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第17話 神は言った。ジ、ゴ、ク、に、落ちろ。

 システム補助83%


 結論から言おう。


 ダイは四本脚に勝った。……しかしグダグダだった。


 四本脚は容赦なくガトリングガンを撃ってきたんだがシールドを使えば防げると考えて防御、すると予想通りに防ぐ事ができた。


 これならシールドで防御しながら反撃できると思ったらそうは問屋がおろさなかった。


 ダイのシールドは小さくなっているからさぁ、防御範囲も狭くなっているんよ。逆に言うと狙ったら当たる所が四本脚より多いんよ。


 それでな、シールドの防御範囲外である脚を狙ってきやがってな、お陰でイングリッドの右脚が破損。立てなくなったし逃げられなくなったし、仕方なく物陰に隠れたらそこから手榴弾のコンボが炸裂。


 炙り出されて蜂の巣にされて、それでもシールドの耐久力に助けられて強引に反撃した末、ガトリングガンの弾帯を切る事に成功した。


 だがそこからが良くない。四本脚はガトリングガンを捨てると、素早く接近してきてマッチョ腕で拳を叩き付けようとしてきた。脚をやられたイングリッドでダイは腕の力を使って跳んで回避するも、それからモグラ叩き状態になってな。


 叩く四本脚と避けるダイ、延々と繰り返される光景に暫く見てて笑えたけど流石にこのままでは良くないと思ったダイは隙を見て手榴弾を転がしてまた避ける。


 そこを四本脚が叩く、そこで手榴弾がボォーンだ。


 四本脚は右腕を吹っ飛ばされて攻撃手段を失う。ダイも爆風に煽られて機体を吹っ飛ばされる。何やってんだよ……。


 で、その後は目を覆いたくなるような泥試合。いつしか取っ組み合いになった末にダイがマウントを取ってナイフで四本脚を滅多刺しにして機能停止。


 かつてない程見苦しい勝利だったんで、ダイジェストにせざるを得なかった。


 もうさぁ、もうちょっとさぁ、なんとかならんかねぇ、ダイ。


 四本脚1機でこれって。こいつら基本的に部隊行動してる奴らだぜ? 群れで来られて逃げられなくなったらどうすんだよ? 死ぬのかよ?


 ここは一度ガツンと言ってやりたいところだが訳あって今は通信が繋がらない。前繋がってた時に言っときゃ良かったか?


 そんで泥試合の末に勝ったイングリッドはお色直ししたばかりにも関わらず酷い有様だ。自力で立つことも出来ないし、おまけに機能の幾つかもイカれているし、またお色直しが必要なようだ。


 はぁ、先が思いやられる。と言うか先行きが不安しかない。不安の地雷原を進むような気分だぜ。


 しかもさぁ、悪い事ってのは立て続けに起こると誰かが言ってたと思うが、でもこれは無いだろって事があったんよ。


 ここのフロアだけどさぁ、軽く見渡してしまったら見つけてしまったんよ。[B8第4フロア]って文字を。B8、地下8階だってよ。


 もうそれ知った途端意識がどっか旅立ったさ。ダイは今も旅行中だけどな。


 地下8階ってなんだよ。てか、どういう事よ?


 怪獣のいた地下3階から5階層分も降りていたのかよ。


 冗談じゃねぇーぞ。


 こっちは期限が1週間しかないんだぞ。2日で1階分上がらないとアウトとかどんだけ鬼スケジュールなんだよ。


 外れたの悲劇を思い知った時この世に神はいないと確信したけど、どうやらそうでもなさそうだ。マジで神様のお告げが聞こえてきたしな。


 ―――ジ、ゴ、ク、に、落ちろ。


 ふざけんなぁあああああ!!


 あのさぁ、ダイが何かしたか?


 ここまで追い詰められる程ダイが何かしたか?


 どう考えてもこの仕打ちは酷過ぎると思う……え? 俺が連れて来たせい? はて、何のことかな?


 ……んんっ! とにかく、こうなってしまった以上は致し方無い。2日で1階分、腹をくくってやってやるしかないだろう。


 だからダイ、そろそろ現実逃避は止めて―――


「ああああああああああ!!」


 うおぉいっ!? ど、どうした?


「あああああ! もう考えるの止めだ止めだ! 何も考えずにひたすら上に向かってやる!!」


 またやけくそになりやがったよ。大丈夫か?


