世界の片隅で
俺の名前は星野完徹。若い頃にやんちゃをしていたが、とあるラーメン屋のおやっさんに拾われて更正し、一心不乱に修業してこの度独立して一城の主となった。
屋台だけどな。
隅から隅まで把握しきった屋台は自分の手足のようで不都合はない。
自分で言えば大抵思い上がりだとわかっている。自慢だが、味には自信がる。が半ぐれの原因でもあったこわもてがまたも俺を裏切った。
「すいません…ヒィッ」
暖簾を潜ったお客さんが悲鳴を上げて逃げ去っていく。それ自体は手慣れたものだ。だが自分のラーメンを食べてもらえないことはショックだった。
おやっさんの下にいた頃は裏でラーメンを作っていればよかったが、一城の主になることとありつづけることの差をマジマジと感じた。
材料費は遠慮なく貯蓄を削っていく。おやっさんには申し訳ないが、店を畳むことも考えていた頃だった。
「あの、頼めますか?」
暖簾を潜って全身黒ずくめの二人組が現れた。舞い上がる心を抑えて、
「はい、いましぐ!」
全然抑え切れず噛んでしまった。
逸る思いを今度こそ抑えて丁寧に調理をする。
「お待ちぃ!」
二つの丼を置く。
親指は入ってない。
お客さんに出した余韻に浸っていると、
「この味なら……」
「姫様にもお出しできる。他に客も居なくて都合もいい」
ピシ。悪かったな。
「マスター、美味かったよ。お代はいくらだい?」
そうか、美味いと言ってくれるのか。
「実はお二人がこの店の初めてのお客さんでね。お代はサービスだ」
「……んだと?くっ、姫様をお連れしていれば!姫様に先んじてそのような名誉を得てしまうとは!」
片方が地面に膝をつき、頭を抱えてしまう。いや、なんだこれ。
「まぁまぁ、姫様に初見の下手な店へとお連れ出来ませんから仕方ないですよ」
もう片方が手を貸し慰めの言葉をかけ、俺に対して頭を下げる。
「ご馳走様でした」
こうして背を向けた二人組が奇妙な縁を運んでくるとは想像も出来ていなかった。




