61.女の子
返したハンカチは受け取ってもらえたけど、なんでずっと無言なの?あ、ハンカチ洗って返すべきだった?非常識だと思われたのかも。
「佐藤さん」
「はい!?」
「もう、ふふっ。ご飯、今日何にするんですか?」
て、天使がいる?え、なんで笑ってるの?可愛いけどなんでなの?怒ってるんじゃないの?
「あ、ご飯ですね!あー、えっとー……バナナ?」
「そんなに具合悪いんですか?」
「え?あ、いや、全然。人参が限界だから……豚汁にしようかな」
「いいですね」
卵と納豆買って、あとお米は炊く時間ないし買ってくか。豚汁褒められちゃったし、ごぼうも入れちゃう?
「佐藤さん」
「っはい!?」
「僕はなぜ佐藤さんに女の子という自覚がないのか、今日わかりました」
「ほら、私か弱い?とかからは遠くって、全然強いんです!あ、その……はい」
「だから伝えておきますね。強くても、佐藤さんは女の子なんです」
「はい……え?」
「強くても女の子なんですから、無理しないでください」
お、王子様じゃん!これはまさしく王子様のセリフじゃん!無理しないでください?社畜にそれは無理ですよ。でも心配してくれるなんて優しすぎる。怒ってた綿貫さんも素敵だったけど、ギャップで惚れそう。いや、もう惚れてます。
「カートいります?」
「あ、全然大丈夫です。バナナとー、大根とー、玉ねぎも買っておきたいな。あ、たけのこご飯食べたいな」
「佐藤さん?」
「あ、はい、すみません!綿貫さんのことを忘れてました!」
「体調悪いってこと、忘れないでください」
さらっと奪われたカゴ。え、持たせちゃうの?だったらカートいるって言えばよかった。全然私力持ちなのに。
「お菓子とか食べないんですか?」
「あんまり?職場では食べますけど、1人の時は食べる文化がないですね」
「なんですか文化って、ふふっ」
わ、笑われた……文化って変か。なんていうの?あ、習慣って言えばよかったのか。失敗した、あーあ。
「そして佐藤さん、歩くの早いです」
「え?あ、すみません」
「佐藤さん」って今日だけで、一生分呼ばれてない?え、もう録音させてほしい。
それにしても、一緒にいる人のスピードを意識できないなんて……葬暗局委員失格だ。
「ふっ、佐藤さん。僕の言っている意味、わかってないでしょう」
「わかってますわかってます。早かったですよね」
「僕が遅かったですか?」
「え、まさか!違いますよ!」
「僕が言いたかったのは、発作が出るからゆっくり歩いてくださいってことです」
「あ、はい……」
結局袋も持ってもらっちゃって、綿貫さんの神経の一部を私に回させちゃって、もういつ嫌われちゃうかわかんないよ。どこかで名誉挽回できないかな。
「あ、今日は玄関まで送ってもいいですか?」
「へ?あ、いや、大丈夫ですから、あの」
「今日の佐藤さんは信用できません」
だってそんなの彼氏みたいじゃない?え、一緒にやっぱり住む?
「妹よ、遅い!」
「妹?」
「あ、綿貫さん、これはその……違くて、あ」
最悪だ。でも原因はわかってる。
大輝さんに返事してなかったから。
あー、神様、許してください、本当に。




