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79.いい子で

 ブーブーブーブー

 

 うるさ「出てください」

「ん?」

「佐藤さん、電話に出てください」

「あ、はい」


 テーブルの上の携帯を渡され、ゆっくり起き上がる。そんなにじっと見ないでください。は、恥ずかしい。


「もしもし?佑樹さん、何ー?」

「何ってお前から連絡してきたんだろ。発熱低いよって何度?」

「えーっと、37.5……?」

「佐藤さん、嘘つかないでください」

「ん?誰かいるのか?」

「あ、すみません。電話代わりました、綿貫です」


 携帯取られたんだけど!でも綿貫さんなので許します。それにしても何話してるんだろう。佑樹さんと仲良いのかな。佑樹さんいーなー。私も綿貫さんと電話したいんだけど。


「佐藤さん、電話変わってくださいとのことです」

「はい?誰ですか?」

「俺だよ」

「佑樹さん?何?」

「はあ……、悪いけど俺がそっちにいけるの、最短で20時ごろなんだよね」

「うん、わかった!じゃあね!」

「待て待て、わかってないわかってない。そこで綿貫くんが、俺が行くまでそこにいてくれることになったから」

「はい!?」

「いい子で待ってること、じゃあな」

 

 電話切れちゃった……へ?

 そっと綿貫さんの顔を見るが、いつも通りに見える。見えるけど……。


「あのー……綿貫さん?」

「なんですか?」

「タクシー代を……」

「叔父さんが来るまでいることになったので、いさせてください」

「ダメダメダメダメ!綿貫さんお勉強しなきゃなのに」

「じゃあもう1回熱測ります?」

「……測ります」


 さっきのはたまたまで、一瞬高かっただけかも!そっと挟んだ体温計。


「あー……え、ちょ!」


 消す間も無く奪われた体温計。


「38.3、上がってますね」


 な、なんで?おかしいな。私元気なんだけどな。綿貫さんが家にいるなんて……一緒に住んでるみたいじゃない?って流されないで!椿、しっかり!


「綿貫さんはお勉強しなきゃです!」

「はい、じゃあ勉強しとくのでベッドで寝てください」

「私……あっちで寝るの?」

「ん?ベッドの方が、体楽ですよ?」

「き、嫌われちゃった……?」

「な、なんでですか。違いますよ。じゃあ、えっとソファーで寝ますか?佐藤さんなら寝れるサイズですね。ってなんで泣くんですか!?嫌いじゃないですよ」


 勢いよく立ち上がったが、涙ボロボロ。咳も止まらないし、綿貫さんには嫌われちゃった。でと1人であっちで寝たくない。夢から目が覚めたら、もう綿貫さんと会えないかもしれないもん。


「佐藤さん、とりあえずソファーでいいから座りましょ?ね?」

「……でも……私」


 そこからはただ無言で腕を引かれ、今どうやって座っているのかもよくわかってない。ただ誰かに包まれてる感じがして、眠くなってきた。

 目の前がぼやけてきて体の力を抜けば、頭がそっと何かに引き寄せられた。


「すみません、これ阻止するよう言われてるので」

「へ?」


 気づけば右手は握られ、夢の中へ。


 あーあ、本当なら今日はお勉強会だったのにな。また夢オチ回になってしまった。なんでこうもタイミング悪く体が言うこと聞かないんだろう。私の体、悪い子だな。

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