家族旅行(終わりと約束)
「これは、起きるのは夕方を過ぎてしまうわね」
イオンの様子を見守っていたウェパルが言う。
「起きたらもう遊べる状態じゃなくてガッカリさせちまうかな?」
応えたのはアモン、やはり口調がおかしい。
「今日はずいぶんとはしゃいでおられましたからな。無理もありますまい。」
ヴァサゴは寝顔を穏やかに見守っている。
「なに、お望みとあらば我が夜など塗り潰してみせるが?」
さすがは明けの明星、ルシファーは規模が違う。だがロリコンだ。
「イオンが望むならまた来たらいいんですよ。俺達にとっては何一つ障害にならないでしょう?」
「ぐぬぬ……」
歯ぎしりをするのはルシファーだ。
こういう紳士然りとしたところがイオンに好かれるのか、と考えている。
「身体を洗った方がいいですし、温泉でも近くにないですかね、クロケル?」
セーレが声をかけたのはクロケル、序列49位の公爵級の魔神であり、隠れた温泉を見つけることができる。
金の髪に天使の輪が輝く少女の姿で、白いレースで飾られた紺色のビキニを纏っているが、その胸部は薄く、落ちないのが不思議なくらいである。驚くほどの無表情さで
「……あっち」
と指を指す。
イオンといるときはギリギリわかるほど表情を緩めるがそれ以外では無表情のクロケル。
「相変わらず無愛想なやつよ…」
ルシファーがそういうのも無理はなかった。
わかりづらいクロケルの先導でたどり着いた先はまだ海辺であるが、海水浴に適した場所からは離れており、人気はない。
本当にこんなところに?と疑う者はおらず、アルファスとマルファスが拠点化の力を振るっていく。温泉を掘るのは拠点化とは別だろうとは正論だが悪魔の知るところではない。あっという間にコテージと温泉ができる。
「姫様、起きてください」
ウェパルが優しくゆすると、
「んー」
とやわやわ目を開けるイオン。
そして大きく目を見開くことになる。
水平線に沈む太陽。遮るもののない景色に引き込まれてしまっていた。その間に水着を脱ぎ脱ぎさせたウェパルはイオンを抱き抱えて温泉に入る。
「また来ようね」
温泉に浸かる悪魔(家族)たちにそう声をかけながら目の前の光景にすっかり夢中のイオン。背後では悪魔たちが恭しく礼をしていた。




