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姫君の鎮圧 ――かつて楽園と呼ばれた日本と、死神と呼ばれている男――  作者: 柊蓮
CHAPTER:チャプター〝7〟――
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〈エレジウム〉VS〈ReGion〉

 廃棄されたコンビナートに、ペスス陸を先頭に〈ReGion(レギオン)〉の面々は歩いて行く。

 ペスス陸を先頭に、五神人、そして一般戦闘員約二百名が行列を成している様は圧巻で、もう逃げも隠れも急襲もしないという気持ちが表れているようだった。


 廃棄されたコンビナートの中央にある大きな廃工場では、レオを除く〈エレジウム〉のメンバーの五人が各自位置について戦闘準備を整えていた。廃棄されたコンビナートと、〈エレジウム〉のメンバーが現在待機している廃工場の内部は、沢山の工場設備が所狭しと広がっていて、戦いにおける難易度を遙かに上げる。


 廃棄されたコンビナートに、ペスス陸を先頭に〈ReGion(レギオン)〉が入ってくる音が、廃工場の中にいる〈エレジウム〉のメンバーの耳にも届いた。

 〈エレジウム〉の全員は身体に力が勝手に入る。一気に緊張感が上がってきたのが誰からしても明らかだった。


 そして、沢山のコンテナなどが置かれた廃棄されたコンビナートを、迷路を進むように進んでいった〈ReGion(レギオン)〉が、コンビナート中央の廃工場に入り、〈エレジウム〉の面々と邂逅するのにはそう時間はかからなかった。


 ペスス陸と五神人は、廃工場の大きなシャッターを上げた。そしてその瞬間、〈エレジウム〉と〈ReGion(レギオン)〉は邂逅を果たした。


 遠くにではあるが、お互いにお互いの顔が見える。廃工場の中の高く積まれたコンテナのひとつ、一番目立つ位置に陣取っていたのは海馬だった。ペスス陸と目を合わせた海馬は、その後ろにいる五神人とも目を合わせた。ある意味ライバルとも言えるような両者の邂逅は、想像とは違ってとても静かなものだった。


 互いの間に、なんとも言えない空気感が流れる。だがそんな中、攻撃を先に仕掛けたのは〈エレジウム〉の方からだった。


「今だ! いけ!」


 高く積まれたコンテナの一番上にいる海馬がそう叫ぶと、次の瞬間、周囲一帯に目には見えないものの変な気配が生まれはじめた。そのことにペスス陸と五神人はすぐさま気がつくと、その五人はその場でどこか〝安全〟な場所を探し求めたが、それを回避できないことを察すると、これから来る攻撃に備えて歯を食いしばりはじめた。


 ペスス陸と五神人が逃げることを選択肢からすぐさま外したように、確かにこの攻撃は広範囲に渡る電磁波攻撃だった。


 エネルギーが充填されるような音が辺り一帯に響き渡ったかと思うと、次の瞬間、身が砕けるような強烈な衝撃波が辺り一帯に響き渡った。


 ゴーン、ゴーン、ゴーンという鐘を叩くような鈍い音がその場にいる全ての者の鼓膜をつんざく。どこからともなく発生した強烈な衝撃波は、たった一瞬で終わるようなものではなく、少しの間その場に滞留するような持続性のある衝撃波だった。その為か、最初は少し顔をしかめるだけで済んでいた〈ReGion(レギオン)〉の一般戦闘員達も、時間が経つにつれ次々にバタバタと倒れていき、だがそれを見ていた海馬などの人間達は、一切の影響を受けていなかったため平然とその光景を眺めていた。


 一分ほどの持続する衝撃波が終わると、五神人の一人、遊佐は思わず背後を振り返った。こんな強い衝撃波など、一般戦闘員に耐えられるはずがないと思ったからだ。そしてその通り、遊佐が振り返った先にいた一般戦闘員達は、全員その場に倒れ込んでいた。その光景に、思わず遊佐は「嘘でしょ……」と呟いた。


 こうして、約二百名いた〈ReGion(レギオン)〉の一般戦闘員は、その数を〝ゼロ〟にまで減らした。一般戦闘員の中で、生き残っている者など一人もいなかったのである。


 こうして、戦況が一気にシンプルなものになると、五神人の四人とペスス陸、そして〈エレジウム〉のメンバーは、お互いに誰が自分の相手になるのだろうかと、誰を相手にしようかと、獲物を見定めるような目でお互いのことを見るのだった。


 するとそのとき、先頭にいたペスス陸が、背後の五神人の方を見やって言った。


「私が指揮を任されている一般戦闘員達が皆全て死んでしまったな。ならば、私がここにいる意味は全くない。戦えるわけでもないのに戦場にいても、無駄死にするだけだ。だから、私は一足先に帰らせてもらうぞ。……幸運を、祈る」


 そう呟くと、ペスス陸は本当にその場を後にしはじめた。


 その光景を見ていた廉斗は、高く積まれたコンテナの上にいる海馬を見上げながら言った。


「海馬さん! アイツ逃げましたけど追いかけますか?」


「いや、いい。アイツはただの参謀だ。戦えるわけでもないから、命が惜しくなったんだろ。とにかく俺達は五神人をぶっ倒すことだけ考えよう。五神人をぶっ倒せたら、後は全てこっちのもんだ」


 ペスス陸が去り、廃工場には五神人の四人と〈エレジウム〉の五人だけとなった。


 五神人の四人が廃工場の入口付近から真ん中まで進み、より近い距離で〈エレジウム〉の五人を捉えると、廃工場の中にはなんとも言えないような奇妙な空気感が流れはじめた。それは、嵐の前の静けさとも言えるようなとても荘厳な雰囲気で、だからこそこれから訪れるであろう戦闘の激しさを各々は脳内で強く想起させる。


 静寂な雰囲気がその場を一旦落ち着かせると、鳥のさえずりまでもが聞こえてきた。


 だがそうしている間にも、五神人の四人は誰を相手にするのかを決めたらしい。〈エレジウム〉の五人も、五神人の四人のうちの一人とやたらと目が合うことに嫌でも気がついた。


 アルバートは、春次を。ライナーは、廉斗を。遊佐は、ユキと穂乃果を。セレニアは、海馬を――。五神人の四人は、各々それぞれ獲物を決めた。だがセレニアに限っては、戦う気持ちなどもう微塵もなく、事前に決まっていた通りの人間を相手にしなければならなかった。すなわちセレニアは、海馬となど戦いたくなかった。というか、もう人間と戦うことなんて、したくなかった……。


 だが、セレニアのみならず五神人はFに脅されていた。数時間前の、作戦開始直前、Fに五神人の四人はこう脅しをかけられたのである。『俺は、君達四人の居場所が手に取るように分かる。それは何故か、それは、俺が魂の覚醒者だからだ。だから、逃げても無駄だぞ。もし逃げた場合、地の果てまででも追いかけ、その逃げた罪を償わせる。そのことを覚悟しておくように』


 だからセレニアは今、強烈な憂鬱な気持ちに襲われていた。

 そんなセレニアの耳に、誰かの言葉が聞こえてくる。


「さぁ、始めようか!」


 それは五神人の副リーダーであるアルバートの言葉だった。アルバートがそう言葉を吐くと、次の瞬間、五神人の四人はそれぞれ自分が決めた獲物に向かって駆けて行った。セレニアも、戦いたくないという強烈な憂鬱な気持ちを押し殺しながら、海馬の元へ駆けて行った。


 こうして今、〈エレジウム〉と〈ReGion(レギオン)〉の戦いがスタートした。

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