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鋼女神話アサルトアイロニー  作者: ハルキューレ
天空編第二部~凶終檄末~
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第四十六海路 1 二人で

「ここは……」


 気が付くと私は、暗く、狭い部屋に居た。他に人の気配はしないのに、頭に知らない声が響く。

 その声は、自分が私に寄生した、地球外生命体だと名乗った。でもそんなこと、一瞬で嘘だとわかった。

 だってその声は、泣いていた。


「貴方、名前は……」


 戸惑ったその声は、溜息をつくと、諦めたように自分の素性を語り始めた。

 曰く、死の国の女神、ヘルの名を冠して造られた、上級人工知能である、と。その言葉は、嘘偽りなく感じられた。そして私は、そんな彼女の器として作られた、とある人間のクローン体。そんな彼女が停止すれば、私は自分の生命維持すら出来ないなんて、なんて酷い皮肉だろう。


「して、小娘。名は?」


「わかって聞いてるんでしょ。性格悪いわよ」


「なら開発者にでも文句を言うといい」


 振り返ると、私が寝ていたと思われるカプセルがあり、その手前には、キー1010010111101011という識別番号。


「……そう、なら、私の名前はーー」


 貴方が死の国の女神を名乗るのなら、私は死そのものになろう。

ーーー

「まさか、あの時のオペレーターが貴方だとは。改めて、感謝します」


「いや、俺はただ自分の仕事をしただけだし……てか俺、オペレーターじゃなないんだけどな」


 遠くから新井の叫び声が聞こえる桟橋の上で、キルとユナは互いに頭を下げあう。緊張からか、ユナの口癖である「〇〇ッス」が消え去っている。


「……」

「……」


 沈黙が、波に乗ってやってくる。


「な、なんか奇跡みたい、ですね」


 沈黙に耐えられなくなったユナは、ゆっくりと口を開く。その言葉の意味が理解出来なかったキルは、首を傾げる。


「いやだってあれだよ。偶然墜落した場所が、紅蓮さんの居た場所だったなんて。俺は君を追いかけてきたからアレッスが」


「やはり、そうですよね。あまりにも、あまりにも不自然過ぎます」


「え?」


 キルの反応が思っていたものと違かったため、目を丸くして真意を聞こうとするが、彼女は考え込み始め、何やらぶつぶつと呟いていた。


「やはり、ナイトが。ならあの時……」


「あの~、キル……さん?」


 手を伸ばしたユナだったが、彼女と自分の間に大きな溝を感じていたため、彼女に触れることは出来なかった。それは技能であったり、見ている世界であったり。


「こればかりは、私だけではわかりませんね。……あ、ごめんなさい。考え込んでしまって」


「あ~、いや大丈夫! 俺も、ちょうど考え事、してたから!」


 見え見えの嘘で取り繕う。咄嗟に出た身振り手振りが、わざとらしさをこれでもかと演出する。そんなユナに、キルは顔を近づける。


「何か、私がお手伝いできることがあれば仰ってください。ヘルも、貴方には感謝しているので、快く手伝ってくれるでしょう」


 引きつった笑顔でごまかすことしか出来ないユナには、彼女らのその純粋さが辛かった。

ーーー

 数時間後、カイナ島中心部にて。


「これまでの経緯を纏めたい。ただその前に、お前らに紹介しておきたい人物がいる」


 新井に促され、一同の前にあらわれたのは、脱いだ軍帽を胸のあたりで抱えたエリスであった。彼女の胸は、コルセアのものとは相対的に、年相応といったものであった。


「エリス・アメジスタ。アメジスタ帝国女帝にして、そちらのマリア・アメジスタの妹に当たります。カイナ島の皆さん、改めましてこんにちは」


 無表情のままの視線は、コルセアの方へと向いており、彼女の目の前に座っている鬼丸たちには、目もくれていない。


「なんか、お高く留まってないか? どっかの誰かさんみたいに」


「あら、アンタの知り合いにそんな人、いるのかしら?」


 本人に聞こえないようにクリスタへ耳打ちした鬼丸は、「お前だよ」というツッコミを必死に飲み込みながら、続ける。


「てかマリアって誰だ?」


「それ、アタシも思ってた」


 二人の視線は自然と、エリスの視線の先に向かった。そこには胡坐を掻き、頭を掻きむしり、乾燥イカをかじりながらビールに手を伸ばそうとしているコルセアの姿があった。

 二人の視線は元来た道を戻り、そしてお互いに視線が合う。


「んで、結局マリアって誰?」


「さあ。彼女の視線の先、辿ってみる?」


 クリスタの提案に多少既視感を覚えながらも、鬼丸は頷き、エリスの視線の先を見る。そこには、横になり、乾燥イカをかじりながらビールを飲み、汚い音を立てながらゲップをするコルセアがいた。


「……なあクリスタ、マリアって誰だ?」


「そろそろアタシ達、現実に向き合ってもいい頃だと思うわ」


 二人はコルセアに視線を固定したまま、会話を続ける。


「おいおい、冗談きつくないか? てか現実がいつも正しいとは限らねぇし」


「駄目よ鬼丸。覚悟を、決めましょう」


「ッ、わかったよ。俺はもう、逃げない。だからーー」


「反応も、二人で、ね。行くわよ……」


 二人は呼吸を合わせ、一挙手一投足までリンクさせながら立ち上がり、コルセアを指さす。


「「マリアって、おアンタかよ!!」」


 二人の大声に、耳を塞いだコルセアは、今までで一番大きなゲップをしたあと、座りなおす。


「おう。文句あるか?」


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