表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姫君の鎮圧 ――かつて楽園と呼ばれた日本と、死神と呼ばれている男――  作者: 柊蓮
CHAPTER:チャプター〝3〟――
PR
17/61

使者と弟子と報せ⑤

 海馬がレオに、廉斗の師匠になってくれとお願いをしたのと同じ日の、午前十一時頃。


 海馬の姿はグラン・タワービル内の藍沢那奈の執務室にあった。この時間帯は、海馬が一番頭がぼーっとする時間帯だ。だからか、海馬は半分寝ているような精神状態で執務室にいた。

 藍沢那奈の執務室は、海馬の部屋とは違って生活を想定した造りにはなっておらず、完全に仕事をする為だけの執務室となっている。


 那奈は、メンタルケアやカウンセリングも兼ねて海馬を呼び出したのだ。あんな惨劇があってからまだ一ヶ月も経っていない。完治しているなんて思っていないし、そもそも一度壊れた精神は完治などしない。

 那奈が海馬を呼び出すことは別に珍しいことではなかった。那奈は定期的に海馬を呼び出していた。仕事として――かつて海馬を買った飼い主として。


 海馬は執務室に入るやいなや、いつも通り部屋の一番手前のソファーに座った。那奈は自身の重厚なデスクから海馬の対面のソファーへと移動した。

 姿勢悪く脚を組みながら煙草に火を点け吸い始めた海馬に、小言を言うところから今回の駄弁(だべ)りは始まった。


「ちゃんと座ったら。姿勢悪いよ」


「フルスイングがスタンダードなホームランバッターみたいなもんだよ。つまり、これが俺の座り方ってこと」


 海馬は紫煙を天井へ向かわせながら、普段〈エレジウム〉のメンバーに見せているものとは若干異なる子供っぽさを見せながら、怠そうにそう言った。


「よく分からないわ」


「あっそ」


「ねぇ、気分はどう」


「気分……。あんまよく分かんねぇな。自分が何を感じてるとか、何を思ってるとか、正直よく分からない。煙草は美味いけど、それ以外はなんとも」


 海馬はソファーに溶けるように姿勢を更に悪くさせながら言った。


「正直あんま、俺について聞いてほしくない。他の話題がいい」


 気怠そうに、ゆっくりと、若干の虚無さを感じさせる口調で海馬は言った。


「レオ君はどう?」


「レオ……アイツは凄い奴だよ。創造者でもないのにあれだけの戦闘ができるのは凄い。まぁ、使ってる武器が創造者の創造物っていうところに起因してるのか。……なんにせよ、優秀。正式に〈エレジウム〉(うち)のメンバーになってほしいくらいだ」


「そう。それで、不審なところとか見当たらない?」


「不審なところ? ……あぁ、そうか、よそ者だから一応監視対象、か。……特に不審なところはないな。素直で良い奴だよ。そういうところも含めて正式にメンバーに入れたいと思うね」


「アルス姫について何か言ってなかった?」


「あぁ……まぁ色々と、言ってたよ。聞いた感想としては、アイツはアルス姫に惚れてる。でもそれは恋愛的なものじゃないし、人間としてっていうか、同志みたいな感じだな。なんか日本政府に不都合な事とかは言ってなかったな。だから安心しろ」


「何度も言ってるけど、私は日本政府ではなくあなた達の味方よ」


「知ってる。でもこれからレオのこと上に報告しに行くんだろ?」


「えぇ、まぁそれは……そうだけど」


「那奈、お前は俺達の味方であることは俺だってよく分かってるよ。でも、レオの味方であるかどうかは俺からしたら疑問だな」


「勿論、私はレオ君の味方でもある。でもね海馬、今回報告しに行くのは権田じゃない。湯田よ」


 海馬はそれまで死にかけていた瞼を大きく開いた。まるで電気ショックで起こされたような感覚に包まれた。


「なんで……総理大臣に直接報告を?」


「さぁ……? 私が知りたいくらいよ。でもそういう命令があったことは事実ね。……これは憶測に過ぎないけど、事実も含まれてるから言うわ。アルス姫の姿が結構な頻度で各地の監視カメラに映っているの。それが何か関係しているのかもしれない」


「アルス姫が何か不審な動きをしているから、それを捜しに来たレオの報告を直接しに行く、と」


「そういうことね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