〈エレジウム〉VS〈ReGion〉③
アルバートに獲物にされた春次は、廃工場の外、巨大な鉄塔などが等間隔に並び、駐車場などもある広いスペースでアルバートを相手にしていた。
巨大な鉄塔の下で、春次とアルバートは両者互いに星輝剣を持ち、相対する。この二人は、それぞれの組織の中では謂わば非戦闘員と呼べるような存在であったが、自分が属している組織がそのような状況に遭い、自分もそのような事を求められている時には、自分もそれをしないわけにはいかない。
だが、やはり春次とアルバート両者の胸中には、同じように〝戦いたくない〟という気持ちがあった。だが、それは不安や恐怖からくる感情ではなかった。戦うことが怖いから戦いたくないというわけではなく、あまり得意じゃないからもっと得意な人に任せたいな、というような気持ちだった。
だが二人は互いに相対し、今まさに相手の命を奪おうとしている。
そのような状況が自分のみならず相手も嫌と感じていると気がついたのか、アルバートは思わず口を開いた。
「なぁ久慈春次。我々のやっていることはあまり賢いことではないと思わないか」
星輝剣の先っぽを自分の方に向けながらそう言ってきたアルバートに、だが春次は細かく頷きながら肯定した。
「確かに、僕もそう思うよ。だが、仕事は仕事だ。お互いに、組織に属しているのならこのような事態を想定していなかったわけではなかろう。だから仕方がないことだ――で、終わらせるのもやっぱりなんか嫌な気持ちにはなるがな」
「同感だ。それでも、我々はそういったことも時にはしなくてはならないというのも、同感だ」
互いに理知的な者同士、無駄な殺生は、いや、殺生そのものを避けたい気持ちが強かった。殺生よりももっと他によい選択肢があるのではないかと常々考え続けている者同士、できるのであれば対話で物事を解決したいと思っている者同士、このような状況には苦痛を感じた。
だが、仕方があるまい。そう思い、二人は、互いに手に持っている星輝剣の先っぽを互いに当てた。まるで剣道の試合前のような姿であるが、まさしく二人が今からしようとしているのは〝試合〟だった。だがそれは、負けても失うものがないスポーツとは違い、負けたら自分の命が失われる。
二人は互いに互いの目を見ると、決闘を始めた。
まず、先に攻撃したのはアルバートだった。アルバートが自分目がけて振るった星輝剣を、春次は軽くいなしながら少し後ろへと距離を取る。そして、すぐさま春次はアルバートの胴を目がけて星輝剣を振るう。だがそれをアルバートが受け止めると、ブゥインという電子的な音が辺りに響き渡る。
アルバートは剣を振るう。それを春次が受け止める。受け止められると、アルバートは両手に力を込めて春次の体勢を崩そうと試みる。春次は重心を低くして、転ばないようにする。それと同時に、春次はアルバートの剣を押し返そうと自分も力を込めてみるが、中々形成が逆転できるほど押し返すことはできない。
そのとき、春次はアルバートの足を自分の足で引っかけた。するとアルバートは体勢を崩し、その場に背中から倒れ込んだ。それをチャンスだと思った春次は、追い打ちをかけるためにアルバートを上から突き刺そうとした。だが、気づいたら春次は自分の足首から下が無くなっていた。
途端に身体のバランスが崩れ、それを制御できない春次。
春次はそのまま、地面にお尻から倒れてしまった。
何が起こったのか把握できない春次は、ふと自分の足元を見た。春次の足は、切れていた。厳密には、両足首の下からが無くなっていた。今の一瞬の隙によって、アルバートによって切り落とされていたのだ。
春次はそのことを認識すると、途端に全身に耐え難い痛みを感じはじめた。
声にもならない声が漏れ出て、切り落とされた足首からはドバドバと血液が漏れ出ている。その光景を目にしているだけで、今にも気を失いそうになった。だが、気がつくと目の前にはその場に立ち上がっているアルバートの姿があった。だから、春次はなんとか意識を保ちながら、歩み寄ってくるアルバートに剣先を向けた。
すると、春次は途端に手の力が抜けそうになった。だから、剣を片手から両手で持ちはじめた。だが、それでも切り落とされた足首から勢いよく流れ出る大量の血液によって、春次の意識はもう途切れそうになっていた。
春次は、自分の方へ歩み寄ってくるアルバートを掠れゆく意識で捉える。
次の瞬間、春次は必死に握っていた星輝剣を地面に落とした。
そうして春次は、アルバートのこんな言葉を最後に意識が潰えた。
「すまない科学者。死んでくれ」