 まぁそれでも行動しようとしてるだけマシか。


 それからダイは大急ぎで倉庫に戻ると直ぐにお色直しを始めて、再度あのフロアに戻ってきた。


 それで今一度フロア内を見渡してみると機材とかが少なく、しかも運び込まれたままで使われた形跡がない。封の開いてない段ボール箱も幾つかあった。


 この階層自体がまだ開発中だからか、フロアの中も準備中の感じで止まったままだ。


 この感じだとここは元々人はいなかったようだな。


 四本脚も倒したし、先へ進もう。ここが第4フロアなら第1フロアまで行けば上の通路に出られるかもしれない。


「……よし」


 まずは地下7階、そこを目指して新しい通路を進む。


 とは言っても、新しい道は3つもあったけど。






 ぶっちゃけここ迷路だわ。


 3つの内2つの道を選んで入り組んだ通路をあれよあれよと進んで行く内にまた分かれ道があったりフロアがあったりで進めば進む程に分からなくなってしまいそうだった。しかも最終的に全部行き止まりだし。


 よってこの第4フロアの最後の道が上に通ずる道だと分かるまでに半日を要した。


 勿論、単に迷路に迷ってただけじゃない。新しいフロアには必ず四本脚もいたからな。


 それで気付いたんだけど、こいつらどうもフロア内に入り込まなければ動かないっぽい。おそらくセンサーか何かで感知するまでは起動しないようになってるんだと思う。


 言ってみればフロアの番人か。元々人がいなかった階層だからか開発途中の階層だからか、何れにしてもこの階層にはそれ程の戦力が配備されていないようだ。


 そんでフロアにいた四本脚だけどな、フロアにさえ入らなかったら起動しない訳よ。だからフロアの外の通路から狙撃してやったらあっさり倒せたんだ。


 滅茶苦茶簡単……まぁ待機状態だからと言うのもあるけど、ここに待機してる四本脚は難無く殲滅できたんよ。


 まぁ通路からだと位置的に狙撃出来ない所もあったんだけど、ダイも慣れたもんでな。ゲッコーを使って見易い位置を取ったり、跳弾とか手榴弾とかを器用に使って撃破するんよ。


 正面切って戦うとまたダイジェストにせにゃならんようなグダグダになるが、待機状態の相手なら不意打ちが容易に入る。


 何度か不意打ちが失敗した事もあったんだけど、その時はフックランチャーで通路の天井に張り付くと言う忍者技を披露した。それで四本脚が通路に出て来たところを頭上から奇襲して終わりだが、いつの間にこんな技を身に付けやがったんだ?


 この不意打ちと奇襲で待機状態にあった四本脚はほぼ確実に勝てるようになった。どうやら地下8階は思いの外早く抜け出せそうだ。良かった良かった。


 ……え? 卑怯だと?


 んな事言ってる場合かぁ!!


 ダイのリミットは1週間しかねぇんだ。食料問題が切羽詰まってんだよ。しかも1日1食の過酷スケジュールだよ。


 お前ら分かってないかもしれないけどな、歩兵機の操縦は体力勝負だぞ。全身使って操縦するから身体中の筋肉が悲鳴あげんだぞ。


 そりゃ全身を覆う操縦桿は割と軽いものさ。だが疲労が蓄積すれば感覚的に重くなるし、次第には拘束具のように感じられる。歩兵機の操縦とはそう言うもんだ。


 本来ならパイロットのエネルギー摂取が義務付けられているのに、今のダイは極力控えなきゃならない。それがどんだけ酷な事か分かるか?


 分かった、例えて言おう。


 週休1日の休日出勤有り、サービス残業最低5時間、各種ハラスメント無条件承諾、保険等は全て対象外、勿論低賃金で値上げ無し、15年以内は退職金も出ない、バックは国のお偉いさんだから訴えるべからず。


 ようこそブラック至上主義の会社へ……それが今のダイの現状だ、ゴラァ!


 決して大袈裟じゃないぞ。今のダイは寝る間も惜しむ程追い詰められているんだからな。


 飯も食えない、寝る間もない、なのに体力は物凄い勢いで奪われていく。しかも出口が分からないガチな脱出ゲームに四本脚のおまけ付き。これなんて無理ゲー?


 ダイはいつ匙を投げて自殺してもおかしくない状態なのさ。はは……。


「……やっと来たぁー! 第2フロアァー!!」


 え? お、おう……。おおぉ!?


 いつの間にか第2フロアまで来ていたか。よくやった、ダイ。


 って、いつの間にかってもう1日が終わりかけてるぞ。そろそろ休んだ方が良くないか?


