8.スティーブと友達
放課後、みんなで校門へ行くと人だかりができていて、私達が近づくとさっと人だかりが避けた。
「もしかして、スティーブ?」と言う声が聞こえて来るから、スティーブだとバレてしまっている。
私は登下校で変装してないから当たり前に目立つけど、変装していてもスティーブは目立っていて、私たちを待ってるスティーブを皆が遠巻きに見ていた。
スティーブは塀に寄りかかってスマホをいじってるだけなのに、なぜか絵になってる。
友達と遊ぶ時以外は専属の運転士さんに送迎してもらっているけど、今日は友達と遊ぶから送迎はいらないと連絡をしていた。
日本で一番偏差値の高い中学だけあって、友達はみんな英語が話せるからスティーブとの会話に困らないのが助かる。
むしろ、いつもの友達と話す時は、お互いに英語の勉強もかねて、英語で会話することの方が多い。
「おまたせ!せっかくの日本旅行なのに、急に呼び出してごめんね。予定とか大丈夫だった?」
「全然問題ないよ。ソフィアに会う以上の大切な用事なんて無いし。むしろ、誘ってくれて嬉しい。」
「私に会うより大切な用事なんてたくさんあるでしょ。」
「僕にはソフィアが何より大切だからね。」
「もう、またそんなこと言って。」
三条が不機嫌な様子で、由奈と清田は興奮した様子でこちらを見ていて、私は慌てて友達の紹介をする。
「私の友達、紹介するね。まずはスティーブのファンの小池 由奈と、清田 誠。由奈と清田は私と一緒にスティーブの日本公演見に行ったんだよ!」
「初めまして、由奈、誠。会えて嬉しいよ。ライブも来てくれてありがとう。スティーブだよ。」
スティーブが由奈と清田に握手する。
「初めまして、スティーブ!ファンなんです!いつも音楽聞いてます!まさかお会いできるなんて、夢みたいです!」
「初めまして!俺もスティーブのファンなんです!尊敬しています!ハグしてもいいですか?」
「もちろん!」
「私もハグしてもいいですか?」
「もちろん!」
清田とハグしたスティーブは、由奈とハグしてから由奈の頬にキスをしていた。
大喜びする由奈と清田を見て、私も嬉しくなった。
由奈は「きゃー」と叫びながら、飛び跳ねて喜んでいた。
「こちらは三条 拓也、岡本 綾、石井 淳二。綾と石井は付き合ってるんだ。」
「よろしくね。スティーブだよ。ソフィアの友達に会えて嬉しいな。」
三条、綾、石井とも握手するスティーブ。
「よろしくお願いします!背高いんですね!」
綾と石井はスティーブに会えて喜んでいたけど、三条は逆に不機嫌になっていた。
「みんなどこ行きたい?」
「私、カラオケに行きたい!でも、世界的歌手のスティーブに歌ってもらうのは悪いかな?」
「由奈は私にはいつもたくさん歌わせる癖にー。」
由奈がそう言うから、私が少しムッとした様子で言うと
「カラオケ、いいね。アメリカだとカラオケバーが一般的だけど、日本のカラオケは個室なんだよね。個室のカラオケは初めてだし行ってみたい。」
「いいの?確かにカラオケだと個室だしプライベートが保たれてるから過ごしやすいんだよね。スティーブはせっかく日本に来てるんだし、行きたいところは無い?」
「東京で行きたいところは一通り行けたし、明日明後日は京都に行くから大丈夫だよ。カラオケに行こう。」
「京都いいなー!私も行きたい。」
「ソフィアも一緒に行こうよ。」
「学校だから無理だよー。仕事でも無いのにサボらないって。仕事をしながら学校の授業についていくのにやっとなんだよ。清田にはよく勉強を教えてもらってて、助かってるんだ。」
「ソフィアは歌手と女優をしながら、学業も頑張ってて凄いよ。」
「スティーブも学業頑張ってるでしょ。」
「僕はもともと大学には進学しないつもりだったけど、ソフィアが頑張ってるのを見てたら、僕も学業を頑張りたいって思えたんだ。僕はソフィアがいるから、今の僕でいられるんだよ。」
「そんな大したことしてないのに、ありがとう。たとえそうだとしても、スティーブが頑張ってることに変わらないし、すごいよ。由奈、せっかくだからスティーブと話しながらカラオケに行きなよ。私は三条達と話してるし。」
