第15話 マクシミリアン・ダオスロードと言う男、どういう男?
ダイ視点
マクシミリアン……ダ、ダオスロード!?
ダオスロードって、まさか―――
『察しの通り、眼帯野郎の言ってたダオスロードは俺の事さ』
やっぱり……って心読まれた!?
『その節は悪かったな、ダイが眼帯野郎にボコられたのは多分、いやまぁ間違いなく俺のせいなんだけどな』
「あ、いえ……僕の方こそ、その……すいませんでした」
『なんでお前が謝るんだよ?』
「あ、えっと……」
どうしよう、思わず謝ってしまったけど特に理由は無いし。大体僕はコミュ障だから他人とまともに話なんか出来ないんだし。
「その……ほ、歩兵機! この歩兵機、ダオスロードさんの……ですよね? それを……勝手に使ってしまった、事」
『ああ、違う違う。そのイングリッドは俺の歩兵機じゃないぞ』
「えっ、違うんですか?」
意外だった。僕は最初ダオスロードはこの歩兵機の名前かと思っていたけど実際には人の名前で、眼帯野郎の言い方からこの歩兵機のパイロット = ダオスロードの事だと思ったのに。
『確かにそいつは俺の為に作られた歩兵機だが、俺の所有物と言う訳ではないんだよ。だから好きに使ってくれて構わないのさ』
それってどう言う事だろう?
でも、今はそれよりも聞きたい事がある。と言うか聞かないと不安で仕方ないし。
「あの、ダオスロードさん―――」
『マックスだ』
「え?」
『マックスと呼びな、さん付けもいらねぇ。あと敬語も禁止な、タメ口で来い』
ええぇ、コミュ障の僕になんて無茶振りするんだよ……。
『近しい奴と上下関係を作るのが嫌なんだよ、特にお前とは長い付き合いになりそうだからな』
え? 長い付き合いになるの? ……まぁいいや。
「えっと……マックス?」
『おう、なんだ?』
「どうして、僕の事を……知ってるんですか?」
『だからタメ口で来いって』
「あぅ……」
だからコミュ障なんだって!
『大体な、俺達は知らない中じゃないぜ、ダイ』
「え、どういう事?」
『俺はお前を助けた。お前も俺を助けた。そういう中だ』
……え? 助けた覚えも助けられた覚えも無いんだけど。
『眼帯野郎然り、美女軍団然り、あの時イングリッドを動かしていたのは誰だと思うよ』
「……誰も乗って、無かったです……だよ」
だってその後、僕が普通に乗ったし。その時イングリッドの中には誰もいなかったし。
『遠隔操作だ、馬鹿野郎』
遠隔操作? ああ、そう言えば。
イングリッドには最大で30分間だけ遠隔による無人操作が可能だったことを、一度調べ直した時に知った。2度もイングリッドが無人で助けに来てくれたのも遠隔操作によるものだと直ぐに分かってたや。
ただあの時遠隔操作で助けてくれたのが誰かは分からないままだったけど、あれは全部マックスだったんだ。
「え、じゃ、じゃあ……眼帯野郎との戦いで、後ろから助けてくれたのも……マックスなの?」
『それは知らん』
ええぇ、なんなのこの人。
『あとお前に助けられた件だが、あくまで俺の主観だから恩を着せようとか思うんじゃねぇーぞ』
別にそんな事は考えてないけど、改めて言う事でも無いと思う。なんだか真剣に話してるのが馬鹿みたいに思えてきた。
「でもそれって、答えになってないよ。僕が聞きたいのは、どうして僕の事を知っているのかって事だから」
『でもそれって、今聞く必要は無いぜ。どうせ嫌でも分かる事になるからな、マックスとダイのズブズブの関係がな』
え! ズブズブの関係なの、僕達って!? ……なんかやだし。
『変な想像するなよ、気色悪い。言っとくが俺にそっちの趣味は無いからな』
「僕だって無いよ」
『なんだ、普通に喋れるじゃねぇーか』
「……あ」
本当だ、僕ってこんなに喋れたんだ。
いつもはしどろもどろで全然会話にならないんだけど、このマックスと言う男はどうも調子を崩されると言うかついつい本音を出してしまうと言うか。
