勇者と王女の関係に、魔王巻き込まれるー8ー
「……何言ってるのよ。あんなの恥ずかしいだけじゃない。マキナには悪いけど、さっさと終わらせてもらうから」
「ええ……ですが、勝つのは私です。そして、魔法戦闘では貴女のパートナーも倒しますから!」
先に仕掛けたのはマキナであり、エリスは待ち構える形となった。
マキナの初撃はレイピアでの三段突き。常人には残像の如く同時に放たれたように見える突きを、エリスは木刀で防御をせず、ましてやバックステップで逃げる事もしなかった。紙一重で避けながら、マキナとの距離を詰めるために一歩踏み出した。
そのエリスの行動をマキナは予測していた。マキナはレイピアの攻撃だけにエリスの目を向けさせ、そこからマンゴーシュで横からの一閃が本命。マンゴーシュは防御のための武器ではない。エリスに見られるのを考慮して、先程の戦闘では攻撃としては使用しなかった。
「私の勝ちです!」
マキナの目にはエリスがマンゴーシュの前に木刀を向けたのが見えた。木刀でマンゴーシュを防げるわけがなく、武器を破壊された時点でエリスの負けだと、マキナは勝利を確信した。
だが、その一瞬の気の緩みが二人の勝敗は分けた。これは武術戦闘であり、武器破壊をすれば決着というわけではない。
マキナがマンゴーシュで攻撃してきた時点で、エリスは木刀を捨てるつもりでいたのだ。
「詰めが甘い!これは気絶かギブアップが勝利の条件。武術とは武器だけじゃないのよ」
エリスはマキナの両腕に手刀を放ち、レイピアとマンゴーシュを落とさせた。そして、マキナの目の前で拳を止めた。
「……っ……そんな」
「まだやる?やるんなら気絶させないと駄目になるけど」
エリスはマキナを気絶させず、ギブアップを促した。それはエリスなりに、次の魔法戦闘に少しでも支障を与えないようにと配慮したのだ。
マキナも武器を拾う事が出来ず、素手で勝てる相手ではない事は理解しており、ギブアップを宣言した。




