第19話 絶体絶命の攻防戦、神様に嫌われた日……
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四本脚の群衆とのパーティが始まった。
ここで良いニュースと悪いニュースがあるんだが、この場合人は悪いニュースから聞きたがるものだろう。
だが、ここは敢えて良いニュースから語る。ダイの不意打ちは想像以上の効果を発揮した。
特にガトリングガンによる殲滅力は凄まじく、それを積み上げたコンテナの上から銃撃しているものだから当たる当たる。
この時四本脚はシールドで防御するのが鉄板なのだが、上からの銃撃だとシールドを斜め上に持ち上げる必要があるんだが、これが四本脚の盲点でな。
そうすると足元がガラ空きになるんだ。直撃は狙えないが地面に当てて跳弾させると笑えるくらいシールドを躱して本体に当たるんよ。
結果、四本脚はガトリングガンで撃ち返す前にやられている。連射性って素晴らしい。
さて、悪いニュースの方なんだけど、ダイの不意打ちが成功した事で四本はもう20機近くがやられていると思うんよ。
なら残機は約10機……かと思ったらパッと見で40機は悠にいた。
当初の数より多くね……?
ちょいちょい増援が入ってくるなぁとは思ってたんだが、気付けば減る筈の四本脚が増えると言う現状。何故にこうなった?
言っとくが状況はダイの一方的な戦闘になっている訳ではない。撃ち返される前に大体は撃破してるけど、それでも全部じゃない。
寧ろ撃ち返してくる奴らの方が圧倒的に多い。ダイはその銃撃を、コンテナとシールドの両方を使って防壁を作り、なるべく身を小さくしながら防いでいた。
正直向こうの総攻撃の方が遥かに凄まじいからダイの防壁もいつ破られるか分からない。
つまり一方的にやられているのはダイの方なんだ。
そりゃそうだ、所詮多勢に無勢さ。しかも普通に自分より強い相手だ、正攻法で勝てる訳ねぇーだろ。
こりゃそろそろ潮時かもな。
「っ! だぁー!!」
その時倒れた四本脚の1機が、シールドを裏向けに落とす事故が起きた。予備弾倉と手榴弾が剥き出しになってらぁ。
ラッキーショットだぜ!
―――ズドォーン!!
シールド裏の爆薬を炸裂させた結果、複数の四本脚を巻き込む事に成功した。
ただこいつら撃破のされ方も上手くてな、もうラッキーショットはさせまいとシールドを表向きに落としやがる。流石無人機と言ったところか。
だが、今の爆発はかなりの効果があった。
爆発に巻き込まれて撃破した四本脚の数は微々たるものだが、衝撃波に煽られた事によりガトリングガンの総攻撃がほぼ止まった。
この好機を逃さずダイは出来る限りの殲滅を行う。
多勢に無勢とは言ったが高台に陣取っているダイの方が有利なのは確かだったし、しかも直射撃ちと跳弾撃ちを使い分ける事で四本脚は防ぐ手立てが無くなってる。
よってこの僅かな隙に10機以上もの四本脚を撃破するに到った。やったな、ダイ。
だがそれでもまだ30機近くの四本脚が残ってる……と思ったら60機くらいに増えてた。
倍になってんじゃねぇーかぁ!!
え? ええ? え、ちょっと待て。今考えるからさぁ……。
えーっと……いやいやいや、ついさっきまで40機くらいだったじゃん。
それからラッキーショットを経て10機程撃破してから5分と経って無いだろ。
その間にまた30機くらい増えたって事か?
バカな……。
正直当初の30機でも無理だろうと思ってたのに。ダイの乏しい頭で必死に練り上げた作戦が思いの外功を奏したと言うのに。
なのに今度はダブルスコアを達成しろとか、流石にそれは無いだろ神様よぉ!!
てか当初の数から合計するとトータル約90……いや、落盤で潰した奴らも含めると100機くらいいたのかもしれん。
思えば怪獣の巣にまで追ってきた奴らは100を超す大群衆だった。
おそらくは1階層分の総戦力が結集したんだろうけど、こいつらもそうなのだとしたらまだもう少し来るかもしれない。
それをダイ1人で相手にしろってか? いや死ねってか?
これもう遠回しにじゃないし。かなりストレートに言ってるし。死ねと。
「うがぁー!!」
唯一の救いは、ダイが諦めずにいる事だ。
ここまで追い詰められたら匙を投げてしまうようなものなんだけどな。俺だったら今頃もう投げてるし。
しかしダイは違った。俺の予想に反してこいつは無駄にしぶとく粘っている。元いじめられっ子だけあって精神力は鍛えられていたか。
果たしてそんなダイを四本脚はどう見ているんだろうな。
無駄にしぶといだけのガキか、仲間を30機近くも撃破した脅威か、或いはただの抹殺対象でしかないのか?
