第一罪 “傲慢“の…
何だと言うのだ。
最下級の悪魔どもなど、上位の悪魔が争い出したなら我先にと逃げ出す存在ではないか。
それが余にダメージを与えられぬとあらば身をていして、しがみついてまで動きを止めようとするだと?
「ええい、離さぬかっ!」
右足にしがみつく悪魔を蹴り剥がす。
その瞬間、視線が逸れた隙をついて槍が剣が突き出され振り下ろされるのを片やかわし、片や手で逸らす。いや、完全には逸らしきれずに頬に朱の線が滲む。
危険だ
何物かはわからんが、こやつらの心頭ぶりはなみではない。天界との関係を考えれば得策ではないが、余を阻むならばしかたあるまい。一体残らず片すのみ。
余の本気を感じ取り、殆どのものが身動き取れなくなる。だが、誰一人戦意を失ってはいない。隙を見せればたとえ通らずとも余の首もとに噛み付こうとするのだろう。ならばーーー。
頭上に掲げた手刀を振り下ろすーーー。
「メッなの!よあいものイジメ。ぜったい」
何故ここに天使がと思う見かけの幼女が両手を広げて立ちはだかっていた。
「姫様、ダメです危険です」
ウェパルだったか、魔神の一柱。
それが幼子を背にかばい、余を睨みつけてくる。
手を振り下ろしたなら、バターのようにその身を切り裂いただろう。だがそうしたなら敗北した気になっていたであろう。
そして、この幼子が姿を見せてから感じる圧力。一柱一柱が相打ち覚悟で飛び込んでくるつもりであろう。
全力を出したなら負けはせぬ。だが、明らかに以前より苦労するだろう。
「そなたは何者だ?」
終始頭にこびりついていた疑問を口にする。
せっかくかばっているウェパルの背中から何とか顔を出そうともがく幼女。
「ん~?イオンはねーイオンだよ。あなたはだあえ?」
その場の空気が凍りつく。
冥界の頂点に対する反応がこれではやむを得ない。
「よの名は“ルシファー“冥界の王である」
何故かはわからぬ。人に悪魔に恐れられ、サタンと呼ばれるようになって久しく、それが当たり前になっていた。
だが、イオンにはかつて呼ばれていたルシファー(明けの明星)と答えなければならないと思ったのだ。
イオンは首を傾げつつ、
「うし、ファー?」
ぶふっと何人か堪えきれない者がいて、殆どの者が顔を背けて笑いを堪え、何柱かは腹を抱えて盛大に笑っていた。
「ルシファーだ!」
何時になく語調を荒くしてしまった。
「ウシファー、うしふぁー。」
眉間にシワを寄せつつ頑張るも発音は変わらず周囲で堪えきれない者が増加していく。
「牛の毛皮…クフフ」
「もうよい!」
イオンの口に手を当てる。
「んー!も~が~!!」
何かを言おうとしているがまるでわからぬ。
睨みつけてきてもまるで怖くはないが、手を離してやると、
「よあいものイジメはメッなの!」
指を指してそう言ってくるイオン。
「良かろう」
どういうわけかそう答えてしまって、
イオンが満面の笑みを浮かべる。
それは冥界に落とされて以降見ることのなかったもので。
「イオンよ、余の妃になるがよい」
思わずそう口にしていた。
一瞬遅れて吹き上がる怒気・殺気。先ほどより明らかにこくないか?
「んん~?よくわかんないっ」
指先を口に当てて考えていたイオンがそう言って笑いながら走り出す。
「なぁ、前に行った世界でよ、あまりにも歳の幼い子供に熱を上げることをロリ☆魂って言うんだってよ」
冥界の片隅で中級悪魔の一体が話す。
「へー、じゃあルシファー様はロリ☆魂か。」
「むしろ…“ロリファー“様(笑)でいいんじゃないか?」
イオンに求婚したことで、下級中級悪魔たちの評価が下がったルシファー。不名誉なあだ名が広まっていた。