「えっ、いいの?で、でも緊張しすぎて何話して何話していいか分からないよ。」
「緊張しないで大丈夫だよ。由奈さえ良ければ、僕と話しながら歩こう。由奈は好きな歌とかある?」
「俺もスティーブと話してみたい!」
と清田もスティーブの隣で話を始めた。
由奈は顔を真っ赤に緊張しながらも、凄く嬉しそうにスティーブと話始めて、清田は憧れのスティーブに積極的に話しかけていた。
私たちはカラオケに向かって歩き始めた。
「ソフィアって本当にスティーブと仲がいいんだな。」
三条が不機嫌丸出しで日本語で話しかけてくる。
「似たような境遇だからかな。話もしやすいし、スティーブは音楽の才能がある上に努力家だから、尊敬してるんだ。」
「やっぱりスティーブが好きなの?」
「4ヶ月前にも、誰にも恋したこと無いって言ったでしょ。スティーブのことも三条達と同じ大切な友達だと思ってるよ。恋愛ってなると怖くてなかなか踏み出せないし。。」
スティーブが好きか聞かれてるのに、私はアランの事を咄嗟に思いながら、返事をした。
アランへの恋心など早く忘れなきゃ。
これは映画のヒロインの感情と自分に言い聞かせる。
「人の心は変わるでしょ?ソフィアもすぐに誰かに恋するかもしれないじゃん。」
「確かにそうだね。人の心は変わるからこそ、恋に踏み出せないのかも。好きでもないのに付き合いたくない。」
「確かに好きでもないのに付き合いたくはないかも。だったら、僕の事を好きになってよ。」
「三条の事はかっこいいと思うけど、好きになろうと思って好きになれるわけじゃないよ。でも、映画のヒロイン役をして、最近は私も恋したいって少しは思うようになったんだ。」
「え、そうなの?ってか、ソフィアからかっこいいって初めて言われた!ソフィアから言われると凄く嬉しい。恋したいって思うようになったって事は付き合える可能性もあるってこと?」
「少しだけね。まだ15歳だし急いでないけど。私たちももう少しで高校生だし、高校生になったら恋してみたいなぁくらいは思ってる。」
「じゃあ、僕と恋しよう。ねっ。」
「ふふふ、考えておくね。」
三条が軽い感じで言うから、私も軽い感じで返事をした。
「私ね、1年半前のどん底の気分だった時に三条に救われたんだ。三条が落ち込んでる私のことを心配してくれて、電話してくれたの覚えてる?」
「もちろん、覚えてるよ。」
「あの時、本当に嬉しかったんだ。不安で押しつぶされそうになってたのに、三条達さえいてくれればいいって思ったら、凄く心が軽くなったの。私、三条達に依存しちゃってるのかな。だからね、三条と付き合って、三条がいつか私から離れて行っちゃうのが怖いのかもしれない。付き合って別れたらって考えちゃう。」
三条は顔を赤くして
「そんなにソフィアが僕を想ってくれてただなんて、思いもしなかった。嬉しいよ。でも、例え付き合って別れたとしても、ソフィアは僕の大切な友達なのは変わらないよ。ソフィアを大切にするし、どんなソフィアも受け入れたい。僕と付き合って欲しい。」
私が顔を赤くして三条を見ると、
「ソフィアの赤い顔、初めて見た。」
と凄く嬉しそうに三条が微笑んだから、慌てて顔を逸らした。
学校の近くのカラオケに着くと、スティーブは興味津々で周りを見ていた。
個室に入ってスティーブがサングラスとマスクと帽子を外した瞬間、由奈と清田が
「本物だ!本物だ!かっこいい!超かっこいい!」
と騒いでいて、私とスティーブが歌うと、みんなが大盛り上がりしていた。
本当にスティーブはかっこよくて、ついつい見惚れてしまう。
スティーブは私に見惚れられると嬉しそうに笑うから、いつも慌てて目を逸らしてしまう。
彼の余裕な感じも何となく悔しい。
スティーブはたくさんの女の子から見惚れられるの慣れてるんだろうな。
そして、私とスティーブのそんなやりとりを不機嫌な様子で見てる三条。
でも、綾と石井もスティーブを見てかっこいいと見惚れてたし、非の打ち所がない完璧な美形を目の前にして見惚れるなと言う方が無理だと思う。
