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鋼女神話アサルトアイロニー  作者: ハルキューレ
海上編第三部~海上神秘~
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嵐の前の答え合わせ

 時は戦闘海域にイナバ百式が到着する数時間前まで遡る。


「お前の改造、あそこにある資材で出来るか?」


「は? どういうことですか?」


 イナバ百式黛カスタムのフロントガラスに張り付き、資材の山を指さす作業員たち。目を細めたユナがそこを見ると、イナバ百式に仕様する代えのパーツが、丁寧に陳列されていた。


「お嬢が発注したんだ。俺達のイナバ百式を、お前のみたいに改造するってな」


 違法製造陸戦の襲来が増えてきたため、毎回ギリギリの戦いを強いられているヴァルハラの面々。彼らにも限界はあるため、万一のための防衛力が必要であると考えたクリスタは、工業用陸戦に乗りなれた作業員に目を付けた。


「そんなもん、シャークフォースに任せればいいんじゃないんですか?」


 まだ機嫌を直さないユナは、その不機嫌をそのまま言葉に乗せた。


「それじゃあ間に合わねぇんだよ」


「え?」


 ユナはこの時初めて、陸戦襲撃の際にシャークフォースが、島民の避難と安全確保を担っていることを知った。


「アイツらの他に、フットワークの軽い戦力が必要だって言ってた。海賊どもだって、小回りが利かない」


 腕を組んでいた親方は、顔をガラスに押し付け、声を強める。現場組はクリスタの理念に賛成し、秘密裏に計画を立てていた。


「俺達がやるしか、ないんだよ」


 その気迫に腰を抜かしたユナ。この島に来てから、ここまで自発的に戦闘に参加しようとする人間を、ヴァルハラやシャークフォース以外に見たことが無いためだ。


「それには、お前の力が必要なんだよ」


 親方の後ろから、別の作業員が声をあげる。それに釣られ一人、また一人と声を出す。


「お前、一人でそれ改造したんだろ」

「スゲーぜユナ! 見直した」

「ユーナ! あそれユーナ!」


 皆終いには手を叩き、拍子を生み出し彼をもてはやす。その拍子は少しずつスピードが速くなり、彼を煽る。

 一帯のボルテージが最高潮に達した時、モノクロの少年は満を持してイナバ百式の扉を開ける。

 コンクリートで固められた地面へと降り立ち、民衆をその小さな手で収めると、溜息一つついた。


「ハァ、しょ、しょうがないッスね~。一回しか言わないから、しっかりメモしてくださいよ!」


 一呼吸置いて、その一言に熱狂するフロア。


「さっすがユナ!」

「男前!」

「かっこいい!」


 気分をよくしたユナは、拳を突き上げ宣言する。


「行きますよ皆さん! 黛小隊が最強だってこと、電気信号どもに教えてやりましょう!!」


 その一言を合図に、姿を変えるイナバ百式。しかしこの時のユナは知らなかった。作業員の誰もがこの時、不敵な笑みを浮かべていたことに。


「チョロい」


 親方の一言は、鋼のセッションにかき消された。




 そして現在。


「いやッス! 誰がなんと言おうと、このチーム名は黛小隊なんです!!」


 戦闘を終えたコルセアが放ったクリスタ親衛隊の名を、彼らが聞き逃すことはなかった。


「クリスタ親衛隊……いい!」

「いや、お嬢親衛隊でも」

「クリスタ組なんてのはどうだ!?」


 その様子をユナは、鬼丸に嘆く。


「紅蓮さ~ん! 助けてくださ~い!」


「うん。いいと思うぞ。黛小隊。」


 彼の頭を撫でながら、しみじみと言う鬼丸。彼の青い頭上の、更に空の上で、黒い彗星が光っていることに気付いたものは、あくびをしたポニーテールのヘルだけだった。


「む、この感覚……」

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