78.迷惑
「ご、ごめんなさい……あの……」
「大丈夫、大丈夫ですよ。泣くともっと辛くなりますから、ね?」
ボロボロこぼれた涙。
綿貫さんにまた迷惑をかけて、もう許してもらえないかもしれない。勉強を教えてもらいに来たのに、介護させられるなんてって、嫌われちゃうよ……。
「落ち着いてください、怒ってないですよ」
なんで綿貫さんは、私の考えていることがわかるのかな?そして本当に怒ってないのかな?だってこれ2回目だよ?
「叔父さんか、こないだの従兄弟のお兄さんは来れないですか?」
「あ、いや、全然1人で大丈夫です。わ、私大人なので」
成人年齢が18歳になったので、私は大人だ。ただお酒を許されていないだけ。
「この感じの佐藤さんを置いて帰るのは、心配なのでできません。とにかくメッセージ入れてみてください。ちゃんと熱がありますって言ってくださいよ?」
本当になんでもお見通しだ。
とりあえず叔父さんに連絡すると言い、佑樹さんに『発熱(低いよ?)』と送った。でも今日は、美英さんの出張について行くからって名古屋にいるはずだ。
大輝さんは友達と沖縄に行っているからこっちに来れるはずもない。
「あの、本当にごめんなさい……タクシー代払います」
「大丈夫ですから、僕のことは1回置いておきましょう。ちょっと横になれますか?咳が落ち着いてからでいいですから」
正直咳をしすぎて疲れてきた。今すぐ横になりたい。気持ちもちょびっとだけあるが、申し訳ないし恥ずかしくてそんなことできない。そもそもなんで急に咳が止まらないの?私の体、バカバカ!
「え!?」
「あ、すみません。手、震えてるなって」
突如握られた手に、感覚はほとんどないがほんのりとした冷たさが私の手と重なった。え、付き合ったんだっけ?これが告白!?
「こんなに手が冷たいと熱上がりそうですね。毛布とかあります?」
「あ、はい!取ってき、ま、す……」
こんな時に限って立ったら突然すごく眠くなってきた。重力も感じないし、1回このまま寝ちゃおうか。
って違う違う。早くしないと。これ以上お手を煩わせるわけにはいかない!
「……さん、佐藤さん!」
「へ?」
「今倒れたの、覚えてますか?」
「ん?倒れてないですよ?」
「はぁ」
なんか綿貫さん近くない?え、ヤバい!!!!尊いお顔を拝見。可愛いなぁ。
「あ、すみません!今すぐ「動かないでください」
「ソファーに運びますね」
「へ?え?あ、その、え、あ、いや……」
お、お姫様抱っこ!?突然の事態に力が入らず、されるがまま。
「寝室勝手に入っても大丈夫ですか?毛布ってどこにあります?」
「あ、その、えー」
「まだ夏ですし、出してないですか?」
「えっと、ベッドの足元の白いクッションとグレーのクッションが、その、中身が毛布で……」
あー、いい夢だな。なんだかふわふわしてるし、綿貫さんの顔がさっきから近いし、一体いつから夢が始まったんだろう。タクシー代渡して帰ってもらったんだっけ?そこが始まりなのかな。
ブーブーブーブー
んー、うるさい!