なんだかあまり気を遣わなくてもいいように思えてきた。それに僕の事を知ってたのも気になるけど今は保留でいいと思う。
他に聞きたい事だってあるし。
『何か聞きたそうだが、聞くなら要点をまとめて簡潔にな』
凄い、また心読まれた。一体何者なんだろう、この人は。
取り敢えず要点だけまとめて簡潔に、えっと……。
「あ、あの美人さんとはどう言う関係?」
『それ違くないか! 今聞かなきゃならん事と違くないか!?』
……そうだね。
あの美人さんのキレた顔が今でも脳裏に焼き付いて離れないから思わず聞いてしまったよ。
実際美人さんはマックス、ダオスロードの名前を出した途端にブチ切れしたんだから無関係では無いと思うけど、流石にそれは今聞く事じゃないや。
「えっと、じゃあ……この地下施設って一体何なの?」
『それは、聞かなくても分かってるんじゃないか?』
分かってたら聞かないよ。僕はこの施設に来た事も無いし、知ってる事だって何も無い。分かる事と言ったら精々……。
「……歩兵機の開発工場?」
『シンプルに言うとプラントだな。分かってるじゃねぇーか』
分かる事はそれだけだ。
ここには頭無しや四本脚、怪獣とかもいたけど、それを除いたら完成されたイングリッドや組み立て途中のイングリッド、他にも意図的に分解されたようなイングリッドもあった。
実際この倉庫のコンテナに入っていたのもイングリッドだったし。ここがイングリッドを始めとした歩兵機を研究、開発してる施設―――プラントだと言う事は今まで見て来た中で理解できた。
しかしそこまでだ。ここプラントの現在地とか内部の規模とか、細かなところは何一つ分からないし、何より……
「ここで何があったんだ?」
それが一番知りたい。
プラントの中は無人機ばかりで人はいない、それも忽然と姿を消したようにいなくなっている。数百人はいたであろう従業員、その全員が皆同じように忽然といなくなっていた。
そしてそこかしこにいる無人機。僕を見つけた途端に問答無用で襲って来たけど、ここにいた人達が襲われた様子は無い。仕事の作業中だった様子はあれど荒された形跡は見られなかった。
それはまるで、従業員と入れ替わりに無人機が現れたかのような不気味さだ。不気味だからこそ何があったのか知りたい。
『それを調べる為にお前を連れて来たんだぜ』
「え? え、ちょっと待って、ええ? ええぇ!?」
いやいやいや、じゃあ僕がこの施設にいるのはマックスのせいって事?
いやでも、考えてみれば今までイングリッドを遠隔操作していたのはマックスだけなんだ。だとしたら自ずと答えは出てくる。
美人さんとの戦闘後、何者かによって連れて来られたとしたら、それは美人さん以外ならマックスしか有り得ない。犯人はお前か!
『そう怒るなよ、言い訳はしないがあの時は色々とアクシデントもあったんだ。俺も流石に予想外でな、仕方がなかったんだよ』
それを言い訳と言うのでは?
『まぁ俺も悪いとは思ってるさ。だから今回は1つ、アドバイスを送ろうとしているんだぜ』
あ、それはちょっと嬉しい。
今までの苦行がマックスのせいだったとしても、現状が少しでも良くなるなら普通に感謝だし。
『戦え、ダイ』
「……はい?」
『戦え、と言ったんだ』
いや、何と? てか、それだけ?
『惨いことを言うようだがなダイ、お前はもう歩兵機を棄てられない。“敵”に目をつけられている』
「敵って、美女軍団?」
『残念だが、あれは敵の内に入らねぇ。本当の“敵”を知った時、お前は歩兵機を手放す訳にはいかなくなるし、歩兵機から逃れる事もできない。気の毒だが、そういう運命だ』
どういう事? 美女軍団より更にヤバそうな“敵”がいるの?
『その“敵”についてはまだ知らない方がいい。今言える事は、来たるべき日を迎える為に戦え。戦って戦って戦って、行き着く所まで戦え』
「……なんで?」
意味が分かんない。僕はただこのプラントから脱出したいだけなのに。
なんだか変だ、気付けば話が違う方向に進んでいる。マックスは僕に何をさせようとしているんだ?
