世界の片隅で 2
奇妙な二人組の客を迎えた2日後の夕刻、舞台をスポットライトが照らすように屋台と周囲を明かりが照らす。
思わず翳した指の間から先を覗くと、黒い高級車が5台、ドリフトをするように車体を滑らせて止まる。綺麗に平行に揃えて車が並んでいる。
パダムっとドアが開く音は一度で左右2つの車から搭乗者が下り、中央の車を囲みながら刺すように凍てつく視線を周囲に走らせている。その淀みのない一連の動作が相手がただ者でないことを如実に物語っていた。
営業許可証もちゃんと貰っている。この店は自分が守る!と意気込むが足は振るえが止まらない。
身動き一つできず、ただ視線を中央の車に向けていると車から下りてきたのは……、
ただの少女だった。
いや、ただのではない。間違いなくこれまでみた中で最も可愛らしいと言っても過言ではなかった。周囲を囲まれながら少女と、お付きと思われる女性がこちらに向かってくる。
ゴクリ。自分の唾を飲む音がひどく大きく聞こえた。
「姫様にあなたの作れる最高のラーメンを」
「へ?」
お付きの女性の声も大層美しい声だったが、そんなことを感じる余裕もなかった。
相手が誰であろうと、最高の一杯を出す。ラーメン以外に取り柄のない自分の唯一の自負だ。故に“最高のラーメンを“などと言われてカチンときてそう言ってしまった。周囲の黒服たちの視線が自分に物理的に刺さるのを、お付きの人が手を上げて制する。
さっき“姫様“とか言われてたよな?この状況、本当に外国のお姫様がお忍びでラーメンを食べたいとか言って来たんじゃないかと思える。
当の本人は箸を一本ずつそれぞれの手にもって鳴らしながら不思議なメロディーを口ずさんでいる。柔らかそうな金の髪をお付きの女性が邪魔にならないように後頭部で結んでいるあたりは慣れているようにも見える。少女は楽しそうに体を揺らしており、気づいていない。
自分が見ているのに気づくと、顔を上げて笑いかけて来た。それはえらく久しぶりの感覚で。この子のラーメンの印象を決めてしまうのだと思うと知らず神経が研ぎ澄まされた。
いや、少女が笑いかけてきた瞬間の周囲からの吹雪にも似た殺気のせいかもしれない。
「へいお待ち!」
そしていよいよラーメンは完成してしまう。査察を受けた時以上のプレッシャーを感じながら目を輝かせる少女へと差し出したーーー。
親指は入ってないぞ!




