good night,good morning
夕方の数時間を眠ってしまったイオンは夜に寝付けずにいた。別に学校に行かなければいけないわけでもなく、夜更かしに寝坊も問題ないのだが、ウェパルは生真面目な性格なのか毎日時間通りの生活をおくらせようと心掛けている。もちろん彼女も悪魔である。
「困りましたね。睡眠時間という点では問題ありませんが……」
見た目通りの年頃であれば、我が儘を言うのは普通であり、イオンはむしろ我慢しているというかおとなしい方である。海に行きたいとか遊んでと思うがままに言うのは魔神たちとの垣根が崩れたのかと思えば嬉しくもある。
「仕方ありませんね、彼を呼びましょうか。姫様、フェネクスを呼んでやってもらえますか」
「ん~?あい!ふぇねたんおいでー」
わずかの間をおいて炎の鳥フェネクスが召喚される。
「姫様、来たよー。」
アルトの声で軽い口調で応えるフェネクス。
実際悪魔の能力を借りようと苦労して召喚する者にとっては信じがたい光景だろう。
序列37位の候爵級悪魔、フェネクス。
鳥を象った炎の姿で現れる。特技は科学と詩であり、甘く美しい声と相まってその歌はあらゆるものを魅了する。但し他の姿に変わると声が汚くなるため、変身するのは大嫌い。というのも、イオンがフェネクスの歌が気に入ってより、自分の歌声に自負を持ったからだとか。
ちなみに、フェネクスは自身の熱を周囲に影響を与えないようにはできるが、自身の温度は高いため、触ってもらったりもしてもらえない。彼がイオンのためにできるのは歌うことだけなのだ。
「今日はどんな歌がお望みです?」
「んん?んー、海に沈むお日さまの歌!」
「ああ、そういえば今日お出かけになられたんでしたね。」
イオンにとって印象深いものだったのだろう。
「~♪」
フェネクスの声が響き始め、イオンはご機嫌で手を叩いている。
しかし、それも長くは続かない。フェネクスの体の炎の揺らぎと心地好い歌がイオンを安らがせ、ウトウトとさせていく。
「……僕も姫様ともっと関わりたいんだけどね」
フェネクスは添い寝役であり、長く接することは少ない。
「大丈夫だよ。僕は自分の役目に誇りをもっている」
少し申し訳なさそうに見たウェパルにそう言う。
「いい夢を」