「今日中に第1フロアまで行きたいなぁ。もし上にあがれる道があるなら実質地下8階は今日でクリアって事だしね。いっそ地下7階まで行って新しい拠点を作るのもいいなぁ」


 ……マズい。


 一見前向きに頑張ろうとしているようにも見えるが、これってトランス状態だ。ブラック企業の思う壺の状態になってやがるよ。


「おっと、その前にこれは回収しておこう」


 ダイはこの第2フロアにいた四本脚から弾倉と手榴弾を回収しておく。


 ライフルの弾も手榴弾も消耗品だからな、四本脚を倒したなら回収して補充するに限る。特に手榴弾は道中の障害物を破砕するのに多用したから常に補充が必要だった。


 その後すぐに第2フロアを出たが幸いな事に出入口は2つで、1つは来た道だ。つまり行く道は1つしかないって事だ。分かり易くて助かるぜ。


 それからは一本道だった。壁とかも岩肌の出ていないちゃんと舗装された通路になっているし、ライトも他と比べてちゃんと点いているから明るい。


 開発中でも最初の辺りはしっかり舗装されているのだとしたら、いよいよ上にあがるトンネルへの道も近付いてきたのかもな。


「もうすぐだ……」


 程なくしてフロアの入口が見えてきた。相変わらず中央付近には機能停止状態の四本脚が1機いるだけ。しかも位置的に正面から必殺の不意打ちできる。楽勝だな。


「スコープ」


 イングリッドのスコープモードを起動してライフルをセミオートで狙撃した。動力のある胸部に2、3発叩き込んで、それで終わり。呆気ないものだ。


「ふぅ、さてと……って、わぎゃぁあああああ!!」


 え、どうし……って、わぎゃぁあああああ!! 四本脚がまだいたぁ!?


 このフロアだけ四本脚が更に2機もいよった。そいつらがダイに襲いかかって来よったよ。マジかい!


 ダイは直ぐに通路を逆走して逃げる……ように見せかけて入口付近でジャンプ。同時にフックランチャーを天井に打ち込んでそのまま天井に張り付いた。


 これぞ第二の必殺、上から奇襲。ダイを追って通路に出てきた四本脚はまさか上にいるとは思わず、そこからライフルをフルオートにして銃撃した。


 だが四本脚も反応が早い。1機は撃破できたんだがもう1機が直ぐにシールドで防いだ。相変わらずこのシールドは厄介だな。


 しかしまだ手はある。ライフルの狙いを真下の四本脚から横壁に移し、跳弾させてシールドの防御範囲外から命中させた。


 これも慣れたものでな、跳弾でガトリングガンの弾帯を切って、更に脚を破壊して、最後は四本脚の背後に着地して背中から胴体を狙い撃ち。これで撃破だ。


「はぁ、はぁ、びっくりしたぁー」


 大層な事を言う割には余裕勝ちだったようにも思えるけどな。前みたいな泥試合にならないよう正面から戦わないでいるのは良い事だ。


 例え卑劣極まりないとしても、この切羽詰まった状況では最速で最良の手を選ぶのがベスト。技能向上に繋がらないのがちょっと痛いけど……。


 さて、今度こそフロアに入る。まだ四本脚が残っていないか警戒して。


 流石にもういなかったが、このフロアは他と違って機材が揃っている。調べてみたら、やはりここは第1フロアだった。


 そしてフロアには別の通路もあった。それは明らかに登り坂になっている、トンネル状の通路だ。


 本来なら隔壁で塞がれている筈であるのだが、開発中故か隔壁はまだ設置されておらずトンネル状の通路は丸見えになっていた。


「やった! 上にあがれる」


 よし、なら今日はここまでにしよう。ダイ、お前自身は気付いてないようだが、目の下に大きなクマが出来てるぞ。そろそろ休んどけって。


「よし、行こう!」


 だから休んどけって!


 あーもう、知らねぇぞ。どうなっても知らねぇーぞ。


 てかダイの奴、トランス状態から暴走してないか。これは本格的にヤバいかもしれんな。


 もう周りが見えてないって言うか、まぁ周りに誰もいないんだけど完全に後先考えられなくなっている。多分これダメなパターンだ。


 絶対後で痛い目に合うパターンだ。


 そしてダイはトンネルの通路を登り切って隔壁に辿り着いた。隔壁にはデカデカとB7と書いてある、ここが地下7階で間違いなさそうだ。


 その隔壁を、ダイは迷わず開けた。もう本当に迷う事無かったよ、即決だったさ。


「……あ」


 そして隔壁を開けた先に四本脚はいた。ああ……やっぱり。


 しかも1機じゃない。少なく見積もって30機、四本脚本来の部隊行動で待ち構えていやがったよ。しかもこいつら既にガトリングガンでロックオンしてやがるし。


 ―――ジ、ゴ、ク、に、落ちろ。


 喋らない筈の四本脚が神のお告げを口にしたような気がした。最悪だな。


 だから言ったのに……。 休んどけって言ったのに……。


「……ヤバ」


 てか詰みだよ。今度と言う今度こそ、間違いなく詰んだぞ、これ。

でも30機って、最初に遭遇する数にしては多過ぎないか? 大体3、4機編成の筈なのに……まさかダイが地下7階に来る事を見越していた? 地下8階で暴れている歩兵機がいる事を嗅ぎつけて? なんてこったぁー!!

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