長くはもたないだろう。
その死骸脚は見るも無残な姿に変わり果てている。集中砲火も何発か貫通してイングリッドに当たるし、このままじゃヤバい。
ダイは直ぐに別の死骸脚の背中に飛び込んだ。この事態を想定して高台に置けるだけ置いたからな。
名付けて寄生虫作戦、宿主をとっかえひっかえしまくりだーい! ……でもこれ一人でやると孤独感が3倍増しになるんだよなぁ。
だぁーもうさっきから脱線しまくりだ! 集中集中!!
「行くぞ、死骸脚2号」
おう! どうでもいいけど死骸脚って呼び方は止めないか? 生々しく思えてきて、ちと怖いんだが……。
四本脚は再び殲滅するも数が一向に減らず、寧ろ増えているかのような錯覚(多分錯覚じゃない)を起こすが、こればかりは根気のいる勝負だからな。手間が増えた事がかなり恨めしくなってきたぜ。
しかし頭無しの方は終わりが見えた。こいつもちょいちょい四本脚に紛れて増援がやってきていたが、それももう終わったようだ。
全部で40機前後ってところか。高台の1段目で撃破しまくっているし、このままなら9段目に到らず全滅させられそうだ。結局然程の役にも立たなかったな。
さて、四本脚の数も問題だが一番の問題はやはり新兵器持ちか。
未だ姿が見えない謎の新兵器持ち。四本脚のどれかが持っているのかとも考えたが、冷静に考えるとそんなの持ってたら直ぐに使ってきそうなものだ。
それが未だに使われてこないところを見ると四本脚では無いのか。
いや、そもそも無人機どもは何故新兵器をばんばん使ってこない? 何か使えない理由でもあるのか?
例えば……一回限りの使い捨て兵器とか?
ならもう使ってこないだろうけど、そんな都合のいい訳が無い。十中八九また使ってくるに違いないとダイの頭の中でアラームが鳴っている。
何故か使ってこない新兵器、それを誰が持っているかも分からない現状。
まさに一寸先は闇だ。ただでさえ必死の状況なのに目に見えない脅威が迫っていると思うと不安でたまらないな。
頭無しも2段目に上がって来た。気を抜けばこいつらも一気にダイのところまで上がってくるかもしれない。警戒しておかないとヤバいかも。
と思ってたら、漸く2段目に上がった頭無しの様子がおかしい。
「な、なんだ?」
なんか胸部の装甲が開いて中から目玉のようなレンズが1つ、露出した。何かくる?
まさかとは思うが、頭無しが新兵器を持っていた? 今まで使わなかったのは……射程圏外だから!?
コンテナを登ってたのは接近戦に持ち込む為じゃない、射程圏内に入る為か!?
「ヤバッ!?」
嫌な予感がしてライフルで頭無しを銃撃するも、テンパったせいか当たらない。マジかよ、こんな時に……。
「うわぁああああああ!」
止むを得ずダイはガトリングガンも使って頭無しを銃撃する。四本脚の一斉射撃が強烈だからあまりガトリングガンの狙いを外したくなかったんだが背に腹はかえられない。
ところが余程焦ってしまったのか、ガトリングガンとライフルの両方で狙っても全然当たらなかった。ダイ、少し落ち着け。
それで漸く当たって頭無しは撃破できた。怪しいモーションをした割に新兵器を使う様子も無いままな。
新兵器を使われる前に撃破できたのか、単に勘違いだったのか、何れにしても余計な間を取らされたせいで死骸脚2号が随分疲弊した。このままじゃダイが蜂の巣だ。
死骸脚2号を捨てて死骸脚3号に移る。だがその途中ふと下を見たら―――新たな頭無しが2段目に上がってきて、また胸部の目玉を露出していた。
それも1機じゃない。5、6機程もいるし。
「だぁー!!」
ダイは急いで死骸脚3号に飛び移ると、ガトリングガンとライフルを構えて頭無しを銃撃した。
本来ならシールドの無い頭無しくらい簡単に殲滅出来る筈なんだが、何故かこいつら全然当たらない。弾が情けないくらいにぶれぶれで当たらないんよ。
おかしい……流石にこれはおかしい。
焦っているのは分かるけど、それでもこんなに当たらないのはどう考えてもおかしい。
そもそも今までこんな事はなかっただろ? イングリッドにはロックオン機能も備わっているし、システム補助によって矯正されるから下手な鉄砲も歩兵機ありゃ当たる筈なんだ。
なのにこの惨状はどういう事だ? いくら焦ってたからってこれは流石におかしいだろ。
そしてもう一つ、四本脚は勿論だが頭無しの方も弾が当たらないせいで撃破が滞っている。なのに5、6機程いる頭無しなんだが、どいつも新兵器らしいものを使う様子は無く普通にコンテナを登ろうとしている。
どうやら胸部の目玉を露出したのは新兵器を使う為じゃなさそうだが、じゃあ何なのかが分からない。無意味な事でないのは確かだが、何かされる前に撃破しておかないとヤバいと思う。
なのに弾が当たらない。ここぞという時に限ってどうしてこうなるんだよ……。
「……待てよ」
……待てよ。
考えてみたら頭無しの目玉が露出してからおかしなくらいに当たらなくなったんだよな。
偶然、では無いよな。どう考えても偶然にしては出来過ぎてるし。
まさか……まさかまさかまさかのまさかか!?
「し、システム補助が……エラーになってる!?」
なんてこったぁあああああ!!
頭無しの目玉は歩兵機の機能障害を起こす妨害電波発信装置、つまりジャマーだったのかぁ!
くそっ! ダイは未だしも俺まで気付かなかったとは迂闊過ぎる。まさか別の新兵器が出てくるとはな。
まさか頭無しが、電子戦に対応した歩兵機だったとは……道理で武装が少ない訳だ。電子機器を充実させていたんだから。
マズい……これはマズいぞ。
システム補助だけじゃない、ロックオン機能とかも使えなくなっている。これじゃあ当たらない訳だ。
つまりダイの腕だけで当てろってか。素人に毛も生えてない程度のダイにやれってか? いや死ねってか!?
ポンコツさんの事を覚えてるか? 自分の脚に引っかかってこける一週回って新鮮なドジっ娘のポンコツさん。
彼女が歩兵機を操縦したら中々見ていられない惨状だったが、システム補助が無くなったダイはポンコツさんよりも酷い有り様になるぞ。
そんな奴に高台を登ってくる頭無し約40機と一斉射撃を続けてくる四本脚約60……いや約80機+αと戦えるか? てか、また増えてるし!
いやいやいや、これ死んだ。間違いなく死んだわ……。
勝てる気がしねぇーぞ……。
いくらなんでも運悪過ぎじゃね……もう語る気力がない―――バタン。