……ただの抹殺対象だろうな。無人機故に。
だがダイの粘り強さとは別に限界は来ていた。シールドもコンテナもズタボロ、防壁はもう役に立ちそうにない。そしてイングリッドの外装もそろそろ危うい。
今までイングリッドはノーダメでいられたと思ったか? んな訳あるか! 思いっきり被弾してるんだよ!!
シールドとかコンテナとかで徹底防御は固めているけどな、それだってこっちも反撃してる以上限度があるんだよ。さっきから地味に蜂の巣にされてんだよ。
―――バキンッ!
「は、外れたぁ!?」
そして遂には右腕も外れた、ガトリングガンの負荷が限界に達したんだ。
ガトリングガンはもう無理だ。四本脚と違ってイングリッドでは右手でトリガーは引いてるものの、実際は両手で支えて撃っていた。左手一本でガトリングガンを撃つ事は出来ない。
ライフルは撃てるが、連射性の乏しいこいつではガトリングガン程の殲滅力は出せないしな。
今度こそ潮時だ……。プランBに移行!
「今だぁー!」
ダイはライフルをフルオートで、奥の積み上げたコンテナの1段目を銃撃した。
前以て四本脚が出入口付近に溜まり易いように空間を空けておく為にも高台を作る目的でコンテナを積み上げておいたんだが、実は同じように反対側もコンテナを積み上げていたんだ。
でな、その積み上げたコンテナはどちらも1段目のコンテナに接するように手榴弾をセッティングしていたんだ。
ダイが今狙っているのはそれさ。
―――ズドォーン!!
その1段目で手榴弾を銃撃爆発させたら流石にコンテナもぶっ壊れるだろ。そしたら上に積み上げられているコンテナはどうなると思う?
イエス、ジェンガ!
積み上げられたコンテナは壁に添わしてあるから、崩れれば必然的に四本脚の方へ崩れ落ちるって寸法さ。
このコンテナ崩壊の狙いは2つ、1つ目はこれで四本脚を下敷きにし、大量破壊する事。
コンテナはイングリッドが入ったままだから重いぞ、わざわざ積み上げるのに一度取り出して積んでまた戻してを繰り返しやったからな。
物凄い手間だったし、イングリッドが勿体ないぜ……。
これによって被る被害は落盤の時とは比べ物にならない筈だ。質量も総量も遥かに増しているからな。
そして2つ目は、崩れたコンテナでもう一度倉庫の出入口を塞ぐバリケードにする事。
小休止を挟んでお色直しをする事になるだろうと踏んで考えていたが、やたらと増援が来る現状を考えると色々立て直す必要が出てきた。助かったぜぇ。
崩れてくるコンテナに四本脚も気がついて一旦銃撃を止めた。その隙を狙い、ダイは自身も乗っているコンテナの真下をライフルで撃った。
ジェンガは1つじゃない、出入口を挟むように2つセッティングしておいたのさ。ダイの下にな。
―――ズドォーン!!
崩れ出した足場からダイは直ぐに退避する。そして四本脚も退避を始めたが出入口付近に60機もの数が密集したせいで明らかに手間取っていた。
いくら無人機と言えど不測の事態に処理が追いつかない様子だ。その結果何機かは倉庫の外に逃げ、何機かはコンテナに押し潰され、また何機かは倉庫の中の方へ退避した。
いや、中の方は困る。
ダイは中の方へ退避した四本脚をどさくさに紛れてライフルで不意打ち、同時に中の方へ逃げ込まれないように牽制する。
コンテナは一気に崩れて四本脚を下敷きにし、出入口も塞いだ。ダイが牽制した奴らもその巻き添えになったが、4機だけ難を逃れたのが残ってしまった。
4機、しかも正面から対峙してる。……これ無理じゃね?
「くそっ!」
四本脚は既に身構えている。ダイは直ぐに逃げ出……すかと思えば逆に突進しやがった。バージョンアップした猛ダッシュで。
「だぁー!」
一番手前の四本脚に向かってダイはラガーマンばりのタックル、と同時にライフルを捨てた手でナイフを抜いて刺突、胸部の動力炉を突いて引き裂いた。
なんだ、正面からでもやれば出来るじゃねぇーか、ダイ。
それで機能停止した四本脚からデカいままのシールドを取り上げて他の3機からの銃撃を防ぐ。しかもまだ止まらない。
流石にデカいから少し身を屈めばイングリッドの全身を防ぐ事ができるのだが、ダイはそのシールドで防御したまま突進、3機の内の真ん中辺りにいる奴にシールドアタックを決めた。
その後シールドを捨てて直ぐにバックジャンプ、四本脚のガトリングガンが飛んできたが構わずレーザーを使い、シールド裏の手榴弾6個を爆発させた。
―――ズドォーン!!
