3-12.忘れられない
映画の撮影は順調に終わり、満足のいく作品が撮れた。
特にアクションシーンは迫力満点に撮影ができたし、間近でロバートのアクションをたくさん見れた事は幸運な事だった。
その間にスティーブの実家へ行っり、スティーブの家にも2回泊まり、日本へ帰国する為にスティーブに空港まで送ってもらった。
離れるのが嫌で、私達は人目も気にせずに抱きしめ合いながらキスをした。
初めての私達のプライベートなキス写真は、たくさんの注目を集めた。
私達は誰かに質問されても、お互いを愛している事を伝えた。
それからは、私は受験勉強に専念する生活を送った。
三条は、キスをする前と同じように接してくれる。
時々みんなの前で三条から「愛してるよ。僕と付き合おう。」アピールは相変わらずされるけど、私も今まで通り軽く受け流す。
三条とキスをしたのは夢だったのかなと思うくらい今まで通りの日々。
綾と由奈と私の3人の時に
「スティーブとお泊まりデートしたの?インターネットに乗ってるよ。」
と言われて
「ついにソフィアとスティーブも大人の仲間入りだね。」
とからかわれて、顔が赤くなった。
学校から帰る時に忘れ物をして教室に戻ると、扉の近くで私の事を男子達が話してる声が聞こえてきた。
「ソフィアってスティーブとお泊まりデートしたんだろ?」
「スティーブとキスもしてたよな。」
「スティーブはいいよな。あのソフィアとやれるだなんて。」
「俺いつもソフィアで抜いてる。」
「マジで?俺もだ。」
「俺もだよ。一度でいいからソフィアとしてみたい。」
部屋に入るのをやめて引き返そうとした時に、
「そう言う話をするのはやめろよ。」
怒った様子の三条の声が聞こえてきた。
「なんだよ、嫉妬か?三条はソフィアのこと好きだもんな。」
「確かに、僕はソフィアが好きだし嫉妬もする。でも、そんなことよりソフィアが嫌がるだろ。」
「お前はソフィアとやりたくないのかよ。」
ふざけた様子の男子に
「二度とその話をするな。」
と更に怒った三条の声が聞こえる。
「わ、分かったよ。もう言わないから、マジになんなって。」
男子が言った。
こっちに歩くてくる足音が聞こえて慌てて逃げようとしたけど、すぐに部屋から出てきた三条とばっちり目が合ってしまった。
「え、ソフィア?」
驚いて目を見開く三条。
「え、ソフィア?」
男子達が部屋から出てきて
「うわ、マジだ!お、俺帰るわ。」
「俺も」「俺も」と慌てて帰っていく男子達。
「ご、ごめん、立ち聞きするつもりは無かったんだけど、たまたま忘れ物しちゃって。。」
私が焦って言い訳をすると
「…どこから聞いてた?」
「男子達が私の話してるのを聞いたから、引き返そうとしたら三条の声が聞こえて。。」
「俺こそごめん。ソフィアに嫌な話を聞かせた。」
「三条が謝ることなんてないよ!気にしないで。私も気にしてないし。」
「本当に?」
「ああいう話されるのも慣れてるし、大丈夫だよ。それに、私は三条が私の為に、怒ってくれて嬉しかった。ありがとう。」
「慣れてるって。。お礼を言われるようなこと、してないけどね。でも、ああいう話されるのに慣れていたとしても、嫌なものは嫌だよね。」
「そうだね。クラスメイトにそう言う目で見られてたんだって分かって、正直言っていい気分じゃないよ。」
「そうだよね。守ってあげられなくて、ごめん。」
「三条はいつも私を守ってくれてるよ。今だって私の事を守ってくれた。」
「でも、僕はソフィアを泣かせた。」
「…あれは、私も悪かったの。だから、三条だけが悪いんじゃない。私も三条もあの事は忘れるべきよ。私は三条の幸せも願ってるわ。忘れ物、取って帰るね。」
「…そうだね。僕も帰るよ。」
三条視点
「ごめんなさい、私のことは諦めて。」
僕の事を好きって態度をとりながら、ソフィアが諦めてと言う。
「ソフィアはひどい人だ。忘れられない僕に、忘れろって言う。諦められない僕に、諦めろって言う。」
「愛してるんだ、ソフィア」
熱に浮かされたような初めて見るソフィアの表情に僕の理性は崩壊して、僕は衝動的にキスをした。
拒まれるかと思ったのにソフィアは僕のキスを受け入れてくれた。
何度も、何度もソフィアにキスをする。
もっとしたい、次第にキスは深くなる。
僕はすごく幸せだった。
「愛してる。」
何度もソフィアに愛を囁きながら、夢中でキスをした。
6年間近く片想いしている愛しい彼女が、僕を初めて受け入れてくれた。
正直、このまま彼女を押し倒してしまいたい衝動に駆られたけど、僅かに残った理性が僕を止めた。
キスをやめても、ソフィアは蕩けそうな顔で僕を見つめていた。
ソフィアはきっと僕が好きだ。
僕の事が好きじゃなきゃ、キスをしない、そんな表情で僕を見ない。
「僕のキスを受け入れて、それでも僕に忘れろって言うの?僕に諦めろって言うの?」
彼女はハッとした表情をして、
「ごめんなさい、忘れて。私の事は諦めて。私はスティーブを愛してる。」
と言った。
床に叩き落とされた気分だった。
