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6.初めてのヒロイン役

中学3年生の4月、私は初めて映画のヒロイン役をした。


1年ぶりに会うアランは青い瞳に金色の瞳で本物の王子様のような見た目で、西洋の騎士の姿がとても似合っていた。


そんな彼と恋人役になり、恋愛経験の無い私はドキドキしてしまう。


役になりきっていると彼が愛おしいくて堪らない。


私はアランに恋をした。


叶う事のない初恋。


これが恋とものなのかと、映画のヒロインを通して感じた。


実際に一緒に演じてみて、彼が天才なだけでは無く、努力家である事を知った。


プライベートでは色々な女性とのキス写真、デート写真を撮られたりする奔放な人だけど、撮影現場では本気で役に向き合っているのが分かる。


正に一流の俳優で、彼がトップスターである事に納得したし、俳優として尊敬した。


彼のヒロイン役ができるだなんて、とても光栄な事で嬉しかった。


こんなに夢中になって演技に没頭したのは初めて。


アランは私の演技の練習にも、何度も付き合ってくれた。


撮影でアランとファーストキスもした。



3ヶ月の撮影はあっという間に終わり、打ち上げの時に事件は起きたのだ。


アランにホテルのルームキーを渡され突然キスをされて、アランの頬を叩いて逃げた。


その後はしばらく連絡は無くて、私はまた日本とアメリカを行き来する日常に戻っていた。


アランにキスをされたなんて夢だったのではと思うような日常。


私はアランへの初恋を早く忘れようとした。



撮影が終わってすぐに日本に帰国して、いつもの友達に会って、学校でランチを取った。


「久しぶりー!」


「ソフィア久しぶり!会いたかったよー!」


「私も会いたかった!みんなに会うと、なんか帰ってきたってほっとする。みんな変わりなかった?」


「俺たちは相変わらずだよ。これソフィアが休んでた間のノート。」


「ありがとう!いつも本当に助かる!」


「撮影はどうだったの?」


「撮影の内容は言えないけど、女優として成長できたと思う。こんなに演技に没頭したのは初めてなの。みんなすごいけど、特にアランの演技力は、ずば抜けてたわ。彼のの演技に、皆が引き込まれるの。」