三条だってスティーブがサングラスとマスクと帽子を外した瞬間に、イケメンすぎたみたいで固まってたしね。
アランもそうだけど、同じ人間だとは思えないくらいかっこいい。
カラオケは特にスティーブとのコラボ曲を、スティーブと私で歌ったのが一番盛り上がった。
私とスティーブ以外も歌いなよと声をかけても、「スティーブの前で歌うだなんて恥ずかしすぎてできない!」と皆に断固拒否された。
「私の前でいつも歌ってるじゃん!」と言っても、「それとこれとは違う!」と言われて、なんか納得できなくて私が拗ねるとみんなに笑われた。
結局、スティーブが一緒に歌おうと、由奈と清田を誘って、3人で歌ったりして、由奈と清田が感動しすぎて泣いたりしてた。
スティーブが2人を軽くハグしたり、2人が大喜びしてる姿を見て、私もスティーブにファンサービスありがとうございますって感謝した。
スティーブに対して緊張していた友達も、少しずつ緊張もほぐれてきて、カラオケの後はみんなでプリクラ撮ったり、クレーンゲームで遊んだりした。
綾と石井が2人きりで撮ったプリクラが目に入ったら、キスしてる写真で私が固まってしまい、それに気づいたスティーブが写真を覗き込んで
「ソフィア、僕たちもキスしながらプリクラ撮ろうよ。」
と言ってきたので、
「キスしないよ!」
と言うと、三条と清田も便乗して私とキスしながらプリクラ撮りたいと言ってきたから、同じく全力拒否した。
スティーブは「ソフィアにキスしてもいいって思ってもらえるように頑張る」と言ってから
「三条と清田って、ソフィアのこと好きなの?」
とサラッと爆弾を落とし、
「そうですよ。僕はソフィアの事が好きで告白もしているし、ソフィアと付き合いたいと思ってます。」
「俺もソフィアの事を愛してるし、ソフィアに付き合いたいと想いも伝えてます。」
と2人が返事すると、
「へえ、じゃあ僕たちはライバルだね。でも、僕はソフィアを誰にも渡す気は無いよ。」
とスティーブが言い、
「僕もですよ。」
「俺もですよ。」
と2人が返事をして、どうしてこうなったと私は頭を抱えた。
「でも、スティーブ程のイケメンに勝てる気がしない。。」
と清田が落ち込んでいた。
由奈が
「私がソフィアだったら絶対にスティーブと付き合うのに!」
と言って、スティーブが
「由奈、見る目があるね!ソフィア、もう僕と付き合っちゃおうよ!」
「今は誰とも付き合いません!…でも、高校生になったら誰かと付き合いたいかな。」
と言ったら、「本当に!?」とスティーブと清田が驚いて、期待の眼差しを向けてきた。
結局、スティーブ、三条、清田それぞれと私が頬にキスをし合ったプリクラを撮った。
早くアランへの恋心を忘れないと。。
ファミレスで夕食を食べて、みんながそれぞれ帰るためにタクシー乗り場でタクシー待ちを始めた。
「今日は本当に楽しかった!誘ってくれてありがとう!カラオケ行って、プリクラ撮って、UFOキャッチャーして、ファミレスでご飯食べて、普通の日本人になった気分だよ。こんな経験は初めてだ。またみんなと遊びたいよ!」
「私もみんなといると普通の女子中学生になれるから、いつも楽しいんだ。スティーブも楽しんでくれて嬉しい。スティーブが日本に来た時は、またみんなで遊ぼう!」
「私もスティーブと遊べて、今までの人生で一番嬉しかったです!ありがとうございました!もう思い残すことはありません!」
「由奈、死なないで。」
「俺も、スティーブと遊べて人生で一番嬉しかったです!ありがとうございます!尊敬するスティーブがすぐ近くで歌ってる姿を見れて、一緒に歌えるなんて夢みたいでした!凄くかっこよかったです!今日のこと一生忘れません!」
特に由奈と清田はスティーブのファンだから興奮気味に話していた。
綾と石井も、なんだかんだと三条も楽しかったようで、みんなでまた遊ぼうと言って解散した。
またすぐにSNSでスティーブが私達と遊んでいた事が騒がれていた。
それからスティーブが来日した時は、みんなで遊ぶようになった。




