74.ゼロ
私の心に爆弾が落ちてから約10日間。世間はお盆である。予想通り綿貫さんは秋田に帰り、私は予定通りの激務。
あの日のことがあっても、もちろん仕事はこなしている。しかしふとした瞬間に心臓がドクンと跳ね、瞬時に綿貫さんで頭がいっぱいになってしまうのだ。
恋は病とよく言うが、これはもう入院レベルじゃない?
「椿……大丈夫か?」
「あ、うん、ちょっと綿貫さんの後遺症が」
「またか。まあいいや、とりあえず車乗んな。そんで今日を乗り越えて美英と解決してくれ」
人一倍働いてはいるものの、働いていない時間の私のは瀕死状態。見かねた佑樹さんが美英さんを派遣してくれることになったが予定が合わず、今夜の仕事の後にようやくお泊まりできることになった。
「Let's do this」
「yeah」
今日の現場は、アメリカ人と日本人の人身売買組織に乗り込み、壊滅させること。よって、アメリカの均衡委員会的なところのと共闘することになった。
ピコンッ
『○○さんの新作買いました?殺し屋がバンバンやっつける、スカッと系なのでぜひ読んでください!僕は今夜同窓会です(なぜか緊張してます笑)』
心乱されたのは私だけなので、綿貫さんとは連絡を変わらず取り合っている。
でもなんか少しだけ砕けた感じがしているのは、全部私の気のせい?返信も考えて考えて、ようやく返信している状態。早く美英さんに話を聞いて欲しい。
「じゃ、行きますか」
アメリカの人の手前の見栄なのか、今回は経費を気にせずバンバン撃ってくれとのこと。
「アメリカ人はライフル好きだよね」
偏見かもしれないけど、私の周りのアメリカ人はライフルばっかり使ってる。
「椿、助かった」
「任せて!」
こうなると遠距離射撃が必要になる。ま、私にはなんの問題もないけど。
「綿貫さん至近距離で撃ってくるんだよ?どうしたらいいの……恋は難しすぎる!」
国際問題にならないよう日本人8人だけを射殺し、佑樹さんの家に帰ってきたのが23時。
私はジュースでmほろ酔いの美英さんと2人でガールズトーク中だ。
「やっぱり綿貫さん椿ちゃんに絶対気があるって」
「えー、ありえないよ」
「でもさ、付き合いたいんでしょ?」
「な!そ、そうだけど……好きになってもらう要素ゼロだもん!」
「椿ちゃんの可愛さがわからないような、見る目のない人には見えなかったよ?」
ずっと付き合いたい、なんなら結婚まで妄想してたけど、それ妄想の話。それが現実で起こるなんて考えたことなかったし、誰かと付き合うこと自体想像がつかない。
「佑樹も綿貫さんのこといい男の子って思うでしょ?」
「まあな」
「佑樹さんも綿貫さんがその、あの、わ、私に気が?あったりするって……思う?」
「……まあ」
「ほ、本気!?」
2分の2が言ってるってことは本当に脈アリなの!?
でも宗さんも言ってたし、既婚者が言ってるから正しいのかも……え、どうしよう。
「ボンって音が俺には聞こえたよ」
「ね、椿ちゃんショートしちゃった。椿ちゃーん」
もし万が一両想いだったら?私から告白なんて絶対にできない。そうなると美英さんの言うところの、告白待ちになるの?
「もう椿ちゃん告っちゃいなよ」
「む、無理だよ。振られたら絶対立ち直れないもん」
初恋は実らないって、漫画では王道のストーリー。綿貫さんにお付き合い経験があるかはわからないけど、経験値ゼロの私は定番ルートを辿る可能性が高い。
「とりあえず人事に身辺調査依頼だせば?椿お前本気なんだろ?」
「うん……そうだよね。とりあえず行動するしかないよね」
恋愛は自由。でも、やっぱり殺し屋が入り込んできたり、スパイが紛れてくる可能性があるから、正式に付き合いするとなると許可がいる。
考えることを放棄するために、私は人事労務部に申請書を提出した。




