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鋼女神話アサルトアイロニー  作者: ハルキューレ
天空編第二部~凶終檄末~
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第四十七海路 1 対話

「……祭りかなんかか?」


 真夜中、外の騒がしさに眠りを妨げられた鬼丸は、八型改のコックピットから飛び降りた。

 コルセアたちがもう一機のユートピアを海上に落とし、機能を停止させてから数時間後、ギリギリ耐えていた睡魔に打ち勝てなくなった鬼丸達は、八型改の中で寝ていた。しかし眠りが浅くなったタイミングで、外が騒がしいことに気付いた。


(……コルセアの仲間が、船整備してる)


 突如、脳裏に響いた声に驚いた鬼丸であったが、それが自身に埋め込まれた人工知能、フェンリルのものであることに気付いた。


「成程ね。といってもアイツが本当に何者なのか、余計わかんなくなったな」


(……紫水族、ファーストラグナロク前後に現れた、人に近い生命体。波を自在に操る力で、多くは人間社会に溶け込んだ。ヘルの持ってた情報には、こう書いてある。もっとあるけど、必要か?)


「とりあえず今はいい。後でまたゆっくり聞かせてくれ」


(わかった)


 我ながら、順応しすぎではと思いながら、鬼丸はドッグを後にする。


「所でオーガから端末を預かったんだけど、コレ何かわかるか? お前が必要な時に使うって言ってたけど」


 鬼丸は懐から、オーガから渡された端末のようなものを取り出す。見ただけでは仕組みや用途はわからず、途方に暮れていた。


(……知ってる。でも俺は、それを使いたくない)


「教えてくれ。コイツは何なんだ?」


(……紅蓮、君を殺害するものだ。リミッターを外し、権限や性能を上昇させる。そしてそれを支えるバッテリーでもある)


「バッテリー、それがどうして俺を」


 言われてみれば、このバッテリーは見た目以上に重い。それだけの代物であると言われて、納得できるくらいには。


(今はあくまで共生関係を保ててる。でも、機能拡張と電力の供給によって俺は、宿主の脳を喰らう。正確には、脳の細胞を変化させ、俺の一部にする)


「そんなこと、出来るのか?」


(信号さえ受容体に届けられれば、出来る)


「それをすれば、ユグドラシルに勝てると思うか?」


(……だからオーガは、俺にそれを託した。誰にも彼にも、わからないから)


 ふと促されたような気がして、背面を見る。そこには白いマジックで雑に書かれたFの文字。


(もう一つにはYが。そしてーー)


「もう一個はHだろ。お前たちの頭文字」


 鬼丸はそのバッテリーを懐にしまうと、海岸へ向かい歩みを進める。


(捨ててくれ)


「コイツは預かっとく。観賞用だ、安心しろ」


(それ、俺には効かない。紅蓮の観賞用は、使う予定のもの。ただそのタイミングがないだけ)


「厄介だな。なんでもわかんのか?」


(紅蓮の知ってる紅蓮の事も、紅蓮の知らない紅蓮の事も)


 冷静に考えてみれば、自分の脳に埋め込まれているなら、おかしなことではないだろう。ただそうなると、色々と面倒くさいことになる。


(紅蓮、君も気付いてるんだろ。自分の気持ちと、残り時間)


「人間であるうちに言質取れって言いたいのか? 卑怯じゃないか」


 今まで会話をすることが出来なかったフェンリルと、ここまで安定した意思疎通がとれていることが、決定打となった。自分はもう、後戻りのできない領域に片足を踏み込んでいる。


(紅蓮が卑怯だなんだ言っても、説得力あんまりない)


「うるせぇな。とにかくコイツもバッテリーも、全部俺がタイミング見るから、下手に手出しすんなよ」


 自分でも、都合が良すぎると思っている。ただ彼なら、自分の存在自体に後ろめたさを持っているフェンリルなら、同意してくれると確信していた。

 その後、鬼丸の予想通りフェンリルがこの件について言及することはなくなった。


「他にヘルが持ってた情報とか、ないか?」


(……ヴォルウェルクについてなら、説明できる)


 ヴォルウェルク。対終末用決戦兵器とも呼ばれた機体の名前だ。


(あれはオーガとオーマが作った、最強の機体。といっても作ったのはオーガで、資金面をオーマが担当しただけ)


「最強って言い切れるのか?」


(言い切れる。あの機体は、全ての陸戦を凌駕している。あれを動かせるなら、どんな大群相手でも傷一つ付けずに勝てる。それぐらい、危険な機体)


「そんな機体、なんでオーマは前線投入してないんだ?」


(……オーガの承認がないと動かない。オーガがあの船で自由に出来ているのも、そのせい)


 オーガを完全に消滅させてしまえば、あの機体を動かすことすら出来ない。いわばあの機体は、オーガの生命線。既に死んでいる人間にこの表現が正しいのかはわからないが。


「じゃあアレを取りに、またワイルドハントに戻んなきゃか」


 面倒くさそうに空を見上げ、大きなため息をついた鬼丸。二度とあんな場所には戻りたくないと思った矢先にこれだ。


(その必要はないと思う)


「確かに、俺達には八型改がいる。ただそれだけの代物なら、あのエリート様が欲しがるだろ」


(確かに、彼女はきっとあの機体を欲しがる。でももう、それは叶わない)


「どういうことだ?」


(ヴォルウェルクとオーガの反応が、消滅した)


ここまで読んでくださりありがとうございました。この作品への感想、レビュー、評価などを何卒宜しくお願い致します。

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