59.聞き取り
ざわついた現場で落ち込む私の元に、すぐに警備員がやってきて騒がしくなった。え、これも報告書書かなきゃダメなやつ?
ショッピングモールの裏側に連れて行かれ、空き部屋で聞き取り開始。警察官も5人いる。
「あの……これ私人逮捕になっちゃいますか?」
「なっちゃいますね」
「私参考人ですか?」
「そうですね」
えー、だるい、だるすぎる!
貴重な機会でさえ仕事なの?いや、反射的に制圧しちゃったのは私だけど……。
向こう側で同じように聞き取りされている被害者の方や、綿貫さん。その他の人も、なんか巻き込んじゃって申し訳ない。
「じゃあこれから実況見分を行うので」
「私も行くんですよね……」
「はい、お願いします」
あーあ、あーあ、綿貫さん可哀想。私と知り合いなばっかりに110番して、巻き込まれちゃって。でもここまできたらどうしようもないから困ったな。
「あ、ちょっと電話だけいいですか?」
「できればなしでお願いしたいんですけど」
「仕事の電話が……見てください、この不在着信の量」
「……あ、どうぞ」
大輝さんからの大量の電話。チャットも死ぬほど来てる。そう、安否確認だ。これ以上無視したら、何されるかわからない。
「あ、もしもしー?」
「もしもしって椿!お前今どこいるんだ!?」
「あのねー、今いつもの本屋さんの建物なんだけど」
「具合が悪いのか?」
「んー、なんかね、私人逮捕しちゃったんだよね」
「……どうしてそうなった?」
「目の前でひったくりが起きちゃって……捕まえちゃった」
「元気なんだな?」
「元気元気!またあとで連絡するから」
「何かあったらすぐ電話するんだぞ?って待て、捕まえたって動いた「バイバーイ」
ほんと、萎えちゃうよねー……ってやば!綿貫さんが私を見てるじゃん!
あ……適当に喋ってるの聞かれた?この会話を聞かれたの!?なんで私ったら気を抜いちゃったの、バカバカ!
仕事の電話って言ってたのに、仕事できないやつって思われたかも。前にスーツ姿、褒めてもらえたのにな。
「あ、じゃあすみません。こちらにお願いします」
「……はい」
そこから先、私は綿貫さんの顔を見ることはできなかった。最初は署までと言われたが、断れると知っているので断った。その代わりちゃんと現場に付き合ってたら、あっという間に夜になっちゃったよ。
「あのー……付き合ってくださりありがとうございました」
「女性の方が無事でよかったですね。佐藤さんも無事ですか?」
「はい」
2人きりになった改札前。なんか気まずいし苦しいな。これが真心斗ならドヤれるのに。
「佐藤さん……僕に何か言うことはあります?」
「えっと……人をキックしてすみません」
「なんでそうなるんですか」
え、股間をってちゃんと言わなきゃダメ?そんなの恥ずかしくて言えないよ。聞き取りの声聞こえてたかもだけど。
「えーっと、大事なとこを蹴ったり、肘入れたり……腕を捻りました。すみませんでした」
えー、なんで無言なの。もう私の運は尽きちゃった?これは喧嘩じゃない……愛想尽かされたんだ!
やばい、涙が……。