その爆発に3機の四本脚は飲み込まれた。真ん中にいた奴は勿論、右側にいた奴も巻き込まれて撃破。確認しなくても分かる程に大破した。
ただ最後の奴だけシールドで防ぐ事ができたからダメージが弱い、まだ動ける様子だ。
―――ザクッ
しかしその四本脚が立て直す前にダイがナイフで刺した。見事なものだ。
これで4機とも撃破した。まさかダイが四本脚相手に正面切って勝ちを取るとは……たまげたぜ。
と言っても一か八かのギャンブルだったが、そう言うのは俺も大好きだぜ。よくやった、ダイ!
偉い偉い、お前成長したよ。
最初はこんな奴で大丈夫かと本気で心配してたけど、こんだけやれれば上出来だ。
いやぁー本当によくやった、ダイ―――
「うぎゃぁあああああ!」
でぇ!? どどどどうした……ってぎゃぁあああああ!! 四本脚がまだいたぁー!
コンテナの下敷きになった筈の四本脚だが、1機だけ這い出てきやがったよ。
見た感じボロボロだけど、ガトリングガンもシールドも健在だった。心なしか、無人機の癖にお怒りモードになってないか?
いやいや、もう終わりにしていいだろ! てか逃げろ、ダイ!!
ナイフはダメだ、距離がある。でもそれ以外に武器はない、丸腰だ。これは戦えん……。
と思ったらダイは倒した四本脚からガトリングガンのグリップを掴み、その四本脚に持たせたままガトリングガンを撃った。
相手の四本脚はシールドで防ぎつつガトリングガンで反撃、ダイも倒した四本脚を盾にして防ぎながらガトリングガンを撃ち続けた。
両者一歩も譲らなぬ地味な攻防戦の末、最後は僅かの差でダイが勝利した。
本当に危なかった。ダイのイングリッドもボロボロだったから、どっちが勝ってもおかしくなかったんだよ。こればかりは、単に運が良かっただけだな。
……いやいや、ちょっと待ってくれよ。
運が良かった? 今の今までの事を振り返ってみて、運が良かった事なんかあったか?
寧ろ最悪だ! 最悪続きだったぞ!!
てかこれもう運の良し悪しじゃない、絶対神様に嫌われてる口だ。神様、一体ダイの何がそんなに気に食わないんだぁ!?
……はぁ、よそう。存在するかどうかも分からん奴に文句言うのは。
それより今は次の戦闘に備えるべきだ。
実際はまだ終わった訳じゃない、出入口を塞いで時間を稼いだだけだ。何れまた突破してやってくるだろう。
今度のバリケードは雑な感じだからな、前より早く突破されるのは間違いない。
敵は四本脚約60機、コンテナに押し潰されて何機かやられいるだろうが必ず増援はやってくる。今度もまた増えてやってくるくらいの覚悟はしておかないとな。
なら褒めるのは後だ、まずはこの攻防戦を終わらせるのが先だ。
まぁ褒めたところでダイには聞こえて無いから意味ないんだけど。
さて、まずはお色直しだ。それから―――
―――ぐぅー……
……ダイの腹の虫が鳴った、何か食わせてくれと。
「……今くらいいいよね」
だな。既に丸一日経過している、本当は睡眠も取りたいところだがそれは無理だしな。満腹になれば更に睡魔が襲ってくるが、1食が少なめに節約された食事だから大丈夫だろ。
食事と同時にイングリッドのお色直しも済ませておく。右腕が無いままなのは色々と不安になるしな。
それが終わったら第2ラウンドの下準備だ。四本脚がやってくる前に姑息上等な罠とかしかけておかないと―――
―――ズドォーン!!
「ええっ!?」
ええっ!?
四本脚がやってくる前に……とか言ってる間にやって来よったよ。
考えてみれば奴ら一旦外に退避しただけだから直ぐに戻ってくるわな。迂闊……。
時間がねぇ、急ピッチでし―――
「時間がない、急ピッチで仕上げるぞ!」
お、おう……。
やる気満々で喜ばしい事だがしかしダイ、俺のセリフは取らんでくれ……。
ただ今徹夜1日目、残存食6食分、これ例え四本脚を撃退できても地下4階まで行けなくないか?