気がつくとアランの事をたくさん話していた。


「もしかして、ソフィアってアランの事好きなの?すっごいイケメンだもんね。」


綾がからかうから


「えっ、違うよ!俳優として尊敬はするけど、それは無いよ!あんな女ったらし!」


私は初恋である、自分自身のアランへの恋心を否定した。


「えっ、女ったらしって何かあったの?噂だけじゃ無くて本当に女たらしなの?」


「じ、実はアランに突然キスをされたから、頬を叩いて逃げちゃった。撮影の打ち上げの時だったから、それ以来会っても無いけど。」


私が少し小声で言うと、みんなに「えぇ!」と驚かれた。


「遊び人って噂本当だったんだ。」


「突然キスするだなんて許せない。」


「大丈夫?ソフィア。」


みんなはアランに怒ったり、私の事を心配してくれたり、三条と清田は「俺、僕がそばにいれば…」と落ち込んでいた。


「でも、何で突然キスなんてされたのに、アランの事を嬉しそうに話すんだよ。」


清田が少し怒った声で言うから


「いや、確かにプライベートはあれだけど、俳優としての彼は純粋に尊敬してるの。映画に対する情熱は誰よりもあるし、天才だけじゃ無くて努力家なのよ。」


また私がアランを褒めると、更に三条と清田が嫌そうな顔をした。


「って、ごめんね。久しぶりに会ったのに。こんな話よりも、みんなが何してたのか知りたいな。」


私は無理矢理話題を変えて、それ以降は撮影の事を話すことはほとんどなく、いつも通り学校生活を楽しんだ。



中学3年生の夏休みになると、私はワールドツアーライブをした。


スティーブもゲスト出演してくれたりして、二度目のワールドツアーも大成功に終わった。


2月は、スティーブのエスコートでグラミー賞に出演し、今年も賞をもらった。


俳優のアランは3歳年上だけど、歌手のスティーブは2歳年上で週1回くらい電話をするようになっていた。


「3月に日本にプライベートで遊びに行くから、ソフィアのレコーディングの時に会いたい」と言われて会う事になった。


スティーブは音楽の才能があるし、スティーブがいると作詞作曲が捗って、共同で音楽を作ったりする事も多くなっていた。


コラボ曲というよりは、私の曲やスティーブの曲を、お互いが聞いて意見を言い合ったり、お互いにリスペクトするような事が多い。


ただ、スティーブが私に好意を抱いているのは知ってるけど、恋愛となると私が尻込みをしてしまっている。


甘い雰囲気になりそうになると私が一歩引いて、スティーブもそれ以上は追求しないでいてくれる。


それがありがたいけど、申し訳ない。


スティーブは優しい上に、世界的なスターだけあって、音楽は一流だし、妥協をせずに挑戦し続ける姿はとてもかっこよくて、アランに負けず劣らずの美形だ。


こんな整った顔の人がいるんだと会う度に思う。


スティーブには世界中にファンが大勢いるし、なぜ私と付き合いたがってるのかも不思議に思う。


最初にレッドカーペットを一緒に歩いて以来、私とスティーブが付き合ってるのでは?と聞かれる事が多いけど、仲のいい友達だといつも答えてる。


土日はスティーブとスタジオで会って、アドバイスをもらったりしながらレコーディングもした。


やっぱり彼といると、自分1人ではできないような音楽作りができるし、彼は天才だなと感じる。


「やっぱりソフィアと曲作りは凄くいいね。」


「私もスティーブと曲作りできて、良かった。自分1人ではできないようないい曲ができたよ。来てくれて、ありがとう。でも、せっかくプライベートで日本に来たのに、日本でも仕事なんてして良かったの?」


「日本に来たのはソフィアに会いたかったからなんだ。」


「えっ、私に?」


さりげない一言に、ドキッとしてしまう。


「あと、日本のアニメ、漫画、ゲームも好きでね。だから明日からは観光も楽しもうと思ってるよ。日本人は他の国と違って、僕に気づいても遠巻きに見るだけが多くて、サインや握手を求めて囲まれることも圧倒的に少ないんだ。」


「全然そういう風に見えない!でも、日本人としてスティーブが日本の文化を好きでいてくれてるの嬉しい。確かに海外のファンは私たちのプライベートでもお構いなしで凄いよね。その点、日本は本当に生活しやすいよ。観光楽しんでね。」


「ありがとう。日本食も大好きで、特にラーメンは来ると何度も食べちゃう。ソフィアおすすめのラーメン屋さんってある?」


「あるよー!◯◯ってお店なんだけど、ここからも20分くらいで行けるよ!お腹も空いたし、良かったら一緒に…て、あっ、ごめん、私ったら何言ってるんだろ。」


いつも男性と2人きりで出かけないように気をつけてるから、スティーブの誘いはいつも断ってるのに、私から食事に誘ってしまった事に慌てた。


私は父親以外の男性と2人きりで外食なんてした事ないし、スティーブと2人きりは無理なんじゃないか。


「え、ソフィアとラーメン食べに行けるだなんて、嬉しいよ。ソフィアが良ければ食べに行きたい。」


スティーブは凄く嬉しそうに言うから、何となく申し訳ない気持ちになる。


「いや、でも誰に見られるか分からないし。」


「一緒にラーメン食べるだけだよ。ばっちり変装もして行くし、大丈夫だよ。」


「うーん、じゃあ、他の人も誘って、みんなで行こうかな。」


「ごめん、我儘かもしれないけど、ソフィアと2人で行きたい。」


「いや、でも。。」


「ラーメン食べに行くだけでもダメ?」

 

「分かった。一緒にラーメン食べに行こう。」


「やったぁ!凄く嬉しい!」


スティーブが凄く嬉しそうに微笑むから、私も嬉しくなった。


「話変わるけど、ソフィアって最近アランが主演の映画のヒロイン役したでしょ?」


「うん、したよ。あんなに役に熱中したのは初めてで、凄くいい経験になったよ。」


「そうなんだ。でもさ、アランって女ったらしって噂聞くけど、大丈夫だった?」


「もしかして、心配してくれてたの?」


「もちろん心配するよ。それに芝居って分かってても、ソフィアがアランのヒロイン役なんてちょっと嫉妬しちゃう。」


普段見せないようなスティーブの拗ねた顔が可愛らしくて、少し笑ってしまうとプイッと顔を逸らされた。


「アランの事は俳優として尊敬してるけどね、女好きは本当なんだろうなって感じはしたよ。打ち上げの時にアランに突然キスされたから、彼の頬を叩いて逃げて来ちゃってそれっきりだけど。」


「えっ、ソフィア、キスされたの!?もしかして、ファースキス?」


「ファーストキスはアランと撮影でしたから、ファーストキスでは無かったけど。。」


「あ、そうだよね。そっか、ヒロイン役だからキスもするよね。。」


スティーブが落ち込んでるのが分かった。


「でも、突然キスするだなんて許せない。大丈夫だった?」


「びっくりはしたけど、私は大丈夫だよ。むしろ頬を叩いた事で何か言われないかヒヤヒヤしたくらい。心配してくれてありがとう。」


「ソフィア凄く可愛いし、男の人にキスされないように気をつけなきゃダメだよ。」


「ありがとう、でも、突然ホテルのルームキー渡されて、びっくりして固まったら突然キスされて、すぐに頬を叩いて逃げ出し…」


「え、ホテルのルームキー?最低だな。」


ムッとした様子のスティーブは初めて見たから驚いた。


スティーブにも私のアランへの恋心を否定して、こうやってアランを好きじゃないと自分に言い聞かせれば、そのうちこの恋心も忘れられるような気がした。


今度からはもっと気をつけると約束をして、無理矢理話題を変えて、私たちはラーメン屋さんに向かった。

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