冥界と天界のトップ、秘密の会合
「何の用だ?」
広い部屋に低い、氷の刃のような冷たく鋭い声が響く。
しばらく沈黙が続き、
「相変わらずだな、ルシファー」
そんな声が返ってきた。
「ミカエル、連絡も無しに冥界に訪れたのを誰かに見られて第二次天魔大戦が起こっても知らんぞ。それから私を“ルシファー“と呼んでいいのは配下かそれ以外にただ一人、……そしてそれはお前じゃない。次にその名で私を呼んでも天魔大戦の再開だ」
ミカエルと呼ばれた天使は驚きで顔を歪めた。それまでが酷く無表情だっただけにギャップが凄い。
「なんだお前、彼女?でもできたのか!?どんな子だ?お前のことだボン、キュッ、ボンな感じか!?」
左右の手を上から下へと開いたり閉じたりさせながらひどく俗なことを言うミカエル。
「……そんなんじゃない」
どこかぶっきらぼうにルシファーが答を吐き捨てる。
「……もう兄とは呼んでくれないのか?」
その言葉がミカエルの口から零れた瞬間にルシファーの自室の
時が凍りついたように静けさが満ちる。
「……あの時にもう一度戻れたとしても私は同じように、神に成り代わろうとするだろう。今でも私の方がうまく“世界“の管理ができると思っているからだ。そしてお前もまた同じように私の前に立ちはだかるのだろう。お前が何を思っていたかは知らんが、私を堕天させたことには変わりない。ならばその結果を受け入れろ。未練を吐くな」
ミカエルには反論の声はなかった。ただ一言、
「そうか、そうだな」
と呟き、顔を臥せる。その表情は見えない。
「それでお前が全く危険性のない危険を冒してここに来た理由はなんだ?」
湿った話はここまでだ、と言うように本題に入ろうと切り出すルシファー。
「あ、ああ。最近お前達の活動が活発になってきたろう?天界は少しピリピリしている。少し加減をしてほしい。」
真剣な内容のためか、表情を整えたミカエルが答えた。
「忠告は受けとった。もう帰れ」
「なんだ、つれないな。命懸けでここまで来たっていうのに茶の一つも出ないのか?」
おどけた風にミカエルがいえば、
「ふん、招待などしていない。誰かを呼んで入れさせることができない以上、私がやることになるだろうが真っ平ごめんだ」
そう言って手をひらひらと振る。
「そうか、じゃあ次来たときに頼もう」
「二度と来るな!」
三対六枚の羽を大きく拡げると、足元に力を溜めて……転移した。
飛ぶんじゃないのかよ!
などというツッコミは誰もしなかった。
「……じゃあな、兄上。チッ」




