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姫君の鎮圧 ――かつて楽園と呼ばれた日本と、死神と呼ばれている男――  作者: 柊蓮
CHAPTER:チャプター〝8〟――
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それでもボクは、人間を愛している⑧

 尋問が終わり、皇祭の研究所のソファに座り〈エレジウム〉のメンバーは休んでいた。


 だが、そこにいるのは〈エレジウム〉のメンバーや皇祭の他にも、一人いた。それは、須暮利だった。自分に甘えてきた須暮利を、レオは部屋に閉じ込めておくことなど出来るはずもなく、そのまま研究所へと連れてきた。


 〈エレジウム〉のメンバーは全員、須暮利に甘えられているレオのそんな姿に驚いたが、レオの「害があるようには見えないでしょ?」という言葉によって、とりあえずは須暮利を彼の好きなようにさせておくことにした。


 さながら、幼児がその場に現れたようだった。


 レオがソファに座ると、須暮利もソファに座る。そして、須暮利はレオの腕にぎゅっと抱きつく。その場にいる全員の視線が全て須暮利に向いていた。


 と、そのときだった。


「はぁ~やっと帰ってこれたぁ」


 突然、この皇祭の隠れ家兼研究所に、誰かがホログラムの壁を通って入ってきた。


 ソファに座っていた海馬は突然の訪問者に、思わずソファから立ち上がる。そして、入口となっているホログラムの壁付近まで行く。すると、そこにいたのは、なんと甘臨だった。


 甘臨は、見るからにへとへとな姿で研究所に現れた。


 明らかに疲労にやられてる甘臨は、入ってきて早々、何を言うでもなく一目散にソファに向かった。ソファに倒れ込むように甘臨が座ると、そうしてようやく甘臨に周りの人間の言葉が届くようになった。


「甘臨、今までどこにいた?」


 皆の疑問を代表して海馬が訊く。


「えぇ~? まぁボクも色々あったんだけど、どこに居たかって言われれば、〈ReGion(レギオン)〉の本拠地だな」


 その言葉に、〈エレジウム〉の全員は各々大きな驚きのリアクションをした。


「実は俺達、今さっきその〈ReGion(レギオン)〉の本拠地に行ってきたんだ。聖母の寝所(マザーベッド)と呼ばれている部屋に行って、ボスであるFをとっ捕まえてきたんだが……。甘臨は、別の場所にいたのか?」


「いや、聖母の寝所(マザーベッド)にいたよ。でも、ボクが解放されたのは昨日のことだから、入れ替わりだね」


「そうか……。で、大丈夫だったか? 何か酷いことされなかったか?」


「まぁ、電子拘束椅子でしっかりと拘束されたよ。でも、それ以上はなんにも。ボクはその聖母の寝所(マザーベッド)で拘束されていたから、実はFともまぁまぁ話した。こんなことを言うと面倒臭い大人に怒られるかもしれないけど……Fは、結構良い奴だったな。で、捕まえてきたっていうFはどこにいる? できるならもう一回話したいんだが」


すると海馬は、淡々とした口調で言った。


「Fは死んだよ。この先の世界の許されざるネタバレに抵触してね」


「どういうこと……?」


 甘臨は困惑の表情を浮かべた。そりゃそうだ、と海馬は思い、軽くではあるがFが死ぬまでのいきさつを話した。


「なるほど……そんな創造者がいるんだねぇ。でも、和泉魏音なんて聞いたことないな。まぁ、今の時代に生まれた人間であるならば、ボクの能力を使えば一発で見つけられるだろうけどね」


「確かにそうだな。頼めるか?」


「ちょっと休んだら調べてあげるよ」


「あぁ、助かる」


「まぁでも、Fは死んだのか~。もう一回くらいは話したかったなぁ……。聖母の寝所(マザーベッド)には、須暮利世奈っていう可愛い男の子もいたんだけど、その子は海馬達が来る前に逃げちゃったかな~」


 そう呟いた甘臨に、海馬はソファの上でレオにくっついている須暮利を指さした。


「あそこにいるぞ」


 甘臨はその言葉に、思わずソファから身体を起こす。そして、海馬が指さした方向を見た。

 そこには、実際に須暮利がいた。須暮利はレオにくっついてイチャイチャしていた。そのことに甘臨は思わず「ええっ!」と大きな声を出した。


「ええっ! なんでいるのっ! ……しかもなんでレオにくっついてるんだよ」


 自分に訊かれたと思ったレオは、自分でもその事実に戸惑いながらも答えてやる。


「なんか好かれちゃった」


「まぁ、好かれるっていいんじゃない? 嫌われるよりはさ。でも、なんでごく当たり前にここにいるのさ。この子をこれからどうするのさ」


「考え中だ」


 海馬が、両腕を組みながら答えた。その言葉に、甘臨は「はぁ」と軽く溜息を吐くと、何か少し興味を持ったのか、ソファから立ち上がって須暮利の方へ近づいて行った。

 甘臨は少し屈んで、ソファの上でレオにくっついている須暮利に顔を近づけた。そして甘臨は、そっと、まるで野良猫にファーストタッチするみたいに、慎重な手つきで須暮利の頭を柔らかく撫で始めた。


 甘臨に撫でられた須暮利は、とても気持ちよさそうな表情をしていた。


「さながら猫だなこいつは。まぁ、可愛いことは、可愛いな……」


 そう呟いた甘臨の口角は、無意識的にとても上がっていた。

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