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姫君の鎮圧 ――かつて楽園と呼ばれた日本と、死神と呼ばれている男――  作者: 柊蓮
CHAPTER:チャプター〝6〟――
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着弾⑤

 まるでアリの巣のように入り組んだ構造をしている聖母の家(マザーハウス)にて、唯一誰もが入ることを許されない部屋である聖母の寝所(マザーベッド)に、今日、五神人達は初めて入った。


 ペスス陸からではなく、Fから直接今回の作戦の内容を聞くために聖母の寝所(マザーベッド)に入った五神人達は、目の前の、高身長で金髪のイケメンな白人の姿に、一瞬何がなんだか分からなかった。


 ペスス陸は、聖母の寝所(マザーベッド)に五神人達を連れて行くにあたり、彼らにその目的は告げなかった。ただ「着いてこい」と言うだけで、その他は何も言わなかったのだ。だが、その目の前の白人が口を開くと、五神人の面々はなんとなくうっすらとだが、この〈ReGion(レギオン)〉という組織の真実を理解しはじめる。


「諸君、多忙な中集まってくれて感謝する。だが前もって言っておくが、君達のこれまでの多忙ぶりは全て今回の作戦の為にあったのだと言っても過言ではない。そして、頭の良い君達であれば薄々気がついているかもしれないが、俺はこの〈ReGion(レギオン)〉の真のリーダーである。名は〝F〟と言う。このことからも分かるように、ペスス陸は私のただの右腕だ」


 ベッドの縁に腰をかけながら、そのベッドの上で眠っている須暮利の頭を撫でながら言ったFに対し、流石の五神人の四人も、困惑の色を隠せないでいた。だが、Fはそんな四人の困惑など相手にしようともせず、ただ自分が言うべきことを言った。


「今回の作戦の目標は、焔皇祭の研究所をぶっ壊し、焔皇祭本人もぶっ殺すことだ。焔の研究所は、たまたま見つけたものではあるが、もう既に特定してある。俺自ら下見もしてきた。だがあいにく、〈エレジウム〉の人間が、何故だかは分からないが焔の研究所にいるんだ。焔を護っているのかもしれない。だから、自ずと〈エレジウム〉と戦闘になることは間違いないだろう。だが裏を返せば、〈エレジウム〉以外に敵らしい敵はいない。さぁ、君達。ここが正念場だ。ここで大きな戦果を挙げて、人間に反旗を翻そう!」


 声高らかにFはそう言った。だが、Fの想像とは違って、五神人の四人の反応というのはあまりよいものではなかった。特にセレニアなんかは、今頭の中にあるのは、元のご主人様であるコウヤのことだけであり、人間へ半旗を翻すのがどうとか心の境界線を越えたアンドロイドがどうとかは、もうどうでもよかった。


 だからセレニアは、どうしたらこの作戦から上手い具合に抜け出せるか、を考えているのだった。


 すると、誰もが口を閉ざし、部屋の中に気持ちの悪い静寂が流れる中で、アルバートが口を開いた。


「Fさん、ひとつ質問をいいですか?」


「あぁ、なんだ?」


「あなたは……人間ですよね? なのに何故、我々を助けてくださったのですか? ……我々五神人は全員、廃棄処分を受け工場で廃棄されるところを、誰かに助けていただいております。恐らくですが……あなたですよね? 廃棄処分寸前だった私達を助けてくださったのは」


 するとFは、うんと黙り込んだ。そして、何か思案をしている素振りを見せながら、須暮利の細くて白い太ももをまさぐった後、仕方なくといった素振りで口を開いた。


「……あぁ、そうだ。ここまで核心的なことを言われてしまっては否定するのも無理がある。そうだ、俺がお前達を廃棄寸前の状態から救った張本人だ」


 すると、五神人の四人、そしてペスス陸は、まるで心臓を掴まれたみたいな驚愕の表情を見せた。驚愕で頭が真っ白になりかけたアルバートは、思わず訊いた。


「な、なんで……人間であるあなたが心の境界線を越えたアンドロイドである我々を助けたのですか?」


「うむ……。これも正直に言った方がいいだろうな。俺には、別に目標があるんだ。その別の目標の方がどちらかと言えば本筋であり、この〈ReGion(レギオン)〉という組織を作ったのも、そして君たち心の境界線を越えたアンドロイドを助けたのも、どちらかと言えばその目標の為の過程に過ぎない。だから今回の焔皇祭の殺害を狙った作戦も、正直に言えば過程に過ぎない」


 その言葉に、アルバートはらしくない明らかに同様した表情をしながら言う。


「そ、それじゃあ、あなたが言うその〝真の目標〟というのは、一体なんなんですか……?」


「それはなぁ……秘密だ」


「どうしても教えてはくれませんか?」


「あぁ、そうだな。だが……俺のその真の目標というのは、成功した暁には君達にも大きなメリットがある目標なんだ。だから私と、その目標が達成されることを信じていてほしい」


 そう言われてしまうと、アルバートは引き下がるしかなかった。

 アルバートが引き下がると、次はFが五神人に向かって言った。


「作戦決行は準備ができ次第すぐ。場所は千葉県内房の廃棄されたコンビナート。目標は、焔皇祭の研究所をぶっ壊し、焔皇祭を殺害すること。その周りで焔を護っているらしき〈エレジウム〉の奴らも殺す。これが今回の作戦の全容だ。いいな!」


 Fから伝えられた作戦の全容に、五神人の四人とペスス陸は頷いた。


 五神人の四人、そしてペスス陸、そしてF……各々が様々な思惑を胸中に抱く中、確かにその作戦は遂行されようとしていた。

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