「忘れられないし、諦められないよ。」
僕はもう一度キスをしようとしたけど、今度は彼女に拒まれてしまった。
「それでも、私がずっと一緒にいたいのはスティーブなの。」
「さっきのキスも忘れろって言うの?」
「ごめんなさい、忘れて。」
「ソフィアは忘れられるの?」
「…キスはするべきじゃなかったわ。」
「僕とキスしたこと後悔してるの?」
「後悔してるに決まってるよ。私はスティーブに合わせる顔がない。。」
僕にとってとても幸せなファーストキスを、彼女は後悔してる事が苦しかった。
「僕はソフィアにキスしたこと、後悔してないよ。僕の事を見てよ、ソフィア。ソフィアの気持ちを知りたい。」
「…私は三条のことが好きよ。でも、それ以上に私はスティーブを愛している。彼とずっと一緒にいたい気持ちは変わらないわ。」
「僕に好きと言いながら、彼を愛してると言うんだね。初めてソフィアに好きって言われて、喜んでいいのか悲しんでいいのか分からないや。」
「お願いだから、このことは忘れて。」
「忘れられるわけがないよ、ソフィアがこの事を忘れられないようにね。」
「それでも私はスティーブが大切なの。彼を傷つけたく無い。この事はスティーブには言わないで。」
「僕よりもスティーブが大切?」
「三条よりもスティーブが大切よ。」
はっきりと僕より彼が大切、愛してると伝えられて、凄く悲しかった。
「…スティーブには言わないよ。でも、僕はソフィアを諦められない。」
彼女は泣きながら、
「私はスティーブに合わせる顔が無いわ。それでも、彼を愛してるし、離れたく無いの。」
と言った。
僕がソフィアを泣かせてしまったことに、申し訳ない気持ちになった。
「泣かないで。泣かせるつもりは無かったんだ。泣かせて、ごめん。ソフィアがスティーブを愛してるのは分かってたのに、ごめんね。」
彼女が泣き止むまで抱きしめ続けた。
「ごめん、僕のこの想いは、君を苦しませるだけだ。スティーブとソフィアは愛し合っているのに、僕は君たちを傷つけた。」
「私もごめんなさい。私は三条にたくさん救ってもらったわ。三条は私の心の支えだったの。ありがとう、もう大丈夫。戻ろう、みんなも心配する。」
僕はソフィアを幸せにしたいのに、僕の気持ちは彼女を苦しめてしまう。
ソフィアがスティーブを愛している事は、痛い程分かった。
僕は彼女の幸せにするために、諦めるしかないだろうか。
それなのに、僕は諦められないし、忘れられない。
諦めたくないし、忘れたくない。
あんなに幸せなキスの感触、抱きしめた時の感触、僕を見つめるソフィアの瞳、どれも忘れられないし、忘れたくないんだ。
僕はソフィアの幸せのために、今まで通りに振る舞った。
インターネットにはソフィアとスティーブのお泊まりデートの記事、キスの写真がたくさん載るようになり、僕はひどく落ち込んだ。
スティーブと手を繋いで幸せそうに微笑み合う2人の写真。
2人は愛し合ってるんだって見せつけられてる気分。
ソフィアはスティーブに抱かれたの?
嫉妬で心がいっぱいになる。
僕はスティーブになりたい。
4月になり、ソフィアが日本に帰国して、本格的に受験勉強を始めた頃、
学校から帰ろうとすると、男子達がソフィアに対する下心だらけの会話をしてるのが聞こえた。
僕が怒ると、会話は終わったけど、教室から出た瞬間にソフィアと目が合って、凄く驚いた。
ソフィアは慣れてるって言ってたけど、たくさんの男性からイヤらしい目で見られるのが嫌じゃないはずがない。
「守ってあげられなくて、ごめん。」
と言っても
「三条はいつも私を守ってくれてるよ。今だって私の事を守ってくれた。」
と言われた。
「でも、僕はソフィアを泣かせた。」
「…あれは、私も悪かったの。だから、三条だけが悪いんじゃない。私も三条もあの事は忘れるべきよ。私は三条の幸せも願ってるわ。忘れ物、取って帰るね。」
「…そうだね。僕も帰るよ。」
ごめんね、僕は君とのキスをずっと忘れられないよ。
僕はあの時、最高に幸せだったんだ。
僕の幸せはソフィアのそばにいる事だ。
ソフィアにも忘れて欲しくないよ。
ソフィアもキスに応えてくれた。
僕はソフィアを諦められないんだ。
ずっと愛してる。
僕がソフィアとのキスをスティーブに話したらと思う事もあるけど、それは彼も彼女もとても傷つけるって分かってるからできない。
無理矢理僕のものにするよりも、彼女には幸せに笑っていてほしい。
だから、僕はソフィアとのキスは無かったように振る舞う。
今まで通り彼女に愛を囁いて、軽く流される関係。
あのキスの瞬間だけは、彼女は僕のものだった。
とても幸せな思い出。
いつか彼女に僕を選んでほしい。
でも、スティーブとソフィアが別れる事はあるのだろうか。
悔しいけど、彼はとても素敵でいい男だ。
友人としても尊敬してるし、彼ならソフィアを幸せにできると思う。
彼は僕と似てる。
ソフィア以外を愛せないし、決してソフィアを諦められない。
ごめんね、ソフィア。
僕は君の幸せを願っているのに、君を諦められない。




