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鋼女神話アサルトアイロニー  作者: ハルキューレ
海上編第三部~海上神秘~
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第三十一海路 3 個対群

「ゴメン遅れた」


 コックピットに流れるように飛び込むクリスタ。既にほかの面々は出発準備を整えており、彼女の搭乗を最後に、ハッチが閉められた。


「別に。さっさと出るぞ」


 冷たい態度を露骨に表す鬼丸。


「なんかあった?」


「なんも」


 明らかに口数が減り、不機嫌な鬼丸にクリスタは不信感を隠せなかった。そのまま機体は動き出し、空を飛ぶ。

 視線を交わさないまま、操作音と機関の唸りをバックに、二人の会話は続く。


「もしかして、アタシがこっちに顔ださない事に怒ってんの?」


「……」


 いきなり図星を突かれ、押し黙る鬼丸。予想していた反応なのか、クリスタは口角を上げ、舌なめずりをする。


「理由は近いうちわかるわ。それから当分、向こうにも顔を出さない。これでご安心?」


「もともとエリート様の心配なんて、これっぽっちもしてませんよ」


 その言葉とは裏腹に、彼の表情には少しの安堵が見られる。自身の感情をデフォルトに戻すかのように、鬼丸は両手で頬を二度叩く。


「見えました! あれが今回の敵! 新井さんによると、推定全長一、九メートル。現在キノ島の電磁結界で食い止められているあの陸戦の名は、ダーヴィン!」


 キノ島の結界に対し、必死に体当たりを行う陸戦。特筆すべきその外見、顎から大量のコードがぶら下がっており、それが髭のように見える。


「結界に弾かれるってことは既製品か。クリスタ、わかるか?」


 鬼丸が質問をしたタイミングで、サブモニターに移るダーヴィンのカタログ。


「数世紀前に居たとされる生物学者を模して造られた陸戦。人並みに小さいのはそのせいね」


 まあこの機体が大きすぎるだけなんだけど、と付け加え、説明を続ける。


「ロンドン自然博物館の目玉展示物として飾られたのがあの陸戦。足元のホバー機構を使いスムーズな移動が可能よ。館内を循環しているダーヴィンを捕まえて、あの髭を展示パネルに接続すると、解説が聞けたらしいわ。その独自性から、子供たちに人気があったの」


「イギリスから遠路はるばる一人旅ってことか。ずいぶんじゃねぇか」


 相手が既製品とわかり、少しだけ安心する一同。違法製造でない既製品なら、情報的アドバンテージがある。しかし彼らの安心は、すぐに打ち砕かれる。


「待ってください! 空から同一反応が接近! 降ってきます!!」


 その直後、彼らの視界に大きな水柱が四、五本連続して現れる。それらはダーヴィンと瓜二つの姿をしていた。


「……集団での旅行みたいですよ。合わせて六機、ご到着です」


「むしろ一騎打ちになってた今までがラッキーと捉えるべきね。……鬼丸、半分まで減らせる?」


「最初の奇襲次第ってとこか?」


 出現したダーヴィンたちは、皆結界に穴をあけようと必死に拳を振るう。


「ハンドブースターで喧嘩殺法嗜んでたウチが言っても説得力ありませんが、拳なんて非効率的過ぎません?」


 最もな質問をした八型改の質問に、明確な答えは存在する。ダーヴィンの群れへ向けての飛行中であるため、一通りの確認が終わり、手が空いた鬼丸が答える。


「扱いが陸戦なだけで、戦闘目的で造られてないから攻撃手段を持たないんだろ。むしろ拳で殴るって考えに至っただけまともじゃないか?」


「非戦闘員まで敵は暴走を……」


 そこで言葉を詰まらせた八型改に、ダーヴィンの群れをじっと見たままのクリスタが応える。


「安心して。アンタの同胞はアタシたちが終わらせてあげる」


 抑揚がないため少々ハードな言い回しに聞こえるが、八型改には彼女の伝えたいことは十分伝わっていた。


「ありがとうございます! ウチも全力でサポートします!!」


 そのやり取りをしながらも、八型改は新井と連絡を続けていた。ダーヴィンの群れは、電磁結界を壊すために、大きく腕を振りあげ、それを振り下ろす。新井はこの行動の周期を計算し、六機全てが振り上げたタイミングで、結界を消滅させた。


『やれ! 今だ!』


 両手を広げ、鳥のような姿で低空飛行をする八型改。そのまま腕を使い、左右三機ずつ、計六機のダーヴィンを押しのける。


「一度下げてから機首あげるぞ! 兄上、この一撃で数を減らそう!!」


「いつでもいいぞ!」


 ダーヴィンの肩を抑えていた鋼の腕に、力が加わる。一度目の加速によって発生する海面に押し付けられる衝撃を、ホバーの出力調整で乗り切ったダーヴィン達であったが、その直後、今度は真逆の方向に向かって力がかかる。

 体を起き上がらせ、上空へと飛翔するヴリュンヒルド八型改。押し付けられることに対しては、出力をあげることで乗り切れたダーヴィンであったが、持ちあげられては打つ手なし。

 バランスを崩した機体から、次々海中へと放り出される。八型改などと違い、浸水対策がなされていないダーヴィンの回路は、次々ショートや不具合を起こし、泡を立てもがき苦しむ。


「今ので何機落とせた!?」


「三機。半分は海面に着地したわよ」


 激しい上下運動によって生じた重力によって、鬼丸は頭を下に向けざるを得なかった。その為ダーヴィンのうち何機が海中に落ちたのかの把握は、クリスタ任せになった。

 ダーヴィンの頭上を旋回し、次の攻撃を伺う八型改。


「既製品なら機関の位置もわかんだろ。速攻でカタをつけちまおうぜ」


「賛成ね。相手の情報が揃っていて、勝てる見込みもある。数も半分まで減らせたし。鬼丸、やっちゃって」


 鬼丸がいつも通り、アサルトライフルを持ち出そうとしたその時、


「ちょ、ちょっと待ってください! な、なんですかこれは!!」


 八型改の悲鳴が、コックピット内に響き渡る。彼女の関節部に、生き残ったダーヴィンが射出したであろう無数のコードが突き刺さっていた。


ここまで読んでくださりありがとうございます。創作活動の励みとなりますので、感想や応援コメント、ブックマークをお願いします。レビューも大歓迎です!

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