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第16話 “敵”、それは睡魔である! ……んな訳あるか!!

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 初めての会話を終えてみたもののダイは俺の事を信用してる様子はなく、寧ろ警戒してる風だった。


 だが、その方がいい。


 本来この極限状態の中で頼れそうな人物が現れたのなら無条件で信頼してしまうものだが、にもかかわらずダイは慎重な姿勢を崩さずにいた。


 あまり気持ちのいいものじゃないが手当たり次第に信用する馬鹿と違って、石橋を叩いて渡るくらいの慎重さは褒めていい事だ。


 さて、そんな慎重姿勢で次の行動に出たダイだが、まずイングリッドのお色直しを行った。


 正直次にダメージを受けたらお終いな状態だったイングリッドだが、ここの倉庫にびっしり敷き詰められたコンテナの中には同機種のイングリッドが入ってたんで、その機体でパーツ交換をさせていただいた。


 不思議なものでここのコンテナはざっと調べたがどれもイングリッドばかりで他の機種は無い。しかもコックピット部分だけがポッカリ無くなった状態だから乗り換える事も出来ないからな。


 何故イングリッドばかりで、何故コックピット部分だけが無いのか、それもこれからの調査対象になるだろうな。


 で、その後なんだが倒した四本脚を調べてみた。


 これからまた戦う相手になるだろうからなるべく情報収集するのはいい事だ。それにお目当てのものもあったしな。


 [XM606 37mmアサルトライフル]


 四本脚が使おうとしていたライフルなんだが、これってイングリッドでも扱えそうなんだ。口径も前に使ってた奴と同じだし、多分大丈夫。


 ガトリングガンはイングリッドだと少々厳しいが、こちらのライフルなら片手でも扱える。試し撃ちしたら前に使ってたライフルよりも射撃精度が非常に高いし、威力も若干上がった気がする。


 なので速攻で交換した、どうせ前のライフルは弾切れで使えなくなったし。


 このライフルの予備弾倉もあったんだが、これがビックリでな。四本脚が左手に持ってた盾の裏側にマウントされていたんだ。


 [ライオットシールドSM14]


 盾にも名前はあった、ライオットシールドと言うそうだ。


 表側から見ると全面黒の鉄板で出来てると思いきや裏側から見れば一部分が透明な素材で出来ていてシールド越しでも敵を捕捉できるようになっている。四本脚がシールドを構えながらガトリングガンをガンガン撃てたのもこれで納得だ。


 シールドは軽量な素材で出来ているが耐久性は戦車の装甲並みにあり、しかも表面に対衝撃性コーティングを施してあるから見た目以上に防御力が高い。


 その上シールドの裏側にはライフルの弾倉4つ分をマウントできる内蔵型ラックと、左右の縁側に手榴弾3つをマウントできる固定型ラックを2つも装備してやがった。


 手榴弾ってシールドの裏側にあったのか……。


 これも非常に便利なんだが如何(いかん)せん大き過ぎる。イングリッドだと頭頂部から膝下辺りまで、肩幅も覆う程の大きさだ。


 身を守れる上では有り難いがあまり大き過ぎると邪魔になるだけだし、その上軽量な素材で出来ていても大きいからどうしても重くなる。デッドウェイトだ。


「せめてもう一回り小さくならないかなぁ……」


 試しに持ってみたが、どうにも大きい。これは使えないな、と思っていたら―――


 [増設板をパージして軽量化できます。パージしますか?]


「え、できるの!? しますします!」


 思わぬ機能に大感激、意外と便利なんだな、このシールド。


 ダイはしますと言った途端にシールドの上下左右の増設板が取り払われてかなりコンパクトになった。軽量化もされて取り回しにも不自由しなさそうだ。


 それでも胴体だけはすっぽり覆うだけの大きさがある、背中にマウントしていれば逃げながらでも防御できるな。


 弾倉はマウントしたままだが、流石に手榴弾のラックは一緒に取り払われた。こればかりは仕方なかったが、しかしこの手榴弾は使えそうだ。腰のハードポイントに3個付きのラックを1つ装備しておくとする。


 まさか四本脚1機倒しただけでここまで装備が充実するとは思わなかった。


 背中の右側にメインウェッポンのアサルトライフル。


 背中の左側にディフェンスのライオットシールド。


 腰の後ろにサブウェッポンの手榴弾ラック。


 右太腿の収納ラックにクロスレンジのハードナイフ。


 左太腿の収納ラックに予備の手榴弾。


 これだけあれば暫くは困らない、上出来だ。


 そんでイングリッドの武装も整い直したところで、今度は四本脚を解体してみた。


 もしかしたら四本脚の腕とかをイングリッドに付けられないかなっとダイは思ったらしいが、そんな事は無く互換性が無い為付けられませんでした、と言われた。当たり前だ。


 しかし得るものはあった。イングリッドのスキャニング機能なんだが、四本脚のスキャニングは出来ないだろ?