『いずれ分かるさ。その時が来るまでは何も考えず戦っておけ、ダイ』
「それって、マックスは手を貸してくれるの? また遠隔操作とかで」
『それは無い」
清々しい程にキッパリ言ってくれたよ……。
『甘ったれた事をぬかすな。助けは求めるだけ無駄だ、自力で戦う事に意味があるんだよ』
「甘ったれって、マックスが勝手に連れて来たんだろ?」
その張本人が何言ってんだよ。
『それは言わんでくれ。実を言うと俺も身動きが取れない状態でな、助けてやりたくても助けてやれないってのが本音なんだわ。寧ろ俺の方が助けてほしいくらいでな』
「え、それって……マックス、ひょっとしてその“敵”に捕まっているんじゃ―――」
『ダイ、お前はお前の事だけ考えていろ』
拒絶された。
でも何故だろう。なんか今までで初めてマックスの素を見たような、そんな気がした。
『この際はっきり言うがな、お前には何も期待してないぞ。自分のことも碌に守れないような奴に助けてもらおうと考える程、俺も愚かじゃないんだよ。だからお前も余計なことは考えるな』
……なんだよ、それ。そりゃあ確かに僕は頼りないけど。
『じゃあ頑張れよ。俺は助けてやれんが、健闘は祈ってやるからな』
「え、ちょっと待って! まだ聞きたいことじゃが―――」
―――ブツ
通信が切れた、かなり一方的に。
こうして僕とマックスの最初の会話は終了した。言いたい事だけ言われたようなものだけど。
結局何も分からなかった。このプラントの事も、“敵”と言ったものの事も。そもそもマックス自身の事も良く分からないままだ。
何がしたかったんだよ、訳分かんないし……。
空腹に耐えかねて手持ちの缶詰めを空けて食べたけど、まるで味を感じられない。
原因があるのは缶詰めの方じゃない、僕自身の心の方だろう。
マクシミリアン・ダオスロード、流暢な日本語でずっと話してたけど名前からして日本人じゃない。一体何者なんだろう?
何も教えてくれなかったけど、多分マックスは色々な事を知っている。それを敢えて言わなかったのには、何らかの意図が隠されているんだと思う。あいつは相当にしたたかな男だ。
今のところ敵ではなさそうだけど、はっきり味方とも言わなかった。あまり信用しない方がいいのかもしれない、暫くは警戒しておこう。
それよりも大事な事を聞きそびれてしまった。マックスは何故だか、僕の行動を把握してるようだ。
最初はイングリッドのカメラをハッキングして見ているのかと思ったけど、ハッキングならイングリッドのブロッキングが発動する。例え突破できても形跡は残る筈なんだ、実際遠隔操作の形跡は残っていたし。
それが残ってないとなるとマックスはイングリッドをハッキングしてる訳じゃない。絶対にとは言えないけど、身動きが取れない状態とも言ってたし多分違うんだ。
ならマックスはどこから見ている? いくらあいつでもずっと覗き見ているなら見るための目があると思うんだけど。
「……あ」
ふと倉庫の天井隅に監視カメラがあるのを見つけた。思い返すとこの施設には至る所に監視カメラがあったような気もするけど、まさかこれで覗いている?
―――ズガン!
フックランチャーで監視カメラを破壊しておいた。何となく見られるのはやだし。
色々考えることが山積みだけど、暫くは保留にするしかない。どうせ考えても分からないんだし。
『戦え』
不意にマックスのアドバイスがフラッシュバックした、戦えって無責任に言うだけのアドバイスが。
戦え、か。ぶっちゃけもう戦いたくないのが本音だけどもこのプラントを出るまでは嫌でも戦わないといけない、それは覚悟してる。
でもここを出たら終わりと言う訳でもなさそうだ。マックスの言う“敵”が地上にいるとしたら結局それとも戦わないといけなくなるのか? やだなぁ、それ。
なんでこんな事になったんだろう……って、あの時僕がイングリッドを見つけたからか。
あの時たまたまイングリッドを見つけて、それで面白半分に乗ってしまった結果がこれか。あの時の僕の馬鹿野郎、なんて事してくれたんだ。
いや待てよ、そもそもなんであんな所にイングリッドがあったんだ?
まさか、マックスが仕組んだ? 僕を乗せさせる為に……無いな。自分で言うのもなんだけど、僕を乗せるメリットが見当たらない。
普通に考えたら見つからないように隠していたんだろうけど、隠したのがマックスだとしたら何から隠していた―――“敵”?
“敵”から見つからないようにマックスが隠していて、それを僕が見つけて乗り回してしまった。それが今のこの結果? 本当になんて事してくれたんだ、僕は。
「よし、もう考えるの止めよう」
これ以上考えても仕方ないしね。食事も終わったし、暫く他の無人機が攻めてくる気配も無いし、そろそろ行動しよう。
まずはボロボロになったイングリッドをお色直ししよう、幸いここのコンテナにはイングリッドが入っているから暫く交換パーツには困らないしね。
その後は……この倒した四本脚を調べてみようかな。
あれ? よくよく考えたらマックスはずっと僕の行動を把握してたんだよね。多分このプラントに来た時から……もしかしたらそれよりずっと前から? え? それってストーカーじゃん。普通にやだし、てか怖いし。……まさか“敵”ってお前の事か、マックス!?




