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鋼女神話アサルトアイロニー  作者: ハルキューレ
天空編第一部~空戦絶後~
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第四十空路 3 誕生

「ホログラム体……いよいよもって、映画の世界じゃないか」


 目の前に現れた薄緑のオーガを見た鬼丸は、その姿に息を飲んだ。触れた手はすり抜けるそのホログラム体のオーガは、部屋の中を縦横無尽に移動し始めた。


「肉体からの解放が、こんなにも便利だったとは思っていなかったよ」


「地に足の着いた生活を捨ててもか?」


「まさか。元から足なんてなかったさ。ただ脳の周りに肉と骨がついていただけだ」


「言いやがる」


 本題に入ろうと、鬼丸はオーガへと近づく。


「オーマの研究を崩すって話、それ以前にーー」


「弟さ。出来の良すぎる儂と比較され続けた、可愛そうな弟だ」


 鬼丸が言いかけた言葉を遮り、オーガは続ける。


「昔から、何をしても儂の方が上を行っていたのだ。勉学においても、運動においても、僅差ではあるが、いつも儂が勝っていた。兄だから、当たり前だ」


 苦笑いともとれる声と共に、苦しいのは自分の方だと付け加えたオーガは、一か所に留まらず、色々な場所へ移動しながら話し続ける。


「ただ次第に、その差は開き始めたのだ。それに焦ったのかヤツは、儂との交流を絶ってきた。確か、人工知能の研究員として二人とも、一定の成果を上げ始めたころだったかな?」


 何をやってもあと一歩届かない。そんな存在に心当たりがあった鬼丸は、その話に自然と引き込まれていた。


「ある時、学会誌でヤツの顔と名を見つけてね。とても驚いたさ。知らない内に儂を追い抜き、大きくなったヤツの姿に、素直に喜べたのは今でも自慢の一つだ」


 オーガの背後に映しだされた画像には、古く黄ばんだ紙の見出しにこう書いてあった。

【人工知能ユグドラシル、運用試験通過】


「これからは、人類の辞書から人口問題と食糧問題という項目が削除されるだろう。またこの結果は人工知能に頼らない人類の人権を守る、反人工知能団体……ここはいらないか。とにかく、オーマは世界を救う救世主になった。その時は、そう思って疑わなかった」


「しかしそのユグドラシルは、人類に反旗を翻した、と」


「そうさ。何かの手違いだろうと、オーマの元へと問い詰めに行ったんだ。幸いヤツの研究室に、共通の知り合いがいたからな。そこで……」


 言葉を詰まらせたオーガは右手で自分の頬を叩き、一呼吸を置いた。そして、再び口を開き、見たものを語る。終わりの始まりを、語る。


「そこで、ユグドラシル本体がケーブルを巧みに操り、弟を絞り上げていたのだ。そしてその足元には、オーマの研究室に勤務していた儂の教え子が転がっていた。正直、初めは理解が追い付かなかった。ユグドラシルから伸ばされたケーブルが、教え子の頭蓋を貫通し、脳に突き刺さっていたのだから」

 X年前、鬼丸オーマの研究室。ユグドラシル保管室。


「弟よ! これは一体どういうことだ!」


「私が聞きたい……くらいだ」


 そこで儂は、足元に転がる彼女の存在に気付いたんだ。


「……〇〇〇〇君、おい、意識はあるかね!」


「せ、せん……せい」


 彼女の頭部に刺さっていたユグドラシルのケーブルを引き抜こうとした時、彼女の弱弱しい手がそれを止めた。


「ダメ、です。アタシが……望んで……」


「なんだって! それじゃまるで君はーー」


「望んで、一体化したんです。でも、意識が混ざり過ぎて、制御が……ここから、逃げて……」


 ユグドラシルのコアに当たるコンピューターを見ると、ケーブルの数は時間と共に増えている。儂が知っている限りで、ユグドラシル本体にここまでの成長性はなかった。製造者の許可がない限り、ユグドラシルは自らの手で進化することなど、不可能であった。


『つまり、製作者の許可があればいい訳ですよ。先生の授業で教わった内容、ちゃんと覚えてたでしょ?』


 突如発せられた声に、耳を疑ったさ。ユグドラシルから出ているはずのその声は、今目の前で息絶えた教え子、○○○○君のものだったからだ。


『先生、何度言ったらわかるんですか? アタシの名前は○○○○じゃなくて……でも今は違うわけか? そもそもユグドラシルな訳だし』


 直後、儂の首元に細いケーブルが打ち込まれ、突然の睡魔に襲われた。


『確か、フクコーカンナンタラを刺激しました。三日ほど、寝て貰います。その間にアタシ達は、空へと飛び立つでしょう。そこから』


 次の瞬間、彼女、いや、彼女たちの声色が変わり、怒りの赤に満ち溢れた。


『鬼丸オーマ! アタシ達を騙し、陥れたことを、一生かけて後悔させてあげる! せいぜい無様に足掻け!』


 その言葉をうっすらと憶えているだけで、後の記憶はない。後日目を覚ますと、第七世代をはじめとした陸戦が人類を襲う、世紀末のような世界になっていた。

 そして既に目覚めていた弟の顔は青ざめており、何かを後悔しているようだった。


先日は更新できずに申し訳ありませんでした。実はあの時、熱が40度近くあり寝込んでおりました。今流行りの例のヤツかと思いましたが、検査の結果陰性でしたので一安心です。御心配おかけして申し訳ありませんでした。今は健康体そのものですので、明日の更新も可能だと思います。

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