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鋼女神話アサルトアイロニー  作者: ハルキューレ
天空編第二部~凶終檄末~
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第四十五空路 1 イン・トゥ・ザ・ブルー!


「ヴォルウェルク……」


 鬼丸がそう呟いた瞬間、再び船が大きく揺れる。


「計算が……狂った?」


『親玉の襲来なんぞ、誰が予測出来ようか』


 オーガは船の外の映像を表示する。そこには、真っ白なユートピアに交じり、一騎当千の活躍をする黒い機体の姿が見えた。

 その機体は八型同様、女性的な機体でありながら、イノセント・バルキリーのスラスター部分を、翼を捥ぐように残酷に破壊し続けている。


「ナイツは何をしているの?」


『オーマの事だ。ふんぞり返ることしか出来ず、あの人材を持て余しているのだろう』


「精鋭が聞いて呆れるわね」


『気が合うな。とにかくお前らは、ヴォルウェルクの回収に向かえ。残りの奴らは……パラシュートでの降下。なに、ヴォルウェルクで護衛し続ければ問題はないだろう。あの機体は二人乗りだからな』


 副座式、そう表示された機体は、二人乗りにしては大きい。


「皆さん、移動しましょう。あの黒い機体がいる以上、この船が落ちる可能性だってあります」


ーーー


 キルの誘導で、隠されていた格納庫前までやってきた鬼丸たち一行。


「開きました。入りましょう」


 厳重な扉の奥には、始めに八型改と誘導された格納庫よりも、広い空間が広がっていた。そして一同の視線の先には、全長およそ十五メートルの巨大陸戦、ヴォルウェルクがそびえ立つ。

 芸術品に近いようなデザインをしていた八型改と対照的に、どこをとっても合理的な機体である。薄い水色をしたその機体は、空と海に同化させるためか。


「……ねえ鬼丸」


「さっさと乗るぞ」


 脚部へと走っていきそうになったクリスタの首元を掴み、その場に留まらせた鬼丸は、冷たい目で睨む。


「状況、わかってるか?」


「ごめんなさい。でも、少しだけでも」


「いいから乗るぞ……」


 焦るクリスタを抑えながら、機体に近づこうとした瞬間、またも船が大きく揺れた。鬼丸とクリスタは、脚部を支えにする形で耐え凌いだ。


「そろそろ格納庫のハッチ開けます。皆さんは降下の準備を。指示するまでは手すりに掴っていてくださいね」


 キルの指示でパラシュートと酸素マスクを装着した一同は、手すりを強く握りなおす。


「キル! これどこから乗ればいいんだ?」


 多くの陸戦の場合、足元付近に操作パネルが存在し、稼働していない間ならそこから体勢を変えさせたり、ハッチを開けたりできる。しかしこのヴォルウェルクには、それらしきパネルが見当たらない。


「ありませんか? 私も実物を見るのは初めてで、場所までは……」


 そう言いながら彼女が機体に近づこうとした瞬間、ゆっくりと格納庫のハッチが開いた。


「なんで勝手に? 皆さん、何か来ます。ハッキングされました! 気をつけてーー」


 ヴォルウェルクの視線の先、雲の裂け目から、先程の黒い機体がこちらへ向かい一直線に飛来する。そして不幸なことに……。


「ほらやっぱり! オーマの言う通り、アイツらは悪い奴らだったんだ」

「お久ぶりです鬼丸君。ご機嫌いかがですか?」

「あれ? あの時の男の子もいる⁉」


「チェック・メイツ、面倒な時に来やがって」


 開けっ放しにしておいた入り口から、チェック・メイツと、彼らに率いられ、鬼丸たちに銃を向ける乗組員。


「今それどころじゃないだろう! あの機体が見えないのか⁉」


「我々の今の任は、貴方方をここで殺すことでしてね。恨まないでくださいよ」


 話の流れの途中に、フィリップは拳銃を鬼丸に向け、そしてそのまま躊躇いもなく引き金を引いた。

 咄嗟に横に避けたため、銃弾はクリスタの真横、ヴォルウェルクの両足の間を通り過ぎた。


「ねね、僕も遊んでいい?」


「どうぞお好きに」


「やた。それじゃあ……皆死んじゃえ!」


 拳銃を取り出したルークは、鬼丸へ向けて接近する。彼を援護する形でフィリップが射撃を続け、残りの職員も発砲を始めた。


「お前らは先に行け! 飛び降りるまで頭上げんなよ」


「紅蓮!」


 コルセアは、隼人、大将を空中に突き落とした。そして自体が飲み込めず愕然としているクリスタを、ヴォルウェルクの後ろまで引きずり込んだ。

 キルは、銃を構えた乗組員たちの顔面に、鋭い蹴りを入れ続ける。その動きは途中からヘルへと変わり、キレが一層増した。


「ねえお兄ちゃん、ずいぶん動きがいいね! これならキングも気に入りそうだよ!」


 拳銃に飽きたような顔をしたルークは、それを投げ捨て拳で鬼丸に殴りかかる。


「お前幾つだよ。ガキは帰ってママのミルクでもーー」


「ママなら僕が殺したよ。だって掃除しろってうるさかったからね!」


 少年の顔は、その行為がどれだけの意味を持っているのかを知らない。その笑顔に恐怖をおぼえた鬼丸は判断が鈍り、右肩にフィリップの弾丸をくらってしまう。


「グッ」


「大当たり、ですね」


「あー! ビショップズルい!」


 その場に倒れ込んだ鬼丸を、ルークは髪を掴み、持ちあげる。


「もう終わり? もっと楽しめるとーー」


「下がれルーク!」


 焦り、そして大声を出すフィリップ。彼が取り乱したところを見たことがないルークは、彼が何を言っているのか理解出来なかった。

 焦ったフィリップは、鬼丸の肩から血が流れていないことに恐怖をおぼえた。そして次の瞬間、彼の奇抜な髪色が、真っ赤に変化した時、その焦りは恐怖へと変わった。


「それは人間ではない! 下がれ!」


「何言ってんのビショップ、どう見たってにんげーー」


 言葉の途中で、鬼丸の、いや、フェンリルの放った右拳に壁際まで吹き飛ばされる。それと同時に、あの黒い機体が格納庫まで到達してしまった。

 その機体が格納庫内に降り立とうとした瞬間、真っ白な奇跡がそれを阻害した。


「させるかぁ!」


 その奇跡の名は、ヴリュンヒルド八型改。油断していた黒い機体に強烈なタックルを与えた彼女は、その機体に代わり格納庫へ飛び乗る。


「翼を持った逆転の使者、颯爽登場!」


「八型改⁉ アンタ今までどこに」


 彼女らしい名乗りに対し、顔を上げたクリスタの言葉は、怒りを纏っていた。しかし言葉とは裏腹に、その顔はとても明るいものであった。


「皆さん、今のうちに!」


「兄上、聞こえるか⁉ ここもヴォルウェルクも諦めよう。なんせもう、必要なくなったからな!」


 ヘルの叫びに頷きで答えたフェンリルは、銃弾を掻い潜り、後ろに隠れていたコルセアとクリスタの手を引き、大空へと飛び出した。


「死にたくない死にたくない、こんなところで死にたくないッス!」


「丁度いい! メッシュよ、我と共に死んでもらうぞ!」


 ヘルに引っ張られたユナが空へ投げ出されたのを確認した八型改は、背中から空へと飛び込んだ。


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