 ところが解体した四本脚の腕を更に解体したらな、肩とか肘とかの電動モーターとかはスキャニング出来たんだわ。


 これ見てダイは更に四本脚の解体に勤しんだ。流石に四本脚の全体図を調べるには至らなかったが、幾つか重要な事は分かったな。


 特に重要だったのは四本脚が胴体胸部に動力炉とメインコンピュータを搭載していたって事。これをやられたら四本脚は、死んだも同然となる。


 その動力炉だが、これはパラジウムと重水素ガスを用いた核融合炉で、実はイングリッドに搭載されている物と機構そのものは一緒なんだ。


 理屈は分からないが、イングリッドだとこの核融合炉で最大で1週間以上起動し続ける事ができる。と言っても消耗品だから何(いず)れ交換は必要だが、交換パーツには暫く困らないし交換も電池交換のように簡単に出来るから安心だ。


 ただな、物は同じなんだが腹部に搭載しているイングリッドに対してコックピットが無い無人機の四本脚は胸部に搭載しているから大きさも違うし、その分出力も変わってくるんよ。


 と言うか、イングリッドの倍以上の出力があった。


 いやまぁ、何となくおかしいとは思ってたんよ。高重量でその上重装備な四本脚が全力疾走で逃げるイングリッドを追いかけて突き離されない速度が出るのはおかしいと最初から思ってはいたんよ。案の定だ。


 メインコンピュータにしてもそうだがフロップスがイングリッドの3倍以上もあるんよ。頭の悪いダイと比べたら何千倍になるのやら。


 無人機の癖にこいつら普通にイングリッドよりも強い、いや無人機だからこそか? そしてそれに勝てたダイって実はかなり凄い?


