80.終わらない夢
んー、あつい、さむい、あつい……
「寒い!」
ダメだ、毛布だけじゃ足りない。布団を持ってこよう。私ならやれるはず!
「目、覚めました?」
綿貫さん?顔を上げれば、テーブルで何かしていたのに、こちらに歩いてきて、今は目の前にしゃがんでいる。
「わー、すごい。全然夢が終わらないや」
「佐藤さん、1回座れます?」
「綿貫さんはいつまで私の頭の中に滞在してくださるんですか?」
「とりあえず佐藤さんの叔父さんが帰ってくるまでですかね」
へー、いい夢。じゃあ佑樹さんが帰ってきたら覚めるんだ。え、帰ってこないでほしい。そしてそれは後どれくらいなんだろう。
というか綿貫さんが私の家にいるなんて、いったいいくら払ったんだろ。頭金100万円ぐらい?30分いくらかな。現金手渡しじゃなきゃダメ?
「隣座りますね。これ飲めます?」
「これは何万円ですか?」
「無料です、飲んでください」
「騙されないぞ!スポーツドリンク……2千円?」
綿貫さんに介抱される夢なんて、私の得はここに消えてしまったのだろうか。でもまあそれでもいいや。幸せすぎる夢だしね!
「熱も測ってください」
「……綿貫さん」
「なんですか?」
「熱があったらどうなりますか?」
これが万が一風邪で、しかもそれが移っちゃったら傷物にしちゃうよね。熱あったら帰ってもらおうか。夢とはいえ何かが繋がって、現実の綿貫さんに何か起きたら大変だ!私責任取れないよ。
「熱があったら寝てもらいます」
「ッゴホ、ッン、ゲボッゲホッ」
「もっとこっちに体預けてください。大丈夫ですから」
えー、めっちゃ心配してるように見える顔してる。何このご褒美。王子様じゃん。王子様に背中さすられちゃってるよ。というか顔近っ!体がくっ付いたら、セクハラになっちゃうじゃん。
「はい、これ」
「あ、熱測るのはやめました」
「いや、測ってください」
「やだ!えいっ!」
そういえば私、熱測るの嫌いなんだよね。体温計なんてあるから、熱を測らなきゃいけなくなるんだ。
でも流石に夢の中とはいえ、綿貫さんの前で体温計折ったら引かれちゃうよね。ん?というか私、体温計は折って捨てたはずなんだけど。
「佐藤さん……あんまり可愛いことしないでください。ほら、測って」
「綿貫さんのほうが可愛いですよ。体温計はいらないです」
「いります!」
えー、そんな顔されたら測るしかないね。にしても喉がグズグズなんだけど……ま、いっか!綿貫さん視界に入るなら、ちょっとぐらい嫌なことも我慢しないとダメだよね。
ピピピッ
「えい!」
「だからなんで投げるんですか。って38.6は高いですね」
そう、その体温計が壊れてるから投げたんです。38度台を出す体温計は壊れてるに決まってる。私の知ってる体温計は、37.5までしかでないもん。
「すみません、叔父さんに薬の場所聞いて開けちゃいました」
「どうぞどうぞ。綿貫さんならどこでもどうぞ。あ、トイレも使ってくださいね。お菓子食べます?」
「佐藤さんが元気になったら、一緒に食べましょうか」
「へー、じゃあそれ現実の綿貫さんにも伝えてもらっていいですか?」
「ふふっ、わかりました」
どうしよう、咳が止まらない。
「この家に住んでもらっても構いません。ゲホッゲホッ」
「とりあえず薬飲みましょうか」
薬……薬?やだ、飲まない!えい!こんなのいらないもんね。
「佐藤さん、これだけ熱があるんですから薬は飲みましょ?」
「い、嫌だ!飲まない!グズンッ」
だってそれ何の薬?良い子にするための薬なら、いらないよ。頭がぼーっとするだけの薬でしょ?睡眠薬も飲みたくない。ただ勉強したいだけなのに。
喉がヒューヒュー鳴ってるのがわかる。頭も痛い。でもそれが何の薬かわからないうちは飲めない!
「佐藤さん、お薬飲まないとしんどいままですよ」
「グズンッ、綿貫さんに嫌われちゃう……やだ!もうやだ!」
綿貫さんに嫌われちゃったらどうしたらいいの?もう本屋さんにも行っちゃダメ?




