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鋼女神話アサルトアイロニー  作者: ハルキューレ
天空編第一部~空戦絶後~
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第四十三海路 2 鋼鉄艦を求めて

「だからと言って、そう簡単に済む話ではないのだ!」


「いーや。先生がなんと言おうとワシらは行くね! よくわからんが、ユスグドラムとか何とかを倒せばいいんだろ」

「な~に言ってんだ。ユリカゴドライヤーの間違えじゃねぇのか?」

「いやいや、ユルサンドラゴンだって」

「簡単簡単! 大抵のものはぶん殴れば壊れるんだから」


 太陽が島民たちの真上へ移動したころ、彼らは新井を取り囲み、口々に大口を倒す。

 ユグドラシルを破壊し、本土に平和をもたらす。生まれて一度もこの島から出たことのない島民にとって本土へ行くことは、一種の憧れであった。そしてそれを阻害しているのが、この世界情勢。ユグドラシルの支配下にある陸戦が本土を蹂躙している状況では、その憧れを諦めざるを得ない。


「別に俺たちはこの島が嫌いな訳じゃない。ただ、外の世界が見たいんだ」

「そうだそうだ!」


 婆やが開いたコックピットを調査したところ、その奥から大量の結晶が見つかった。


「八型改の出力から見て、これだけあれば……」


 新井のそんな呟きはすぐさま島中に広がった。当たり前のようについた尾ひれによって新井の元に集まった島民たちは、自分たちが漁や移動に使っている木造船に結晶を搭載し、鬼丸達に合流することを提案した。


「ええいどいつもこいつも! ユグドラシルだ! そもそもそれが出来ていれば、既に尻を蹴ってでもお前らを前線に送り出している!」


「心配すんなって先生。ワシらはあのじょーかーを倒したんだぜ!」


「ジャックだ! ジャックマークⅡ!」


 島民たちの短絡的な提案に、鬼の形相でツッコミを入れる新井。寝不足も作用し、鬼そのものと言っても過言ではない勢いだ。


「何がマズイってんだ⁉」


「そもそもだ! 奴の周りには空を縦横無尽に移動するユートピアがいるんだ! しかもその数は計り知れない! 数でも、性能でも劣った援軍など、ゴミを捨てる行為と何ら変わらないのが、わからないのか! せめて鋼鉄艦でも持ってこい! 話はそれからだ!」


 蚊を払うように腕を振り、その場を後にした新井の背中を、三人の男が遠くから眺める。


「面倒デスね。無知というのは」


「鬼丸達と戦った時に、下手に自信がついてしまったんだろう。とにかく休憩は終わりだ。さっさと残りを新井さんの元へ運ぶぞ」


 トマスと鮫島は立ち上がり、ミナ島へと戻ろうとする中、鋭い視線で何かを呟くアルタ。


「鋼鉄艦……ねぇ」


ーーー


「新井さん、頼まれたもん運び終わってーー」


 鮫島が新井のいる小屋へ足を踏み入れようとすると、不思議な感覚に襲われた。地面を踏み外したような、体がひっくり返るような。

 ふと窓を見てみると、間抜な姿で空中を漂う自分の姿が反射した。


「……え? これどうなってるんだ⁉」


「見ればわかるだろう。浮いているんだ」


「新井さん!」


 そこには真面目な顔をしたまま、棒のように空中を漂う新井の姿があった。


「モドキから送信された書類の中に、用途不明のものが混じっていた。そもそも、解読すら難航したものだったがな」


 そう言うと、手に持っていた紙を手渡そうと手を伸ばす新井であったが、空中に留まることが出来ずに鮫島との距離が広がり続ける。


「水中みたいなもんかな」


 壁を蹴り、新井の元へと近づいた鮫島はその紙を受け取り、目を通す。


我考黄結晶流電使用可能畏怖父試飛行艦制作可能、使此来救難手伝伐採可能早。


 様々なことが書いてあったが、特にこの一文が目立った。


「何て書いてあるんだ?」


「黄結晶に電流を流せば使うことが可能だと考える。父よ、もしこれを試し飛行艦が作れるのなら、それを使い伐採を手伝ってくれ。可能な限り早く」


 別の紙に殴り書きされた文章を呪文のように唱える新井。


「暗号に大昔のネットスラングを使うヤツがあるか。おかげで迷宮入りするところだった」


 天井を仰ぎ、苦労からか脱力しきった新井は、その力の抜けた指で机の上を指す。そこには電極に繋がれた黄結晶が不気味に光っていて、この異常事態をそれが起こしていることが、一目瞭然であった。


「仮説が確信に変わった以上、実用しない手はない。のだが」


「だが?」


 漂う新井は、顎で机の上を指し示す。


「電極を外してもらえるか? 先ほどから、自由に身動きが取れん」


ーーー


「おいアルタ、一体どこ向かってるんだ?」


「いきなりこんな沢山の食糧かき集めて、何すんのかと思えば、地図も持たずにクルージング。らしいっちゃらしいが……」


 アルタは、仲間のベクタとハルカスを引き連れ、小型ボートを走らせる。


「お前ら、船長の生まれがどこか、知ってるか?」


 首を横に振る両者。


「なんでも人としての生活を覚えたのは、遠い島国のイギリスだってな。ただそれ以前に、海賊としてのあり方を覚えた場所があるらしい」


 そう言い、懐から一枚の紙を取り出したアルタは、それを天に掲げる。そこに映されたものを見た二人は、思わず息を飲んだ。


「鋼鉄艦があればいいんなら、俺たちで用意してやろうじゃねぇか! 目指せ、船長の生まれ故郷、移動船団アメジスタ!」


 地図を持たない彼らの航路の行きつく先にあるのは、アメジスト輝く鋼の帝国。


ここまで読んでくださりありがとうございます。

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