「まさかマックスの言ってた“敵”って、こいつらの事なんじゃ」


 冷静に考えるとそうかもしれないな。話し合いの余地があった美女軍団と違ってこいつらは問答無用だ、こいつらがその“敵”だとしたらある意味納得ものだが。


 しかしな、ダイ。それもまた違うんだよ。


 “敵”の正体を知った時、果たしてお前はどんな反応をするだろうな。


 さて、イングリッドのお色直しも終わり、武装も整い直し、四本脚も調べ尽くして、気付けば半日くらい過ぎていた。


 ダイがこのプラントにきてここの倉庫にくるまで既に1日が経過している。そこへ更に半日、時間単位で言うと36時間そこそこ。その間ずっと起きて活動しっぱなしだ。


 色々あって眠気を感じられなくなっていたが、流石にもう睡魔には勝てない。しかしこのまま眠るのは危険だと判断して寝床を考えていたら割といい案が思いついた。


「よし、あの縦穴を使おう」


 縦穴とは、怪獣のいた階層からこの倉庫の階層まで垂直に下りてきた縦穴だ。これは利用しない手は無い。


 縦穴は壁を壊して無理矢理外に出たが、しかし壊した壁はコンテナで塞ぐ事が出来る。戸締り的な問題は大丈夫そうだな。


 ついでに外から見て不自然にならないようコンテナを積み上げて自然な状態にした、それでいて一部が簡単に動かせて出入りし易いように工夫する。


 これで無人機が入り込んできても大丈夫だろう。


 あとは縦穴の真上から奇襲される心配だが、縦穴の中に空にしたコンテナを無理矢理押し込む事が出来たんでそれでカバーできたと言う事にしよう。


 そしてイングリッドをそのコンテナの内部に入れる。イングリッドから見てコンテナ内部はネットカフェの個室くらいの空間があるからそこまで狭くはない。


 これで寝床は完璧かな。真上からの奇襲がちょっと不安だがそれは仕方ない。


 出入口を塞ぐシャッターは簡単に開くようだけど、そこもコンテナを積み上げて塞いでおいたから大丈夫だろう。


 多少の不安は残るが、ダイはここで一睡する事にする。イングリッドのコックピットをリラクゼーションモードに切り替えて楽になる。


 眠りに落ちたのはその直後だ。余程疲れていたんだろう、不用心に寝落ちしてしまったがとても責められはしないな。


 ゆっくり休むといい、ダイ。目が覚めた時、どうなるかは分からないけどな。






 なんて意味深な事を言ったが、実際は何事も無く目覚めたよ。


 目覚めたら天国または地獄と言う事は無く、かと言って無人機に囲まれていたと言う事も無い。倉庫のシャッターは今も閉じたままだった。


 取り敢えず一安心、時刻を確認すると半日くらい寝ていた。まぁ36時間も色々頑張ってたし、仕方ないかもな。


 安全を確認してからダイはトイレに行く為にイングリッドを下りた。幸いここの倉庫にはトイレがあったから助かったな。


 それを済まして一息着くと少し空腹を覚えたが、しかし我慢出来ない程ではないので今は控えておく。


 手持ちの食料はあと7食分、水は最悪トイレの手洗い場で確保出来るが食料はこの7食分で終わりだ。


 1日2食分を予定してたが何が起こるか分からないし、ちとキツイが1日1食で残り1週間を期限としよう。それまでになんとか食料問題を打開しないとな。


「……行くか」


 意を決してダイは出入口のシャッターを開けた。この倉庫を出ないと待っているのは飢え死にルートオンリーだからな。


 で、開けた先に待っていたのは、ただの通路だった。


 四本脚とか頭無しとかが待ち構えてはいなかったが、何故かここの通路は他と比べて薄暗い。ちょっと薄気味悪いぞ……。


 しかしダイは割と平気でこの通路を進んだ。こいつこう言う事には度胸あるんだな。


「……あれ? この壁、岩だ」


 いつの間にか通路の壁が自然の岩肌に変わっていた。丁度Y字路の分かれ道に差し掛かった所だが、片方の道は直ぐに行き止まり。岩肌の壁で道が塞がれていた。


 と言うより道が出来ていなかった。


 それを見て分かった、この階層はまだ開発中なんだ。通路も作りかけのまま、人がいなくなった事で作業が中断してそのままになっているんだ。


 なら開発が止まっているここが最深部と言う事になるな。


「……そう言えばここって、地下何階なんだろう?」


 それ結構大事だぞ。明らかに地下4階は通り過ぎたと思うが、おそらくは地下5階、最悪地下6階と言う事も有り得る。


 どのくらい降りたのか距離感覚も分からなかったからなぁ。もし地下6階なら1週間で2階分も上がれるだろうか。


 その場合ノルマとしては最低でも4日以内に1階分、この階層の何処かに食堂でもあれば助かるがなるべく最悪の事態を想定しておく必要があるな。


 まずは地図を探さないと……開発中の階層に地図なんかあるのか?


 そんな不安が過ぎる中、Y字路のもう一方の道を進んで行くとフロアの出入口が見えた。


「あ……」


 そのおまけに、四本脚もいた。フロアの中央付近に。


 だが、何か様子が変だ。倉庫にいた奴もそうだが、四本脚は1機しかいない。群で部隊行動をする四本脚が孤立しているのは、どうにも不自然だった。


 それに四本脚はまだこちらに気付いていない。フロアの中央付近でどこを見つめているのかも分からず、ただ突っ立っているだけのようにも見えた。


「……スコープ」


 ダイはイングリッドに搭載された狙撃用のスコープモードを起動した。


 イングリッドのヘルメットのような頭部が目元を覆うように下がり、額の辺りから丸いカメラレンズが露出する。


 コックピットのダイにも目元を覆うように上からゴーグルが被されてきた。これで遠くからでもよく見えるんだが、視界が狭くなるから常時起動は出来ない。


 スコープで見た四本脚は、どう言う訳か機能停止している様子だった。まさか核融合炉の核が劣化して自然停止したのか?


 気になったのでスコープモードを解除してフロアに入る。念の為ライフルを構えて警戒は怠らない。


 そしてフロアに入ったその途端


 ―――ギロ


 四本脚のメインカメラが光って、踏み入ってきたダイを睨み付けやがった。


 え? まさか死んだフリ。


 無人機がそんな小細工するのか?


 ってヤバい。四本脚がガトリングガンとシールドを構えやがった。だが軽くフロアを見渡した限り他にはいない、こいつ1機だけだ。


 だったら、やれない事は無いだろ。


「……やってやる」


 ダイはライフルを構えた。所詮は一度倒せた相手だ。それに今度は武装も整っているし、弱点も把握している。


 勝てない理屈は無いだろ。

因みに歩兵機にも自動照準機能は備わっているんだけどな、でもそれってある程度自分で狙いを付ける必要があるんだ。歩兵機の操縦は全身でやるからな。でも手首から先はレバー操作だからある程度照準を取れば歩兵機の手首で誤差修正してくれる、これが自動照準機能すなわちロックオン機能なのだ。

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