世界の片隅で 3
「こえが、あーめん?」
目の前に置かれた改心の一食を前に少女はそう言った。
どこぞの宗教のお祈りの言葉じゃねぇ!とツッコミそうになったが必死に耐える。
お付きの人や護衛の連中はただ者ではない。G
問題は少女の瞳から輝きが失われたことだ。どうも期待にそわなかったらしい。
お付きの人の鋭い視線が突き刺さるが、俺は自分の作れる精一杯を果たした。文句を言われる筋合いはない。必死ににらみ返す。
……膝は笑っていたけど。彼女はそれに少し感心したらしく目を見張っていた。
しかし、だ。少女を満足させられないことには不満を感じた。
麺が伸びてしまう前に食べてもらいたいのだ時間は多くはない。
ふと思いついたことがあった。トッピング用の具に包丁を入れる。
「ほら、オマケだ」
そう言って麺の上に茹で卵で作った殻を破ったヒヨコやチャーシューやナルトで作った花を乗せてやる。
一気に華やかになり、表情が明るくなる。箸を合わせ持って犬食いのように食べ始める。子供だし仕方ないのかと思っていると、お付きの人が何かを手渡す。一見すると悪魔が持つ三叉の槍を小さくしたもののようだがどうやらフォークらしい。素材は艶やかな黒い色をしていて高級感がある。箸が使い方がわからなかっただけでフォークを使うと品がある。少し思うところがないではないが。
「これを護衛の人に」
そう言ってまず一杯差し出す。
「頼んでませんよ」
「ああ。だがただつっ立ってられるのも困るんでな。交代で食べるくらいなら業務に差し支えないだろう?」
「……ではお言葉に甘えて。セーレ!」
プラチナブロンドのえらいイケメンが来て食べ始める。箸の扱いに慣れているようだ。
それはそれで違和感がすごい。
「ダシが決め手か…」
とか言いながら味わって食べていた。その後も交代する護衛の人たちに代わる代わる差し出す。彼らは箸を使うのは初めてのようだったが、2、3口食べる内に慣れてしまう。護衛ってすげぇんだな。もっとゆっくり味わってくれたらなおいいんだが。
「ありがとよ」
「うまかったぜ」
「こんなうまいものがあったのか」
それぞれの返答は飾らないもので、意外と気さくなものだった。
一方で少女はと言うと、キャッキャと喜んでいたヒヨコや花もパクパク食べていた。
“かわいくて食べられない“なんてことはないらしい。子供はよくわからん。
「もうお腹いっぱい」
さすがに一杯は食べ切れなかったらしい。
ポッコリお腹が出ている。お付きの人が残りを食べようとしているので替えの麺を入れてやる。
「伸びた麺でうちの味だと思われちゃ困るんでな」
「お代はここにおいておきますお釣りは結構です」
リンと澄んだ音がして何の音かと思う。あんな連中が食い逃げみたいな真似はすまいと思うが。
お腹がいっぱいになって眠ってしまった少女を愛おしそうに抱いて帰る。一体彼女は何者だったのだろうか?
台の上を見ると、一枚だけ何かが置かれていた。もしかしたら日本の物価とかわからなかったのだろうかと苦笑しつつ手にとって見ればそれは小判だった。
「偽物、だよな?」
後ほど知り合いに見てもらったところ、
「偽物だな。これは金100%だ」
「は?」
「小判としての価値はないが、なんならうちで買い取るが?」
しばらく悩んで結局売らなかった。彼らは俺のラーメンの価値として金小判一枚分を支払ったが、それほどの価値はない。だがいずれそれに相応しい出来にしてみせる。早々に屋号を変えることに躊躇いはあったが、
“ラーメン小判屋“として再出発した。あの時の様子を見ていたゴシップ誌の編集者がいて取り上げられたことでポツポツ客が来ている。
うちの一番人気はお子様ラーメンだ。
アーゲンティの能力:金属を金に変える
ザガンの能力:金属をその地の硬貨に変えることができる。
小銭を持つのが面倒なので小判一枚で支払いをしているらしい。彼らが訪れたお店はラッキー♪




