それでもボクは、人間を愛している②
廃工場内へと出た海馬は、廃工場を中心とするコンビナート全域を歩き回った。
その目的は単純で、戻ってくることのない〈エレジウム〉のメンバーを探す為だった。まず海馬が向かったのは、唯一居場所の分かるレオのいる廃工場の屋根の上であった。
自分の身体を水に変形させて屋根の上までひょいっと飛んでいくと、そこには勿論レオがいたが、レオは未だにスヤスヤと気持ちよさそうに眠っていた。さっき強烈な眠気に襲われていた自分が言えることではないが、よくもまぁあんなに過剰に興奮していただろうすぐ後に眠れるよなと海馬は思った。
海馬は、そんなレオの元まで行くと、レオの身体を一応揺さぶってみた。だが、結構強く揺さぶりをかけても、レオが意識を醒ますことはなかった。そんな光景に海馬は「そうだよなぁ……」と言葉を漏らすと、そんなレオを担ぎ上げた。そして海馬は、レオを皇祭の隠れ家兼研究所に連れて帰った。
セレニアの四肢の手術をしている皇祭の元へ、レオを担いだ海馬が戻ると、そんな光景を目にした皇祭は思わず手術をする手を止めた。海馬と皇祭の目が合うと、思わず皇祭は口を開いた。
「すぐさま他の研究員や医者を呼び戻そう。それで、レオさんの様子はどうなんです?」
「まぁ、別に外傷などは特になさそうだし、しかも戦闘中のレオは少し様子がおかしかったんだ。なんか加熱状態にあるみたいな。戦闘中は過度に興奮して当たり前だが、今回のレオはそういうのとも少し違うような感じがした。だから……そのダメージが大きいのかもしれない。セレニアをそんな風にした後、自分もすぐさまその場に倒れるようにして眠ってしまった」
「そうですか。とりあえず、できるだけ早く避難していた研究員や医者を呼び戻します。到着次第すぐにレオさんの治療にあたってもらいましょう」
「あぁ、頼む」
そう言うと、海馬は担いだレオを寝かすために、研究所から沢山の部屋のある長い廊下へと出ると、そのうちのひとつ、今日に至るまで一週間ほどレオが眠っていた自身の部屋までレオを連れていった。
レオの部屋に着き、ギシギシと音が鳴る古びたフレームのベッドにレオを寝かせると、海馬はすぐさま部屋を出て他のメンバーを探しにいった。
海馬が次に見つけ出したメンバーは、穂乃果だった。
廃工場の入口付近、硬いコンクリートの地面に横たわっている穂乃果を海馬は見つけると、すぐさま駆け寄った。
穂乃果は辛くも意識があるようだったが、駆け寄った海馬は様々な声かけをしたものの、それに穂乃果が応じることはなかった。だが目は半分ほどではあるが開いており、呼吸もちゃんとしている。だが、どこか心ここにあらず的な表情を穂乃果はしており、海馬はすぐさま皇祭の隠れ家兼研究所へと連れて帰った。
セレニアの四肢の手術をしている皇祭の元へ改めて帰ると、皇祭は先ほどのレオのときとは比べものにならないほど大きな驚愕の表情をした。海馬にお姫様抱っこされている自分の娘を見た皇祭は、すぐさま駆け寄ると、海馬の顔をガン見した。
そして、皇祭は鬼気迫る声色で言った。
「どこでもいい、早くどこかの部屋に連れていってくれ」
「勿論だ」
海馬は、また先ほどと同じように長い廊下に出ると、その中から適当にベッドがあり空いていて使えそうな部屋を探し出すと、そこに穂乃果を連れていって寝かしつけた。
すると、穂乃果を古びたベッドに寝かしつけた海馬は、ふと、背後から足音がすることに気がついた。その足音は二人の元に徐々に近づき、遂には足音の主が姿を表す。
それは皇祭だった。皇祭は、少し感情の乗った声で言った。
「医者が到着するまで、少しの間私が穂乃果を診る。海馬さんは引き続き、他のメンバーを探してきてください」
そうして、海馬は皇祭と入れ替わりになる形で部屋を出た。
海馬が次に見つけ出したメンバーは、ユキだった。
ユキは、廃工場の少し奥まった場所に居たため、発見できたことはラッキーだった。
ユキは明らかに意識がなさそうな状態で、海馬はユキを見つけた瞬間、心臓が掴まれたような感覚に陥った。海馬はユキをお姫様抱っこすると、すぐさまベッドへと寝かしつけに向かった。
そして海馬が次に見つけ出したのは、春次だった。
春次は、廃工場の外、鉄塔などが等間隔に立ち並び駐車場などもある広いスペースのド真ん中で横たわっていた。海馬は春次をお姫様抱っこすると、同じようにすぐさまベッドへと寝かしつけにいった。
そうして海馬が春次をベッドへと寝かしつけに行くと、先ほどまでは居なかった皇祭の研究所で働く研究員や医者などが大勢集まっていて、既に運び込まれたメンバーの治療を開始していた。そのことからか、穂乃果を診ていた皇祭もセレニアの四肢の手術へと戻っていた。
そして最後に海馬が見つけ出したのは、廉斗だった。
廉斗を見つけ出すのに、海馬は凄く時間を要した。基本的に、戦闘が起こっていそうな廃工場を中心としたコンビナート全域を海馬は見て回ったが、廉斗の姿があったのはまさかの砂浜であった。
砂浜は廃工場の真隣りにあるものの、まさかそこで戦闘が起きているとは海馬は想像もしていなかった。
砂浜の上に横たわっている廉斗を海馬はお姫様抱っこすると、ベッドへと寝かしつけにまた戻った。
海馬が皇祭の隠れ家兼研究所に戻り、廉斗をベッドへと寝かしつけると、そうして海馬は研究所へと戻り、セレニアの四肢のけたたましい手術音を聞きながら、眠りに落ちるのだった。




