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鋼女神話アサルトアイロニー  作者: ハルキューレ
天空編第一部~空戦絶後~
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第四十三海路 1 火の鳥

「よーし。ゆっくり、ゆっくり引き上げろ!」


 朝日が昇る水平線を背に、パイレーツスパイトに乗ったアルタ達が海上で作業をしている。彼らを指揮するのは、モーターバイクに跨る鮫島にしがみつく新井であった。


「傷付けるなよ。貴重なものだ。それからあまり波を立てるな!」


「オメェら聞いたか! 出来るだけゆっくり、慎重にだ。あと波立ててやれ!」


「や、やめろバカ! 今海に落ちたら水死体になる確固たる自信があるぞ!」


 八型改から送られてきたデータ、その最後は、意外にも見慣れたカイナ島近海の地図であった。ただ不可解なことに、その地図にプロットされたいくつかの点が存在し、それが何を意味しているのかは記載されていなかった。

 その地点を鮫島が潜って確認すると、大きな鉄の塊が海藻や貝に覆われた状態で沈んでいた。

その塊が今、海面へと引き上げられる。その姿を見て、その場にいる全員が息を飲んだ。


「鎧……」

「鋼のデカい鎧……か?」

「それにしてはデカい。人二人は入りそうだ」


アルタの言葉通り、その鎧は背中の部分が不思議なほどに肥大化しており、とても一人で動かすことを想像できなかった。


「違う、これは……この機体はーー」


それは大きな甲冑のように不格好ではあるが、人の形をしていた。




 その後、地図にあった場所全てから、鉄の塊が発見された。最初に見つけたもの以外は酷く風化が進んでいて、それらが陸戦であったということを理解するのに時間がかかった。


「始まりの……陸戦?」


「ああそうだ」


 それらの運搬をアルタ達に任せ、一足先に島へと戻る道すがら、新井は鮫島にその存在を語る。


「他のものはわからないが、最初の一機は間違いない。全ての陸戦の原型とも言われながらも、実物が現在しない幻の機体」


 その名を、火の鳥。その存在が明らかになったのは、新宿駅前ビルの地質調査のタイミングであった。

[甲冑型――戦闘機 火の鳥]

 建設予定地の地下に存在した、謎の空洞。コンクリートで綺麗に舗装されたその空間にあったのは、表紙にそう書かれた一冊の冊子のみだった。インクが滲み、所々読めなくなっている部分を現代技術で補填しつつ出来上がったのが、今で言うところの陸戦になる。


「つまり陸戦は、古代兵器の再現ってことなのか?」


「もしくは、誰かの書いた落書きの可能性も否定しきれない。そこに記載されていた翼人との戦いも、誰かが書いた物語かもしれない」


 どちらにせよ、当時の人々が何を思い、陸戦を復元したのかはわからない。あまりにも汎用性の高かった陸戦は、人類を構成する重要な要素として、切っても切れない関係となった。


「……なんか、色々雑じゃないか?」


「雑なものを積み重ねた結果、それが常識になっただけだ。もし人間が神の泥遊びから生まれた存在だと判明して、そのあり方が変わるとは思えないのと同じだ」


「例えがデカくて、イマイチ理解できないな。ともかく八型改は、なんで俺たちにこれを?」


「知るか。解析してわかればいいが……」



「ワンダフルワンダフルワンダーワンダフル!! これが、あの、レジェンド、ファイヤー・バード!」


 ミナ島の港まで運ばれた火の鳥は、興奮したトマスと新井によって調査が進められている。


「人類史を揺るがす発見なのに、ずいぶんと緊張感がないじゃないか」


 そう声をかけてきたのは、見物客を引き連れた婆やであった。


「既にご存じでしかた?」


「なぁに、この島で隠し事は出来ないよ。皆すぐ喋っちゃうんだから」


 そう言うと、杖を島民に預け、海に半分浮かんでいる火の鳥へと飛び乗る。そしてかがむと、皺だらけの手で苔むした機体表面を二度、叩く。


「婆や、何を……」


「モノ借りる時は、持ち主本人にお伺い立てるのが筋ってもんだろ」


 目を瞑った老婆は、そのまま誰かに向けて語り始める。


「母上、今一度、彼ら無翼の民にお力添えを」


 立ち上がり、目を開くと、新井とトマスに機体から離れるよう促し、自身も港のコンクリートへと登る。

 老婆が手を伸ばすと、それと呼応するように開く、機体胸部。そこは一人乗り用陸戦のコックピットのような空間が広がっていた。違う点としては、外側から見て異常な大きさをしていた背中からもわかるように、奥行きがあり、操縦席の後ろに人一人、立てそうなスペースがあった。

 少し遅れて、他の塊も次々に口を開いた。どうやら回収した全て、機体胸部、コックピット部であったようだ。


「さあ、空けてやったよ。あんたらが探してるものは、その奥にある。ウチの旦那共々、宜しく頼むよ。後は若いもんたちで頑張りな!」


 そう言い残し港を去っていった婆やの目は、はっきりと認識できるほど、黄色く光っていた。まるであの、黄結晶のようでもあった。


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